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(70)SIDE:奏太
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斗輝から漂う男性特有の色気とアルファのフェロモンが、徐々に濃度を増していく。
発情期の僕に引きずられている訳ではないので、彼の体が完全に反応していても、僕の正気が飛んでしまうほどではない。
とはいえ、熱のこもった視線で至近距離から見つめられ、猛る肉棒をしきりに押し付けられるものだから、分泌液は滲み出る量が増し、僕の思考により霞がかかってきた。
ボンヤリと見つめ返している僕に、彼は綺麗な微笑みを浮かべながらふたたび口を開く。
「最愛の番と裸で抱き合っているんだから、俺の体が反応するのは当然だろ」
何気ない口調で答えた斗輝だけど、僕にはいまいち納得できない回答だった。
「……それだけ?」
すると、僕の目にかかっている前髪を長い指で静かに払いのけつつ、彼がソッと首を傾げる。
「ああ、そうだ。どこがおかしい?」
不思議そうな表情を浮かべて問い返す彼の様子こそ、僕には不思議だった。
「どこがって……、だって、僕の裸、別になんてことないのに……」
のっぺりした体は、どこにも面白みがないはずだ。
この体のどこに、斗輝を興奮させる要素があるのだろうか。
――理想を具現化した斗輝の体に僕が興奮するのは、当たり前なんだけどなぁ。
心の中で呟いたものの、蕩け始めた思考回路は明確な答えを求めることを放棄する。
自分で尋ねておきながら、答えなんてどうでもよくなってしまった。
早く彼に抱いてもらいたくて、硬く太く育ったペニスで貫いてほしくて、斗輝と一つに重なりたくて。
僕はスリスリと彼のペニスに自分のモノを擦り続ける。
そんな僕の様子に、彼は笑いながらこちらを睨んできた。
「奏太の口調が変わってきたな。そろそろ、いい感じに蕩けてきたか。……だが、その前に」
と、ここでいったん区切った彼は、前髪を払いのけていた指を移動させ、僕の鼻をキュッと摘まむ。
おまけに、左右に揺さぶってきた。
「……なんなの?」
鼻が詰まったはっきりしない声を出す僕に、「奏太がなにも分かっていないからだ」と、斗輝が言い返してくる。
摘まんでいた鼻から指を外し、次に鼻の先をピンッと弾いてきた。
痛くはないけれど、反射的にパチパチと瞬きを繰り返す。
「もう、ホントなんなの?」
プウッと頬を膨らませ、今度は僕が彼を睨んだ。斗輝とは違い、割と本気で。
なのに彼は謝ることもなく、膨らんでいる頬を指先でグッと押した。
僕の口からブヒュッという間抜けな音と共に空気が漏れると、へこんだ頬を斗輝がツンツンと突っついている。
「俺にとって、奏太は魅力の塊なんだぞ」
「どこが?」
斗輝のことは信頼しているし、彼の言葉を心から信用している。
だけど、僕が魅力的だということがどうしても納得できなかった。
何度可愛いと言われても、田舎者の無邪気な姿を指してのことだとしか考えられない。
ましてや魅力の塊だなんて、どうしたって信じることができないのである。
思わず訊き返すと、彼の指に力が入った。
ギュッと頬を押され、少しだけ痛い。
「斗輝、痛いんだけど……」
指が当たっている部分を内側から舌で押し返したら、斗輝は静かに手を移動させた。
それから、その手で僕の頬をソッと覆う。
「どこもかしこも、魅力的だぞ。だから、俺の体が反応しているんだ。これほど分かりやすいことは、ないと思うが」
そして顔を近付け、斗輝が僕の唇を自身の唇で塞いだ。
スルリと舌が忍び込んできて、クチュクチュという水音を立てながら僕の口内を掻き混ぜる。
しばらく舌を絡めてから、彼はキスを解いた。
「裸の奏太を見ているだけで、ペニスが勃つ自信はあるな。裸で抱き合っていたら、なおさらだ」
さっき以上に艶が増した目で見つめられ、僕のお腹の奥がズクンと疼く。
そろそろ、我慢ができなくなりそうだ。
発情期じゃないのにこんなにも彼に抱かれたくなるなんて、斗輝こそ魅力の塊だろう。
僕は不貞腐れていた態度をあっさりと捨て、彼に改めて抱き付く。
「斗輝、もう、待てない……」
「なら、自分の体が魅力に溢れていると、認めるか? きちんと認めないうちは、続きはしない」
そんなことを言われ、僕は即座に首を縦に振った。
「認めるから! だから、お願い……。斗輝、大好き……」
彼の首元に頬を擦り付け、舌っ足らずな声で一生懸命お願いする。
すると、ヤレヤレといった感じで斗輝がクスッと笑った。
「絶対に分かってないよな……。まぁ、後できっちり理解させるか。俺のほうも、いい加減、奏太を抱きたいからな」
僕に左耳のそばで小さく囁いた彼が、ペロリと耳を舐める。
耳の輪郭に沿って舌先を這わせ、ねっとりと何度も移動させていた。
僕の体はその刺激をすぐに快感へと変化させ、ピクンと肩が跳ねる。
「ん、んん……」
くぐもった喘ぎを零した僕は、反射的に首を緩くふった。
彼の眼前に首筋を晒したことで、左耳から首に舌先が移動してくる。
ぺロペロと舐め回すのではなく、尖らせた舌先で細い線を描くように耳の付け根から左鎖骨を辿る。
くすぐったいけれど、その絶妙な力加減が気持ちいい。
「あふ……」
僕の口からは、喘ぎと共に熱のこもった呼気が漏れ始めた。
そんな僕の反応に楽しげな様子で微笑んだ斗輝は、さらに舌を移動させる。
僕の左乳首に到達した舌は、くすぐるようにチロチロと舐めてくる。
彼に抱かれることですっかり性感帯に変えられてしまった乳首は、あっという間にジンジンと疼き始めた。
「は、あ……」
僕は気だるげな吐息を零し、ゆったりと一度首を振る。
斗輝はますます熱心に、乳首への愛撫を続ける。
舌先でグリグリと乳首を押し回したかと思うと、下から大きくねっとり舐め上げた。
その動きを何度か繰り返されるうちに、乳首が芯を持って硬くなる。
すると、ソコに斗輝が吸い付いた。
上下の唇で強めに挟み込んだ乳首を、チュクチュクと音を立ててきつく吸う。
時折甘噛みされると、いっそう乳首がジンジンしてきた。
「あっ、ん……、んん!」
疼きが大きくなるにつれ、僕の喘ぎ声も大きく高くなっていく。
その時、僕の胸元から顔を上げた斗輝がうっとりと囁いた。
「奏太、いい声だ。可愛くて、色っぽい」
そう言う彼の声こそ、いい声だ。
鼓膜から入った美声は鼓膜を擽り、蕩けかけている脳も擽る。
さらには腰の奥にまで響き、新たな分泌液をトロリと溢れさせた。
「あぅ……」
鼻にかかった喘ぎ声を上げた僕は、モゾモゾと太ももを擦り合わせる。
乳首への愛撫も気持ちいいけれど、体の奥で斗輝の存在を感じたい。
もっと、大きく激しい快感が欲しい。
――早く、僕を抱いて……
「斗輝……」
もどかしさのせいで、視界がジワリと滲む。
涙が溢れそうになっている目で斗輝の姿を捉えると、顔を上げた彼がにっこりと艶やかに笑った。
その笑顔を見た僕は、ホッと安堵のため息を零す。
――これで、ずっと欲しかった快感を与えてもらえる。やっと、斗輝と一つに重なり合える。
ところが、彼は今の位置から移動しようとはしなかった。
僕の体に負担がかからないようにして絶妙な位置で覆いかぶさっている斗輝は、僕の胸元から顔を上げただけでニコニコ笑っている。
「斗輝……?」
戸惑い気味に名前を呼ぶと、彼はシーツについていた左手をゆっくりと動かした。
その手は僕の右乳首へと向かい、まだ硬くなっていない乳首をキュッと親指と人差し指の腹で挟む。
「んっ!」
僕の体がビクンと大きく跳ねた。
「な……、なに、してる……、の?」
戸惑いを深めた僕が尋ねたら、また右乳首を摘ままれる。
「はっ……、んっ!」
彼の様子を窺うために上げていた頭が、シーツに逆戻り。
声を上げて体を震わせている僕に、斗輝が優しい声で囁く。
「なにって、こっちも弄ってあげないと不公平だろ。俺は、奏太の体のすべてを愛してやりたいんだ」
そう言って右乳首をキュッキュッとリズミカルに摘まみながら、ふたたび左乳首を口に含んだ。
発情期の僕に引きずられている訳ではないので、彼の体が完全に反応していても、僕の正気が飛んでしまうほどではない。
とはいえ、熱のこもった視線で至近距離から見つめられ、猛る肉棒をしきりに押し付けられるものだから、分泌液は滲み出る量が増し、僕の思考により霞がかかってきた。
ボンヤリと見つめ返している僕に、彼は綺麗な微笑みを浮かべながらふたたび口を開く。
「最愛の番と裸で抱き合っているんだから、俺の体が反応するのは当然だろ」
何気ない口調で答えた斗輝だけど、僕にはいまいち納得できない回答だった。
「……それだけ?」
すると、僕の目にかかっている前髪を長い指で静かに払いのけつつ、彼がソッと首を傾げる。
「ああ、そうだ。どこがおかしい?」
不思議そうな表情を浮かべて問い返す彼の様子こそ、僕には不思議だった。
「どこがって……、だって、僕の裸、別になんてことないのに……」
のっぺりした体は、どこにも面白みがないはずだ。
この体のどこに、斗輝を興奮させる要素があるのだろうか。
――理想を具現化した斗輝の体に僕が興奮するのは、当たり前なんだけどなぁ。
心の中で呟いたものの、蕩け始めた思考回路は明確な答えを求めることを放棄する。
自分で尋ねておきながら、答えなんてどうでもよくなってしまった。
早く彼に抱いてもらいたくて、硬く太く育ったペニスで貫いてほしくて、斗輝と一つに重なりたくて。
僕はスリスリと彼のペニスに自分のモノを擦り続ける。
そんな僕の様子に、彼は笑いながらこちらを睨んできた。
「奏太の口調が変わってきたな。そろそろ、いい感じに蕩けてきたか。……だが、その前に」
と、ここでいったん区切った彼は、前髪を払いのけていた指を移動させ、僕の鼻をキュッと摘まむ。
おまけに、左右に揺さぶってきた。
「……なんなの?」
鼻が詰まったはっきりしない声を出す僕に、「奏太がなにも分かっていないからだ」と、斗輝が言い返してくる。
摘まんでいた鼻から指を外し、次に鼻の先をピンッと弾いてきた。
痛くはないけれど、反射的にパチパチと瞬きを繰り返す。
「もう、ホントなんなの?」
プウッと頬を膨らませ、今度は僕が彼を睨んだ。斗輝とは違い、割と本気で。
なのに彼は謝ることもなく、膨らんでいる頬を指先でグッと押した。
僕の口からブヒュッという間抜けな音と共に空気が漏れると、へこんだ頬を斗輝がツンツンと突っついている。
「俺にとって、奏太は魅力の塊なんだぞ」
「どこが?」
斗輝のことは信頼しているし、彼の言葉を心から信用している。
だけど、僕が魅力的だということがどうしても納得できなかった。
何度可愛いと言われても、田舎者の無邪気な姿を指してのことだとしか考えられない。
ましてや魅力の塊だなんて、どうしたって信じることができないのである。
思わず訊き返すと、彼の指に力が入った。
ギュッと頬を押され、少しだけ痛い。
「斗輝、痛いんだけど……」
指が当たっている部分を内側から舌で押し返したら、斗輝は静かに手を移動させた。
それから、その手で僕の頬をソッと覆う。
「どこもかしこも、魅力的だぞ。だから、俺の体が反応しているんだ。これほど分かりやすいことは、ないと思うが」
そして顔を近付け、斗輝が僕の唇を自身の唇で塞いだ。
スルリと舌が忍び込んできて、クチュクチュという水音を立てながら僕の口内を掻き混ぜる。
しばらく舌を絡めてから、彼はキスを解いた。
「裸の奏太を見ているだけで、ペニスが勃つ自信はあるな。裸で抱き合っていたら、なおさらだ」
さっき以上に艶が増した目で見つめられ、僕のお腹の奥がズクンと疼く。
そろそろ、我慢ができなくなりそうだ。
発情期じゃないのにこんなにも彼に抱かれたくなるなんて、斗輝こそ魅力の塊だろう。
僕は不貞腐れていた態度をあっさりと捨て、彼に改めて抱き付く。
「斗輝、もう、待てない……」
「なら、自分の体が魅力に溢れていると、認めるか? きちんと認めないうちは、続きはしない」
そんなことを言われ、僕は即座に首を縦に振った。
「認めるから! だから、お願い……。斗輝、大好き……」
彼の首元に頬を擦り付け、舌っ足らずな声で一生懸命お願いする。
すると、ヤレヤレといった感じで斗輝がクスッと笑った。
「絶対に分かってないよな……。まぁ、後できっちり理解させるか。俺のほうも、いい加減、奏太を抱きたいからな」
僕に左耳のそばで小さく囁いた彼が、ペロリと耳を舐める。
耳の輪郭に沿って舌先を這わせ、ねっとりと何度も移動させていた。
僕の体はその刺激をすぐに快感へと変化させ、ピクンと肩が跳ねる。
「ん、んん……」
くぐもった喘ぎを零した僕は、反射的に首を緩くふった。
彼の眼前に首筋を晒したことで、左耳から首に舌先が移動してくる。
ぺロペロと舐め回すのではなく、尖らせた舌先で細い線を描くように耳の付け根から左鎖骨を辿る。
くすぐったいけれど、その絶妙な力加減が気持ちいい。
「あふ……」
僕の口からは、喘ぎと共に熱のこもった呼気が漏れ始めた。
そんな僕の反応に楽しげな様子で微笑んだ斗輝は、さらに舌を移動させる。
僕の左乳首に到達した舌は、くすぐるようにチロチロと舐めてくる。
彼に抱かれることですっかり性感帯に変えられてしまった乳首は、あっという間にジンジンと疼き始めた。
「は、あ……」
僕は気だるげな吐息を零し、ゆったりと一度首を振る。
斗輝はますます熱心に、乳首への愛撫を続ける。
舌先でグリグリと乳首を押し回したかと思うと、下から大きくねっとり舐め上げた。
その動きを何度か繰り返されるうちに、乳首が芯を持って硬くなる。
すると、ソコに斗輝が吸い付いた。
上下の唇で強めに挟み込んだ乳首を、チュクチュクと音を立ててきつく吸う。
時折甘噛みされると、いっそう乳首がジンジンしてきた。
「あっ、ん……、んん!」
疼きが大きくなるにつれ、僕の喘ぎ声も大きく高くなっていく。
その時、僕の胸元から顔を上げた斗輝がうっとりと囁いた。
「奏太、いい声だ。可愛くて、色っぽい」
そう言う彼の声こそ、いい声だ。
鼓膜から入った美声は鼓膜を擽り、蕩けかけている脳も擽る。
さらには腰の奥にまで響き、新たな分泌液をトロリと溢れさせた。
「あぅ……」
鼻にかかった喘ぎ声を上げた僕は、モゾモゾと太ももを擦り合わせる。
乳首への愛撫も気持ちいいけれど、体の奥で斗輝の存在を感じたい。
もっと、大きく激しい快感が欲しい。
――早く、僕を抱いて……
「斗輝……」
もどかしさのせいで、視界がジワリと滲む。
涙が溢れそうになっている目で斗輝の姿を捉えると、顔を上げた彼がにっこりと艶やかに笑った。
その笑顔を見た僕は、ホッと安堵のため息を零す。
――これで、ずっと欲しかった快感を与えてもらえる。やっと、斗輝と一つに重なり合える。
ところが、彼は今の位置から移動しようとはしなかった。
僕の体に負担がかからないようにして絶妙な位置で覆いかぶさっている斗輝は、僕の胸元から顔を上げただけでニコニコ笑っている。
「斗輝……?」
戸惑い気味に名前を呼ぶと、彼はシーツについていた左手をゆっくりと動かした。
その手は僕の右乳首へと向かい、まだ硬くなっていない乳首をキュッと親指と人差し指の腹で挟む。
「んっ!」
僕の体がビクンと大きく跳ねた。
「な……、なに、してる……、の?」
戸惑いを深めた僕が尋ねたら、また右乳首を摘ままれる。
「はっ……、んっ!」
彼の様子を窺うために上げていた頭が、シーツに逆戻り。
声を上げて体を震わせている僕に、斗輝が優しい声で囁く。
「なにって、こっちも弄ってあげないと不公平だろ。俺は、奏太の体のすべてを愛してやりたいんだ」
そう言って右乳首をキュッキュッとリズミカルに摘まみながら、ふたたび左乳首を口に含んだ。
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