異世界から来た馬

ひろうま

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第1章 出会い

第3話 対話

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◆Side やよい◆
ユウマさんに連絡した後、私はギルドマスターの部屋で書類の確認をしながら、先程のアイリスさんのことを思い出していた。
彼女は、凄い行動力がある。
それは良いことなんだけど、猪突猛進的な所は気になるわ。
ユウマさんは結構慎重派なのに、娘さんはあんな感じなのはちょっと不思議ね。
あと、乗馬として高みを目指すのは、間違いなくルナさんの影響でしょうね……。
そんな事を考えていると、通信具が着信を示した。
発信元はユウマさん。
アイリスさんが戻ったという連絡かしら。
「はい、やよいです。」
「ユウマですが、アイリスはもうそちらを出ましたか?」
「え?まだ帰ってないんですか?」
「そうなんです。」
「もう大分前に出ましたよ。まだ帰ってないのはおかしいですね。」
「そうですか……。また、別の街に行ったのかも知れませんね。」
「それはあり得ますね……。あ、もしかして……いや、さすがにそんなことは……。」
その時、ドアを激しくノックする音がした。
「マスター、大変です!」
「今ユウマさんと話をしてるの!後にできないの!?」
どうやら、受付の一人の様だ。
少しイライラしながら、ドアの向こうに叫ぶ。
「ユウマさんとも関係があります。」
「え?ユウマさん、ちょっと待っていてください。」
「あ、はい。」
私は急いでドアを開けに立った。
「何があったの?」
ドアを開けて、そこに立っていた女性に尋ねた。
「アイリスさんが、勇者送還に巻き込まれたみたいなんです!」
「っ……!」
先程否定しようとした最悪の事態に、私は頭が真っ白になった。

◆Side アイリス◆
私は、これがお父さんたちのお墓なのか知りたくて、そちらを見た。
「ああ、これは悠馬さんとルナさんのお墓だよ。」
「やっぱり、お父さんのお墓なのね……。」
彼の説明に思わずそう呟いた。
「えっ!?」
「あっ!」
しまった!

転移する前に馬女神に注意されたことがある。
まず、こちらの世界には魔力がほとんどないこと。
このため、MPを消費するスキル(私の場合、空間魔法がそれに当たる)は基本的に使えないらしい。
基本的にというのは、魔力が皆無という訳ではないため、微量のMPで済むものは使える場合もあるからということだ。
特に、比較的魔力が豊富な場所では、使えるスキルが増えるらしい。
また、向こうの世界ではほとんど必要なかった食べ物が必要であり、寿命も短くなるだろうとのこと。
それと、もう一つ。
「翻訳+」は発動するので、話しをすれば相手に通じるが、こちらでは馬がしゃべるのはあり得ない事だから、本当に信頼できる人にしか話しをしないようにということ。

彼は驚いた様子を見せていたが、少しして口を開いた。
「『お父さん』って、どういうこと?」
言葉を聞かれてしまったからには仕方がない。
私は、正直に話すことにした。
「ユウマは、私の実のお父さんなんです。」
「えーと。詳しく聞かせてくれる?ここではなんだから、厩舎に行こうか。」
「良いんですか?」
「もう皆帰ったと思うし、宿直の人は当分来ないから大丈夫だよ。」
私は彼に着いて行くことにした。
こっちの世界に来て初めて会った人だ。
どういう人かわからない。
しかし、なぜか彼になら全て話しても大丈夫な気がした。
それに、厩舎というからには馬が居るということだ。
こっちの世界の馬がどんな感じかというのにも、当然興味がある。

厩舎は大きく、彼が言うには20馬房有るとのこと。
ちなみに、厩舎はもう一つ有り、そっちは牡馬とセン馬、こっちは牝馬用らしい。
「ここで良い?」
厩舎内は、夜なのに凄く明るかった。
向こうで私が居た厩舎でも、照明の魔道具が設置されていたが、こんなに明るくはなかった。
彼は厩舎の中で、空き馬房が並んでいる場所を選んでくれた様だ。
「はい。ここは、凄く明るいんですね。」
「そんな堅苦しく話さなくて良いよ。」
「わかったわ。これで良い?」
「それで、良いよ。あ、まだ名前を言ってなかったね。僕はアサヤシメイ……皆からはシメイって呼ばれてる。」
「シメイね。私はアイリスよ。」
「良い名前だね。じゃあ、アイリス。さっきも聞いたけど、君はどこから来たの?」
私は、お父さんとルナおばさんのこと、そして私がこっちの世界に来た理由と経緯を話した。

◆Side 紫明◆
「ユウマは、私の実のお父さんなんです。」
彼女のその言葉に、ますます訳がわからなくなった。
これは腰を据えて(彼女には無理だけど)話を聞かせてもらわないとな。
「えーと。詳しく聞かせてくれる?ここではなんだから、厩舎に行こうか。」
「良いんですか?」
「もう皆帰ったと思うし、宿直の人は当分来ないから大丈夫だよ。」

彼女を牝馬用の厩舎に案内し、厩舎について簡単に説明した。
「ここで良い?」
厩舎には空き馬房がいくつかあったので、話しをする場所としてその前を選んだ。
ここなら、馬達に邪魔されることはないだろう。
「はい。ここは、凄く明るいんですね。」
そこで、僕は改めて彼女を見た。
かなり小柄の青鹿毛で、その被毛は美しく輝いていた。
蛍光灯の下でこれなら、陽の光の下ではどれだけ美しいんだろう。
それに、顔はとても可愛かった。
「そんな堅苦しく話さなくて良いよ。」
そんな彼女に敬語を使われると、くすぐったい感じがするので、僕はそう言った。
「わかったわ。これで良い?」
「それで、良いよ。あ、まだ名前を言ってなかったね。僕は浅谷紫明……皆からは紫明って呼ばれてる。」
「シメイね。私はアイリスよ。」
「良い名前だね。じゃあ、アイリス。さっきも聞いたけど、君はどこから来たの?」
アイリスは、悠馬さんとルナさんが結婚していることや、彼女がこっちの世界に来た理由等を話してくれた。
僕は、そのあまりに非現実的な内容に、驚くばかりだった。
「やっぱり、信じられないわよね?」
「うーん。確かに信じ難いけど、そもそもしゃべる馬はこの世界にはいないだろうし……。それに、アイリスが嘘を吐く意味も無いしね。しかし、向こうの世界では、人と馬の間に子供ができるというのは凄いね。」
「あ、普通の人と馬では無理みたい。お父さんは、ハイ・ヒューマンだから他の種族とでも子供ができるの。」
「ハイ・ヒューマン?」
「人間の上位種ね。ちなみに、私はルナおばさんと同じハイ・ホースよ。」
「そうなんだ。凄いんだね。でも、向こうで悠馬さんとルナさんが結婚しているとはびっくりだよ。」
彼は嬉しそうに、そう言った。
「ええ。お父さんもルナおばさんも元気でやってるわ。」
「そうか……。ん?さっきから、『ルナおばさん』って言ってるけど、アイリスはルナさんの子供じゃないの?」
「違うわ。私のお母さんは、ベルフォーネという普通の馬なの。」
「悠馬さんって、ルナさん以外とも結婚してるんだ……。」
「ええ。奥さんはたくさんいるわ。残念ながら、お母さんはお父さんと結婚してないの。普通の馬だから、結婚に興味なかったのね。」
アイリスは悠馬さんの奥さんのことに加え、結婚の効果についても説明してくれた。
どうやら、この世界とは結婚感が違うようだ。
それにしても、奥さんがたくさんって、悠馬さんハーレム状態じゃないか?
まあ、皆馬か魔物な訳だけど……。
「あのー。こんな事を聞くのは失礼だと思うけど……。ここにはレベルの高い乗り手がいるの?」
そんなことを考えていたら、アイリスが話し掛けて来た。
「それがこの世界に来た目的だったね。アイリスが求めているのがどれ位のレベルかわからないけど、悠馬さんより経験豊富な人もいるし、このクラブは全体的にそこそこレベルが高いと思うよ。」
「そうなの?」
「うん。ところで、アイリスの今後なんだけど……。」
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