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悠久の王・キュリオ編

初めてのミルク

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「……っ!」

 キュリオは驚き目を見張る。
 眠っていると思っていた赤ん坊がじっとこちらを見つめていたからだった。

「いつ起きたんだい? ひとりにしてすまなかったね」

 そう穏やかに囁きながら小さな温もりを抱き上げると、近くへ置いたミルクのボトルを手繰り寄せた。

「おなかがすいているだろう? これを飲みなさい」

 優しく腕の中で赤ん坊の頭を固定してやり、ボトルを口元に近づけると彼女は不思議そうにそれを見つめた。

(……理解できずとも仕方ない。これから時間をかけてゆっくり学んでいけばいいさ)

「これはミルクだ。栄養価が高く、赤子にはうってつけの……」

 つい、いつもの調子で言葉を並べてしまったことに気づき、銀髪の王は小さく咳払いをしながら言い換える。

「……わかるかい? ミルクだよ」

 キュリオが穏やかに微笑むと、赤ん坊は視線をキュリオへと戻し――

「……ぅ」

 鼻を鳴らすような声にならない声をあげた。
 やがて小さな彼女の手が戸惑うようにボトルを握るキュリオの手へと伸ばされる。

 しっとりと柔らかな手がキュリオの指先を握り、傾けられたミルクの雫がわずかにこぼれ落ちた。そして、ほんの少し彼女の唇へと流れたミルクは無事、小さな喉を通り体内へと落ちていく。

「上手だね、さぁ……もう少し」



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