王宮での値段の良いバイトの正体は国王の花嫁役でした...

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第13幕 そう言われるとはな。

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ーーーー朝か。

   太陽は頭を出し始め、部屋にはまだ陽の光が差し込んでいない頃、珠羅の1日が始まる。

    珠羅は顔を洗い寝間着から着替えると部屋に立て掛けていた木刀を持って庭へ出る。

(今日は少し寒いな。)

     庭へ出ると、まるで冬が近づいている事を知らせるかのように冷たい空気が珠羅の肌を包む。

    ただし、寒くなった所で珠羅の日課が変わるわけではない。

    珠羅は木刀を両手で握り締め、上から下へと振り下ろし、その回数を小さく声に出す。

    木刀は振り下ろさせる度にヒュッ、ヒュッと軽やかな音を辺りに響かせる。

「198.199.200...ふぅ。」

    珠羅は大きく息を吐き部屋へ戻ろうとした時、廊下から人の気配がするのを感じた。

(誰だ...?こんな時間に...)

    そして珠羅はその相手に悟られないよう遠巻きにその気配の正体を見てみるーーーーーーーーするとそこには零がいた。

(れ、零...?)

     彼女を見ているとどうやら花瓶の水を替えたり窓を拭いたりしているのだということを珠羅は理解した。

「零。どうしたんだ?こんな時間に。」

     珠羅は零の元へ歩みながら声をかけると零は小さく肩を跳ね上げると珠羅の方を振り返る。

「へ、陛下!?すみません!起こしてしまいました!?」

「いや、大丈夫だ、それよりどうしてこんな時間にもう起きているのだ...?」

    珠羅は零に問いかけると零は渋々、理由を話してくれた。

ーーーーーーーー時は少し遡る。

「え?お妃様...今、なんと...?」

    1人の次女は目を丸くして零に聞き返す。

「ですからどうか。私に手伝わせてください!!」

    零は目を輝かせて言うが、次女としてはどう返答すれば良いのか悩む。

    零としては毎日暇を持て余しているため、何か有効的に活用出来ないか、と考えに考えて浮かんだ案がこの次女の手伝い、だった。

    しかし、妃に手伝わせるなど、珠羅が見たらどういうのだろうか。

    それがとても恐ろしく誰も笑って零の案を承諾できない。

「え、えっと...お妃様。それはちょっと...」

    次女は断ろうとするが零は引き下がらない。ここで引き下がってしまうと何も出来なくなりそうな気がしたからだ。

「どうか!陛下には内密でお手伝いさせてください!!」

    零が必死に頼んでいると、次女は零の熱意に敗けたのか、

「わかりました。では、妃様には花瓶の水を替えて頂きたいです。」

と言う。それを聞いて嬉しそうに零は水を汲みにいこうとすると次女が零を呼び止める。

「どうしましたか?」

「最近の国王陛下は、とても表情が柔らかくなったと評判ですよ!これも全て国王陛下が愛するお妃様が現れてくださったお陰ですね!」

    にっこりと微笑む次女を見て、「そ、そんな事をないですよ!!」と零の頬は一気に赤らむ。

    そして零は「し、失礼します!!」と逃げるようにその場から立ち去ったーーーー。

     ◆  ◆  ◆

「ーーーーそれで、そこから毎日朝早く起きては花瓶の水を替えたり窓を拭いたりとしていまして...」

    なるほど。と珠羅は合点がいく。最近窓や花などに手入れが行き届いていると感心していた所だったのだ。

    そう考えていると突如零が「す、すみません!」と頭を下げ、珠羅は目を見開く。

「勝手に動いてしまい本当にすみませんでした!!」

   頭をあげようとしない零に対して珠羅は頭を軽く2度優しく叩く。

「私がそんな簡単に怒るとでも思ったのか?」

「は、はい...一応巷では冷徹陛下ですから...」

    零がそう言うと珠羅は、フッ、と言うと大きく笑い声をあげる。

「そんな事を言われるとはな。思ってもいなかったな。むしろ、感謝をしている。ありがとう。零。」

    そう珠羅に言われると零はパァっと顔に笑顔が咲く。

    そしてその零の顔を見て珠羅が頬を赤く染める。

     外の空気は少しずつ寒くなってきたが、2人の間にはまさしく年頃の男女の暖かい空気が流れていたーーーー。






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