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第12幕 すれ違う想い。
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その日の夜...
(どうしましょうか...)
零は後宮の自室の机の上に積み上げられた大量の巻物を恨めしそうに眺める。
さっき中身を少し読んでみたが、文字だらけで目を回しそうになる。
しかし、いつまでも逃げていては終わらない。「よし、頑張りましょうか!」零はそう言って両手で頬を叩くと巻物をひろげ、文字とのにらめっこが始まった。
ーーーー内容として、姿勢、言葉づかい、行儀作法についてなどの日常的なものからヒーストリアの歴史や年迎えの儀式についてなどの知識的な所までといった幅広い内容だった。
巻物へ必死に意識を向けていると不意に「おい、零。」と声をかけられて零は目線を上へと上げる。
するとそこには優しく微笑む珠羅の姿があった。
「私の愛しの婚約者は勉強熱心のようだな。」
零は恥ずかしさで今にもこの場から逃げ出したくなる。
一体この人はどうしてこんなにも恥ずかしい台詞が堂々と言えるのだろうか。
「あ、え、いや、その陛下の隣に立ってもバイト妃だとバレないようにしようと思って...」
零は恥ずかしさを堪えながら言うが珠羅は、
「何故そんなにも頑張る?私に甘えてくれればいいものを。」
と言って零の顎を少し上へと上げ、零の動きが1度止まる。
「わ、私は1人で頑張りたいと...」
「何故だ?私には頼れないと?」
ーーーーーーこんな事を言いたい訳では無い。
珠羅は自分で言っておきながら後悔をする。
私はこんなにも彼女に苦労をさせたくないというのに、何故彼女は自分から苦労をしにいくのだろうか。
その彼女の気持ちが理解できず、ついキツい言い方になってしまう。
その証拠に彼女の顔が少し困った顔へと変わっている。
「へ、陛下...?」
「何故だ?どうしてなのだ?君からはほとんど何も話してくれない。私はお前の事を考えているというのに、零は幼なじみの事を考えているのか?」
「だ、大丈夫ですか...?」
「何故だ?教えてくれ。私にはもうわからない。頼む零。」
そんな事を言いながら零の頬へ手を伸ばし優しく触れる。
「へ、陛下、私はただ、陛下にご迷惑をかけないようにと...」
「そんな気遣いはいらない。私は零に頼られて嫌な事など1つもない。是非、頼ってはくれないか?じゃないと...」
「私は思わず...食べてしまいたくなる。」
そう言って珠羅が顔を零へゆっくり近づけると、零は慌てふためく。
「へ、陛下!もう!からかわないでください!!し、失礼します!!」
そう言って赤い顔のまま零は部屋を飛び出す。
するとそれと入れ違いに大智が部屋へ入ってくる。
「陛下、それはヤバいですよ~」
いつもの調子で笑いかける大智にいつもなら反論する珠羅だったが、今回は反論するほど力は残っていなかった。今はただ、後悔に見舞われていた。
「...大智、私はどうするべきだと思うか?」
「...?どういう事です?」
今までにない珠羅の問いかけに大智は驚いたが表情には出さない。
「私は彼女には何もしないままただ、私の傍にいて欲しい。私は彼女には愛想を尽かされたくないのだ。彼女は私の事をどう思っているのだろうか。」
珠羅は大智の想像より落ち込んでいた。が、この珠羅の質問に対しての答えなど分かりきっていた。
故にあえて答えはしなかった。
「それは、私に聞かない方がよろしいのかと。」
大智はそう言って部屋を出ていった。
(あの冷徹陛下がこんなにも熱心になるとは...)
珠羅は1人髪をぐしゃ、とかきあげて窓から外を眺めた。
(どうしましょうか...)
零は後宮の自室の机の上に積み上げられた大量の巻物を恨めしそうに眺める。
さっき中身を少し読んでみたが、文字だらけで目を回しそうになる。
しかし、いつまでも逃げていては終わらない。「よし、頑張りましょうか!」零はそう言って両手で頬を叩くと巻物をひろげ、文字とのにらめっこが始まった。
ーーーー内容として、姿勢、言葉づかい、行儀作法についてなどの日常的なものからヒーストリアの歴史や年迎えの儀式についてなどの知識的な所までといった幅広い内容だった。
巻物へ必死に意識を向けていると不意に「おい、零。」と声をかけられて零は目線を上へと上げる。
するとそこには優しく微笑む珠羅の姿があった。
「私の愛しの婚約者は勉強熱心のようだな。」
零は恥ずかしさで今にもこの場から逃げ出したくなる。
一体この人はどうしてこんなにも恥ずかしい台詞が堂々と言えるのだろうか。
「あ、え、いや、その陛下の隣に立ってもバイト妃だとバレないようにしようと思って...」
零は恥ずかしさを堪えながら言うが珠羅は、
「何故そんなにも頑張る?私に甘えてくれればいいものを。」
と言って零の顎を少し上へと上げ、零の動きが1度止まる。
「わ、私は1人で頑張りたいと...」
「何故だ?私には頼れないと?」
ーーーーーーこんな事を言いたい訳では無い。
珠羅は自分で言っておきながら後悔をする。
私はこんなにも彼女に苦労をさせたくないというのに、何故彼女は自分から苦労をしにいくのだろうか。
その彼女の気持ちが理解できず、ついキツい言い方になってしまう。
その証拠に彼女の顔が少し困った顔へと変わっている。
「へ、陛下...?」
「何故だ?どうしてなのだ?君からはほとんど何も話してくれない。私はお前の事を考えているというのに、零は幼なじみの事を考えているのか?」
「だ、大丈夫ですか...?」
「何故だ?教えてくれ。私にはもうわからない。頼む零。」
そんな事を言いながら零の頬へ手を伸ばし優しく触れる。
「へ、陛下、私はただ、陛下にご迷惑をかけないようにと...」
「そんな気遣いはいらない。私は零に頼られて嫌な事など1つもない。是非、頼ってはくれないか?じゃないと...」
「私は思わず...食べてしまいたくなる。」
そう言って珠羅が顔を零へゆっくり近づけると、零は慌てふためく。
「へ、陛下!もう!からかわないでください!!し、失礼します!!」
そう言って赤い顔のまま零は部屋を飛び出す。
するとそれと入れ違いに大智が部屋へ入ってくる。
「陛下、それはヤバいですよ~」
いつもの調子で笑いかける大智にいつもなら反論する珠羅だったが、今回は反論するほど力は残っていなかった。今はただ、後悔に見舞われていた。
「...大智、私はどうするべきだと思うか?」
「...?どういう事です?」
今までにない珠羅の問いかけに大智は驚いたが表情には出さない。
「私は彼女には何もしないままただ、私の傍にいて欲しい。私は彼女には愛想を尽かされたくないのだ。彼女は私の事をどう思っているのだろうか。」
珠羅は大智の想像より落ち込んでいた。が、この珠羅の質問に対しての答えなど分かりきっていた。
故にあえて答えはしなかった。
「それは、私に聞かない方がよろしいのかと。」
大智はそう言って部屋を出ていった。
(あの冷徹陛下がこんなにも熱心になるとは...)
珠羅は1人髪をぐしゃ、とかきあげて窓から外を眺めた。
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