194 / 211
悠久の王・キュリオ編2
《番外編》ホワイトデーストーリー13
しおりを挟む
そして数十分後――。
広間にて軽食を口にするアオイは、窓の外に見える抜けるような青空を見ながら確信する。
(やっぱりあの部屋にはお父様の魔法がかかってたんだ……。どうしてそんなこと……)
キュリオの望みがアオイをあの部屋で眠らせることだとすれば、恐らくいま自分がしていることはキュリオの意に反することだろうと考えると、胸の奥にもやもやした感情が顔を覗かせる。
(……私、具合悪そうな顔してた?)
ほどなくしてカイの準備が整ったと侍女から声がかかり、腰を上げたアオイは彼の待つ扉の向こうへ急いで向かった。
爽やかに出迎えたカイに抱えられるように栗毛の馬へ跨ったアオイ。
心地良い風を全身に受け止めながら人気の少ない道を進む。
体調が悪いアオイを気遣った彼は馬がなるべく揺れぬよう、スピードを抑えて馬を歩かせていた。
「……学校、楽しいですか?」
どことなく声に張りのないカイの言葉に、アオイは気づくことなく嬉しそうに答える。
「うん! 友達がいるの。ミキっていう頼りになるお姉さんみたいな子と、シュウっていう運動神経抜群な男の子! ふたりとも凄く優しくて……あ、どことなくカイとアレスに似てるかも」
ふふっと思い出し笑いするアオイにカイはすこし寂しそうに笑った。
「俺もアオイ姫様との学園生活、楽しみたかったな」
「……?」
一緒に勉強がしたいのかと肩越しの爽やかな青年を振り返ると、彼は遠くを見ながら夢の続きでも話すように言葉を続ける。
「毎日毎日、寄りつく男たちから姫様をお守りして、登校も下校もずっと一緒で……誰の目も気にすることなく語らいあって……」
「うん、そうだね……」
(……最近一緒に過ごす時間少なかったから……カイ、寂しがってる)
頭上から零れる彼の細やかな望みを聞きながら、申し訳ない気持ちを抱いてただ頷くしかないアオイ。
「そこまでしても姫様はきっと……そのご友人たちとどこかへ行ってしまうのでしょうね」
そう言いながらカイは握った手綱を強く握りしめる。それは離れて行くアオイをどこにもやるまいと、ひたすらに隠した心のあらわれのようだ。
「……っそんな、カイをひとりになんて……」
慌てて否定するも、アオイの言葉を遮って彼の本音が飛び出した。
「本当にキュリオ様が羨ましいです」
「……? どうして?」
「貴方を縛り付けておくことが許される、唯一のお方だから――」
真剣な眼差しがアオイを捕えて離さない。
視線を逸らせないでいると手綱ごと抱きしめられて。ふたりきりだからこそ許される、カイの淡い恋心をうつした一瞬の出来事だった――。
広間にて軽食を口にするアオイは、窓の外に見える抜けるような青空を見ながら確信する。
(やっぱりあの部屋にはお父様の魔法がかかってたんだ……。どうしてそんなこと……)
キュリオの望みがアオイをあの部屋で眠らせることだとすれば、恐らくいま自分がしていることはキュリオの意に反することだろうと考えると、胸の奥にもやもやした感情が顔を覗かせる。
(……私、具合悪そうな顔してた?)
ほどなくしてカイの準備が整ったと侍女から声がかかり、腰を上げたアオイは彼の待つ扉の向こうへ急いで向かった。
爽やかに出迎えたカイに抱えられるように栗毛の馬へ跨ったアオイ。
心地良い風を全身に受け止めながら人気の少ない道を進む。
体調が悪いアオイを気遣った彼は馬がなるべく揺れぬよう、スピードを抑えて馬を歩かせていた。
「……学校、楽しいですか?」
どことなく声に張りのないカイの言葉に、アオイは気づくことなく嬉しそうに答える。
「うん! 友達がいるの。ミキっていう頼りになるお姉さんみたいな子と、シュウっていう運動神経抜群な男の子! ふたりとも凄く優しくて……あ、どことなくカイとアレスに似てるかも」
ふふっと思い出し笑いするアオイにカイはすこし寂しそうに笑った。
「俺もアオイ姫様との学園生活、楽しみたかったな」
「……?」
一緒に勉強がしたいのかと肩越しの爽やかな青年を振り返ると、彼は遠くを見ながら夢の続きでも話すように言葉を続ける。
「毎日毎日、寄りつく男たちから姫様をお守りして、登校も下校もずっと一緒で……誰の目も気にすることなく語らいあって……」
「うん、そうだね……」
(……最近一緒に過ごす時間少なかったから……カイ、寂しがってる)
頭上から零れる彼の細やかな望みを聞きながら、申し訳ない気持ちを抱いてただ頷くしかないアオイ。
「そこまでしても姫様はきっと……そのご友人たちとどこかへ行ってしまうのでしょうね」
そう言いながらカイは握った手綱を強く握りしめる。それは離れて行くアオイをどこにもやるまいと、ひたすらに隠した心のあらわれのようだ。
「……っそんな、カイをひとりになんて……」
慌てて否定するも、アオイの言葉を遮って彼の本音が飛び出した。
「本当にキュリオ様が羨ましいです」
「……? どうして?」
「貴方を縛り付けておくことが許される、唯一のお方だから――」
真剣な眼差しがアオイを捕えて離さない。
視線を逸らせないでいると手綱ごと抱きしめられて。ふたりきりだからこそ許される、カイの淡い恋心をうつした一瞬の出来事だった――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる