トウキョー・ボーイ・アンド・ガール

サンデー

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ステイ・ムーブ

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  電話が鳴った。その着信音から、それは僕のケイタイからの音ではなく、家の固定電話からの音であるとわかる。
  僕は電話番号を見て、不審な着信では無いことを確認してから、ゆっくりと受話器を取った。




 
「―――もしもし、朝早くにお電話すみません。警視庁広報課「性犯罪をゼロに」係の村崎と申します。中橋徹さんはいらっしゃいますか。」




警視庁?

中橋徹とは無論僕の父親のことであるが、警察が僕の父に何の用だろうか。

性犯罪をゼロに?

父の仕事の関係であろうか、父の務める印刷会社が、そのポスターの印刷を受け持っていたりするのだろうか。



「いえ、先刻仕事に向かいました。帰宅は7時すぎになると思います。」

「なるほど、すみませんでした。
では、7時すぎにまたお電話させていただきますので、ご連絡のほどよろしくお願いします。」

「はい。」

「では、失礼致します。」




そういってがちゃんと音がしてから、ツー、ツー、ツー、と無機質にコールされている。




折角作っていたトーストも、上のバターも溶けて滲み、あんまり美味しくなさそうになっている。



人はケイサツという言葉にけっこう弱い。
パトカーが車道を通るだけですこしそわそわしてしまったり、交番の前を通るだけで両手両足が一緒に出てしまったりする。

そんな天下のケイサツ様から直々にお電話か来たのだ。
挙動不審にならない僕ではない。

僕はすこしだけ考えた。

しかし結局それらの考察は全て仮定の上に仮定を重ねた、砂上の楼閣的推測に過ぎないである。



僕は冷めてしまったインスタント・スープを電子レンジで温め直すことにして、それからすっかりおいしくなくなったトーストをそのままたべた。

とりあえず、父に連絡するのが先決だ。
僕はそう考えて、メールを送信した。


「警視庁広報課「性犯罪をゼロに!」係の村崎さん 連絡 内容特になし 夜7時」


僕と父のメールは無駄をつくらない。
必要最小限の情報量で、全ての内容を伝える。
それがベストだと父に教わった。父は敏腕サラリーマンなのだ。


電子レンジの中のインスタント・スープは湯気を立てている。だいぶ暖まったみたいなので、僕は取り出してそれを飲む。




時刻は午前9時。

僕はまだパジャマだった。




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