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第3章 危機
第13話 競技会 その1
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◆Side アイリス◆
馬着というのは初めて着たが、服を着る習慣がない私にはかなり違和感があった。
でも、シメイが私のために買ってくれたのだから、素直に着ておくことにした。
それに、これを着ると寒さはかなり軽減される。
少し前まで馬着を着ている馬は何頭かだったが、今はほどんどの馬が着ている。
これに慣れると、脱いだ時の寒さがより堪えそうな気がするが、大丈夫だろうか。
~~~~~~~~~~
「競技会?」
「うん。まだ、もう少し先の事だけどね。僕と一緒に出てくれる?」
次の朝早くシメイがやって来て、『競技会があるから出ないか』と聞いてきたのだ。
向こうの世界では競技会というのはなかったが、ルナさんからは聞いていた。
複数の人馬が競って順位を決めるものらしい。
乗馬がもっと広まれば、そういうのも行われるようになるだろうと、ルナさんは言っていた。
「シメイが出たいなら、私は構わないわよ。」
「本当?ありがとう。」
「でも、競技会って、大勢の前でやるのよね?」
「そうだね。それがどうかした?」
「シメイがそういう場に積極的に出ようとするのは、ちょっと意外だなと思って……。」
「ああ、そういうこと?確かに僕は自分から進んで競技会に出ることはあまりなかったけど、場数だけは踏んでるからね。」
「そうなの?」
「うん。それに、アイリスの凄さを皆に知ってもらえる良い機会だと思ったんだよ。」
シメイは相変わらず、自分より私のことを考えているのね。
シメイが去った後、いつも私に乗る女の人がやって来た。
「アイリス、おはよう。シメイは、競技会に出ることを決めたかしら?」
「……。」
なぜ、私に聞いて来るんだろう。
私に聞かれても答えられないのに……。
「返事をしても良いのよ?私ね、シメイとあなたが話しているのを聞いてしまったの。」
「え!?」
私は思わず声を出してしまった。
◆Side 紫明◆
「紫明が出たいなら、私は構わないわよ。」
「本当?ありがとう。」
アイリスに競技会のことを話したら、あっさりオーケーしてくれた。
競技会について説明が必要かと思ったが、理解しているみたいだった。
「でも、競技会って、大勢の前でやるのよね?」
「そうだね。それがどうかした?」
「紫明がそういう場に積極的に出ようとするのは、ちょっと意外だなと思って……。」
「ああ、そういうこと?確かに僕は自分から進んで競技会に出ることはあまりなかったけど、場数だけは踏んでるからね。」
学生の時は、ほぼ強制的な感じも有ったし……。
「そうなの?」
「うん。それに、アイリスの凄さを皆に知ってもらえる良い機会だと思ったんだよ。」
もちろん、こっちが本当の理由だ。
~~~~~~~~~~
その日、競技会に出ることを林藤先輩に話した。
「良かったわ。じゃあ、これからアイリスにはあなたがメインで乗ってね。」
「え?」
「競技会に出る人が優先で乗るのは、当たり前でしょう?」
「会員さんならそうですが、僕もですか?」
会員さんは、通常乗る馬は定まっていない。
ある程度自然に決まって来るものの、他の会員さんとの関係で必ずしも同じ馬に乗れるとは限らない。
しかし、競技会に出ることが決まったら、その馬に優先的に乗せてもらえるのだ。
ただし、それはあくまで会員さんに関してであり、スタッフにそのルールが適用されるという決まりはなかった。
「もちろんよ。練習不足で本番十分にできなかったとはなって欲しくないしね。」
「それはそうですが……。」
「それに、私は他の馬の調整も有るから。」
確かに、林藤先輩が受け持っている自馬会員さんも競技会に出るから、その馬の調整も必要だろう。
「わかりました。ありがとうございます。」
「よろしくね。私も指導するけど、アイリスにしっかり教わってね。」
「それってどういう……?」
先輩の言葉に、違和感を覚えた。
「馬から教わる事が一番多いって、いつもあなたが言ってることでしょ?」
「はい……。」
それはその通りだが、もしかすると先輩はアイリスについて何か気付いたのではないだろうか。
馬着というのは初めて着たが、服を着る習慣がない私にはかなり違和感があった。
でも、シメイが私のために買ってくれたのだから、素直に着ておくことにした。
それに、これを着ると寒さはかなり軽減される。
少し前まで馬着を着ている馬は何頭かだったが、今はほどんどの馬が着ている。
これに慣れると、脱いだ時の寒さがより堪えそうな気がするが、大丈夫だろうか。
~~~~~~~~~~
「競技会?」
「うん。まだ、もう少し先の事だけどね。僕と一緒に出てくれる?」
次の朝早くシメイがやって来て、『競技会があるから出ないか』と聞いてきたのだ。
向こうの世界では競技会というのはなかったが、ルナさんからは聞いていた。
複数の人馬が競って順位を決めるものらしい。
乗馬がもっと広まれば、そういうのも行われるようになるだろうと、ルナさんは言っていた。
「シメイが出たいなら、私は構わないわよ。」
「本当?ありがとう。」
「でも、競技会って、大勢の前でやるのよね?」
「そうだね。それがどうかした?」
「シメイがそういう場に積極的に出ようとするのは、ちょっと意外だなと思って……。」
「ああ、そういうこと?確かに僕は自分から進んで競技会に出ることはあまりなかったけど、場数だけは踏んでるからね。」
「そうなの?」
「うん。それに、アイリスの凄さを皆に知ってもらえる良い機会だと思ったんだよ。」
シメイは相変わらず、自分より私のことを考えているのね。
シメイが去った後、いつも私に乗る女の人がやって来た。
「アイリス、おはよう。シメイは、競技会に出ることを決めたかしら?」
「……。」
なぜ、私に聞いて来るんだろう。
私に聞かれても答えられないのに……。
「返事をしても良いのよ?私ね、シメイとあなたが話しているのを聞いてしまったの。」
「え!?」
私は思わず声を出してしまった。
◆Side 紫明◆
「紫明が出たいなら、私は構わないわよ。」
「本当?ありがとう。」
アイリスに競技会のことを話したら、あっさりオーケーしてくれた。
競技会について説明が必要かと思ったが、理解しているみたいだった。
「でも、競技会って、大勢の前でやるのよね?」
「そうだね。それがどうかした?」
「紫明がそういう場に積極的に出ようとするのは、ちょっと意外だなと思って……。」
「ああ、そういうこと?確かに僕は自分から進んで競技会に出ることはあまりなかったけど、場数だけは踏んでるからね。」
学生の時は、ほぼ強制的な感じも有ったし……。
「そうなの?」
「うん。それに、アイリスの凄さを皆に知ってもらえる良い機会だと思ったんだよ。」
もちろん、こっちが本当の理由だ。
~~~~~~~~~~
その日、競技会に出ることを林藤先輩に話した。
「良かったわ。じゃあ、これからアイリスにはあなたがメインで乗ってね。」
「え?」
「競技会に出る人が優先で乗るのは、当たり前でしょう?」
「会員さんならそうですが、僕もですか?」
会員さんは、通常乗る馬は定まっていない。
ある程度自然に決まって来るものの、他の会員さんとの関係で必ずしも同じ馬に乗れるとは限らない。
しかし、競技会に出ることが決まったら、その馬に優先的に乗せてもらえるのだ。
ただし、それはあくまで会員さんに関してであり、スタッフにそのルールが適用されるという決まりはなかった。
「もちろんよ。練習不足で本番十分にできなかったとはなって欲しくないしね。」
「それはそうですが……。」
「それに、私は他の馬の調整も有るから。」
確かに、林藤先輩が受け持っている自馬会員さんも競技会に出るから、その馬の調整も必要だろう。
「わかりました。ありがとうございます。」
「よろしくね。私も指導するけど、アイリスにしっかり教わってね。」
「それってどういう……?」
先輩の言葉に、違和感を覚えた。
「馬から教わる事が一番多いって、いつもあなたが言ってることでしょ?」
「はい……。」
それはその通りだが、もしかすると先輩はアイリスについて何か気付いたのではないだろうか。
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