あの日、答えはもらえなかったー納得できなかった記憶達へー

撫子

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学校編「溜息一つに咎を受けて」

「ため息」一つで叱られた日

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小学生のある日、隣の席の子が欠席していた。
その子の分も、明日に使う工作を作るよう言われた私は、自分の分とあわせて二つの作品を仕上げた。
人の分だからこそ、丁寧に、丁寧に──
完成した瞬間、ほっと安堵の「ため息」をついた。ほんの、小さな呼吸の抜けだった。

ところが、その瞬間だった。
担任の先生が急に「なんだそのため息は!」と怒鳴った。
まるで私が、何か悪事でも働いたかのように。

状況がよく飲み込めないまま、私はずっと立たされた。
帰りの時間が過ぎても許されず、黙って立ち続ける私に、先生は何も説明しなかった。
きっと、このままでは終わらないと察して、私は嘘泣きをした。
そうでもしないと、家に帰れないような気がしたから。

今でも納得できない。
人のために一生懸命に手を動かして、力が抜けた一瞬のため息が、そんなに悪いことだったのだろうか。
ため息というだけで、感情的に反応される意味が、今も分からない。

大人になって思う。
教師というのは聖人君子ではないし、感情で動くこともある。
けれどあの日、先生がなぜあれほど怒ったのかを、もし今、会って話す機会があるなら、私は問い直したいと思っている。
本人はきっと覚えていないだろう。でも私は忘れられない。

説明もなく怒られた側は、時にずっとそれを抱え続ける。
謝ってくれたら、それで終わったのに。
だけど、私はもう、その人に会うつもりもない。
説明を求めたい気持ちと、もう関わりたくない気持ちが交差している。

──あの日から私は、人を見る時に「この人は感情で動くタイプかどうか」を、なんとなく察するようになった。
そして、本能的に「この人はダメかもしれない」と思った人は、大体そういう人だった。
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