王宮での値段の良いバイトの正体は国王の花嫁役でした...

名前はまだ決めてない。

文字の大きさ
10 / 19

第10章 いつか。聞いてはくれないか?

しおりを挟む
「零...私はずっとお前の事が...ずっと...」

    その時だった。
「ずっと...なんです?」

    と急に聞こえてきた声に珠羅の言葉は全て遮られ零の耳には何も届かなかった。

    零がその声に驚いている中、珠羅は背後を振り返り「誰だ...って大智(ダイチ)か...帰ってきたのか?」ときく。

    声音とは反対に珠羅の顔にあった照れた表情はもはや無く、怒り...というより殺気が見え隠れしていた。

「陛下?どうしました?そんな顔して。」

と悪意無く聞き返す大智と呼ばれた男は黒い着物を着こなし、腰には剣を刺した、黒い前髪の左側をかきあげた小柄な好青年だった。

    そんな大智は珠羅へ人懐っこい笑顔を見せる反面、珠羅の顔は仏頂面...ではなくもはや般若の顔だった。

「それでどうしたんですか?陛下。」
    
「いや、それといった事は何もないが...」

「なんですか?タイミングでしたか?」

「は...?」

    思いがけない大智の返答に珠羅は戸惑う。

「なんの事だ?」

「またまた~。そんな見え張っちゃって!見てましたよ。陛下がそちらの娘さんに告白を」

    その瞬間、珠羅は目にも止まらない速さで大智の口を押さえる。

    あまりの速さに大智の言葉は聞き取れず何が起きているのかも零には分からなかった。

「...お前、いつからいた?」

「えっと、陛下が娘さんに袖を握られる所辺りですかね。」

と大智が大きく笑みを浮かべると珠羅は大きくため息を漏らし、「それで?何用だ?ちゃんとした理由があるんだろうな。」と大智へ詰め寄る。

「え、えぇ。もちろんですよ!まぁ、そちらの娘さんに用があるんすけども...」

「え?私...ですか?」

    思いがけない話の振られ方に零は思わず驚く。

「按司補佐官に言われたんですよ。零殿に年迎えの儀式に出て欲しいって。」

ーーーー年迎えの儀式...?

     そう零が考えていると珠羅は「今年もか...」と大きく息を吐く。

「それって一体...?」

    あまりの出来事の回り方に着いていけず零はすっかり恥ずかしさは忘れていた。

「あぁ、言っていなかったな。もうすぐ1年も終わるだろ?だから毎年至る所から偉い人や王宮内の人間が集まる。いわば忘年会だな。」

「それにどうして私が...?」

    確かにここへ来てしばらく時が経つ。しかし、あまり妃として動いた事はなく毎日珠羅を後宮で待つ日々である。

    それなのに何故王宮内の忘年会にら呼ばれるのだろうか。

    そんなことを考えていると頭が回らなくなる。その時、

「その会には最後に妃が関わっていてな。それで一時は延期していたが...今年はやるのか...まあ、零。少し落ち着け。」

と珠羅が声をかけてくれた事で零は少し落ち着きを取り戻す。

「えっと...つまりはどういう事...ですか?」

    零が、尋ねると「あ、それについては政務室で。」と大智が言うので一同は政務室へと向かった。


(それより私...さっきとんでもない事を言ってしまったのでは...!?)

    政務室へ続く廊下を歩きながら零は1人頬を赤く染める。

    いくら、ここへ来てから妃っぽい事を全くしていないから自分がバイトの身分という事を忘れていた、というワケではなく思わず漏れてしまったのだ。

    そして1人恥ずかしがっていると、隣を歩いていた珠羅が不意に零の手を優しく握り、ぽつりと小声で話す。

「今は政治で忙しくて言えないが、いつか。零に伝えたい事があるんだ。その時になったら...聞いてくれるか?」

    それに対して零はにこりと微笑み、

「はい。待ってます。」

    この時の珠羅の手はいつもより暖かかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

私の作るおにぎりが、騎士団の士気を異常に上げています(犯人は副団長)

星乃和花
恋愛
おにぎりを配っただけで、騎士団の士気が異常値になりました。 団長は警戒、監察部は呪術検査、国まで動きかけるのに――副団長だけが平然と断言。 副団長「彼女のご飯は軍事物資です」 私「えっ重い」 胃袋で落ちた策略家副団長の“最適化溺愛”に巻き込まれ、気づけば専属補給係(=婚約)寸前!? ほのぼの爆笑&甘々の騎士団ラブコメです。 (月水金21:00更新ー本編16話+後日談6話)

一条さん結婚したんですか⁉︎

あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎ 嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡ ((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜 ⭐︎本編は完結しております⭐︎ ⭐︎番外編更新中⭐︎

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~

伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華 結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空 幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。 割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。 思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。 二人の結婚生活は一体どうなる?

処理中です...