20 / 43
20.ツガイ契約
しおりを挟む目が覚めると、ヒバリくんがいた。
真っ白の部屋に、ヒバリくんがユル吸いをしているところだったのか顔が近くにあり、舌舐めずりをするヒバリくんは、ものすごくワルワルで格好良かった。
「ユル、ちゃんと起きてるかい?」
「う、うん。おはようございます」
「おはよう。眠る前の事は覚えてる?」
「勿論!ヒバリくんに八重歯があって、格好良くて、僕はもうヒバリくんから離れたくない。ヒバリくん、ヒバリくん、大好きです。ツガイになってほしいです」
頑張って目を合わせながら気持ちを伝えると、ヒバリくんの髪を引っ張りすぎていたのか、ヒバリくんの顔が僕の顔に近づいてきて、そのまま唇が触れ合う。
「ッん!?」
「喜んで。俺も愛してるよ、ユル」
そうして再び口づけをされると、ヒバリくんの舌が侵入してきて、呼吸の仕方が分からなくなる。
しかし、口づけをやめてくれないヒバリくんに、きつく抱きしめられた僕は、ヒバリくんに身を任せる事しかできなかった。
何度も口づけを繰り返し、漸く解放された僕は、肩で息をしながら枕に顔を埋める。
「ユル、ツガイになる方法は知ってる?」
「し、知らにゃい」
「知らにゃいか。知らにゃいなら教えてあげようか」
うっ……ヒバリくんめ、わざと僕の真似をしてるな。
噛んじゃったものは仕方ないけど、僕の顔にはヒバリくんの匂いがする枕があるから、噛んじゃったのはヒバリくんのせいとも言える!
「ツガイには、結婚と同じように契約があるのは知ってるかい?」
「なんとなく?何かがあるのは分かる気がするけど、教えてもらった事はない」
「ツガイの契約は命そのもので、どちらかが死ねばもう一方も死ぬ。逆に、寿命は長い方につられる分、俺のような不老のツガイになれば、ユルも不老になる」
「うんうん……ん?待って、ヒバリくんって不老なの?」
さすがのエルフも、不老は違うよね?だって、不老なんて老いて死ぬことはないってことだよ。
いくらなんでも、エルフだって老いるものだもん。
でも、ヒバリくんが不老なら、死を迎える時は病気か命を奪われるかだ。
ヒバリくんって、いったい何歳なんだ。
「ツガイ契約をした後に、俺については教えてあげる。それよりも契約方法だけど、簡単に言えば交わりと血を使った魔力交換だ」
「交わり……ヒ、ヒバリくんと僕が……優しくするね」
「大丈夫、俺が優しく抱くから安心してな」
なんで僕が抱かれる方なの?僕だってちゃんとできるよ。
「抱くのは僕じゃ駄目なの?」
「ユルは緊張で眠らない自信がある?気を失わない自信は?」
「うっ……ないです」
今だって顔を合わせられないのに、僕がヒバリくんを抱くなんて無理だった。
「それに、俺はユルを抱きたい」
「ひゃッ!」
突然ヒバリくんの色気のある声で耳打ちをされ、更に耳を甘噛みされてしまった僕は、変な声が出てしまう。
それと同時に体の力が抜けてしまった僕は、ヒバリくんの膝の上にうつ伏せの状態で移動させられ、羽づくろいをしてもらう事になった。
ヒバリくんの匂いって、不思議と落ち着くんだよな。
好きだなって思うけど、今までは推しとして好きだと思ってて……今思うと、違かったんだなって思う。
僕はずっとヒバリくんが好きだったんだ。
たぶん、一目惚れなのかな。
いくら好みでも、自分から名前を訊きに行く事なんてなかったし。
「ユル、血を使った魔力交換だけど、ユルはどの位置にツガイの印が欲しい?」
「ツガイの印?魔術紋みたいなもの?」
「そう。印を通して魔力の交換が可能になるんだ。いつでも受け渡しができて便利になる」
それは便利だ。
何かあった時にも簡単だし、僕のいらない魔力をあげる事だってできる。
「それなら、舌がいいな。ヒバリくんのキス、気持ち良かった。それに、ヒバリくんの口が開く度に、チラチラ見える方がドキドキする」
「ドキドキするのは大丈夫なのかい?」
「大丈夫じゃないけど、大好きな旦那様にはドキドキしたい」
「ンッ……可愛い。俺はユルの旦那様?」
ヒバリくんが僕の頭を撫でてくるため、こっそりヒバリくんの様子を見てみると、ヒバリくんは熱を持った瞳で僕を見つめてきていた。
碧眼は紅色に染まり、八重歯が牙のように尖っているヒバリくんに、僕は固まるしかなく、ヒバリくんは僕の首元を吸ってくる。
「ユルは可愛すぎる。誘ってるとしか思えない」
「い、いいよ。僕は早くツガイになりたい」
そう言った瞬間、ヒバリくんの背中から四つの翼がバサリと広がり、白い羽根が部屋に舞った。
ヒバリくんが何者なのか分かるかもしれないという下心はあったが、まさかヒバリくんにも翼があるとは思わず、口を開けて固まってしまった。
そんな僕に、ヒバリくんは激しく口づけをしてきて、ベッドに体を押し付けられると、服を乱されていく。
「んんう……ヒバリ、くん」
「可愛い、ユル。安心して発情期を迎えられるように、ツガイになろう」
そう言ったヒバリくんは、僕の舌に牙を押し当てる。
血を舐めとるように舌と舌を絡めると、次は僕に見えるように自身の舌にも牙で傷をつけ、舌と舌をゆっくりと深く絡ませてくる。
気持ちいい……もう駄目だ。
ヒバリくんのことしか考えられない。
格好いい、大好き……僕のツガイ。
僕だけの旦那様……早く、早く欲しい。
そこからは意識が朦朧としていたが、ヒバリくんと繋がったのは確かで、ヒバリくんの格好いい肉体と、余裕のない表情だけはしっかりと目に焼き付けた。
88
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!
迷路を跳ぶ狐
BL
社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。
だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。
それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。
けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。
一体なんの話だよ!!
否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。
ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。
寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……
全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。
食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。
*残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる