王宮での値段の良いバイトの正体は国王の花嫁役でした...

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第11幕 もう、手段は選ばない。

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      ◆  ◆  ◆
ここはヒーストリアの2つ隣の国、翠蓮<スイレン>。

    この国は地上に水が湧き出しているところが多く、町のあらゆる装飾にも水が取り入れられ、別名"水の都"と呼ばれている。

ーーーーーーーーおかしいな。こんなにも調べているのに何故全く"朱蘭"という名の男の身元が分からないのだろうか。

    煌雅はそう考えながら町を練り歩く。そしてようやくひとつの結論に至った。

「ま、まさか偽名!?」

     そんな時、1人の背の高い男に声をかけられる。

「ちょっと!どこへ行ってるんですか!?」

「あぁ、すみません。ちょっと散歩を...所で、例の男は?」

    すると男は申し訳なさそうに下を向く。

「そ、それがまだ...」

    その答えを聞くと煌雅はすぐにくるりと反対側を向きまた歩き出す。

ーーーーまあ、いいでしょう。いずれ見つけますよ。あいつさえ見つければ後は必然的に零も見つかる。その時は...

「へ、"陛下"!ど、どちらへ!?」

「ちょっと歩いて来ますよ。」

ーーーーその時はもう。手段は選ばない。

    煌雅は人混みの中へ溶け込んで行ったーーーー。

     ◆  ◆  ◆

「...貴方たち、少し遅かったですね。」

    政務室に入るとすぐに不機嫌そうな顔の按司が出迎えてくれた。すると大智は

「それならもう、陛下がこちらの娘さんにデレデレで。」

と笑いながら言う。すると珠羅はキッ、と大智を睨む。

「少し黙れ。大智。」

    しかし、大智に特に怯むようすはなかった。

「なんでですか?本当の事で」

「ほう...自分で黙ることが出来ないのなら私が黙らせてやろう。永遠にな。」

「す、すんませーん...」

     珠羅が不敵に笑い、大智は「勘弁して下さいよ...」と頭に手をやりながら笑う。

    そんな2人のやり取りを見ているとれいの知らない珠羅の表情が見えてきて思わず笑いが込み上げてくる。

    そんな中、按司がため息をつきながら、眼鏡を指で押し上げてかけ直す。

「お2人とも程々にしてください。そして零殿、"年迎えの儀式"については聞きましたか?」

「あ、はい!一応聞きました!」

 「なら、本題から行きますね。今回の"年迎えの儀式"。こちらは妃様にも出席して頂きます。まあ、言っても仕事は3つですが。」

    按司は、そういうと巻物の束を6.7冊程持ってくる。

「1つ目は陛下の隣に1日座って儀式の催しを眺めていることです。」

    なるほど。これなら簡単だ。と零は思うが按司は念を押す。

「しかし、変なことをされては後に官吏に弱みの種として見られてしまう事があるため、あらかじめこれらの巻物に目を通しておいてください。」

    う...、こんなにも...。と零が思っていると按司はさらに口を開く。

「そして、2つ目が儀式の最後に陛下への言葉を話して頂きます。」

    そういうとさらにもう1冊巻物が出てくる。

「これも目を通しておいてくださいね。」

「ま、まあ、零。まだ儀式まで時間がある。ゆっくり頑張ろうか。」

    これらの巻物を見て絶句している零を見て気持ちを読み取ったのか珠羅が励ましの声をかけてくれる。

「そして、最後にひとつ。」

ーーーーそうだった。まだあと1つ...

    これ以上増えたら厳しい...なんて思っていると按司から衝撃的な言葉が聞こえてくる。

「儀式中は、陛下と出来るだけイチャイチャしといてください。」

「...はい?」

    あまりにも按司からは無縁な言葉が聞こえてきて思わず聞き返す。

「こういった儀式の途中でも陛下に取り繕うと娘を陛下の側へと置こうとしてくる輩がいますので。そういった輩の戦意を削ぐようにしておいてください。」

「は、はぁ...?」

    あまり理解出来ずにいると珠羅が零の顎を優しく押し出し、

「ということはつまり、儀式中は1日私と一緒だな。」

と優しく話す。

    急に接近した麗しい偽の婚約者の顔にに零の心は口から飛び出そうなほど跳ね上がり、顔が急激に熱を帯びる。

「ひゃ!?は、はい...?」

    思わず変な声が出てしまったが、そんな事を考えるほど零の心に余裕はなかった。

    今はもうただ、恥ずかしい。の気持ちでいっぱいだった。

    すると按司が、

「今ではありませんよ。何してるんですか。陛下。」

と按司が言って零は一気に現実へ引き戻され、周りに人がいた事を思い出してまた恥ずかしくなる。とても穴があったら入りたい気分だ。

「それと、儀式の途中等は刺客がいるかもしれないのでこれから、儀式まで零殿には護衛をつけさせます。」

「ご、護衛ですか?」

    そう熱の帯びた頬をパタパタと扇いで答えると後ろにいた大智が、

「それがこの自分。白雲  大智(ハクウ・ダイチ)と申します。よろしくお願いします。」

といい、零は「よろしくお願いいたします!」と言って頭を深く下げる。

「それではこれで以上です。ありがとうございました。」

 と言って按司が部屋から去り、零は残された大量の書物、儀式の事を思って不敵な笑みを浮かべる珠羅を、見ながら心の中で呟く。


ーーーーーーーーこれから、やって行けるのだろうか。




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