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第二章 新しい生活

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「凛くん、なんか俺のスマホ連絡きたから見てくれん??」


 そう言ってゼンさんは、俺にパスワードを教えてくれる。


「パスワード俺の誕生日と一緒だ……あ、ゼルさんからだ。俺の首にガーゼ貼ってないって」


 確かに貼ってなかった。流石に貼っておいた方がいいよな。


「わざと凛くんの誕生日にしたんやで。それよりガーゼか。忘れとったわ。凛くんが暑ないんやと、その長袖フード付きの夏用のやし、羽織っといて」


「夏用なら着てられる。俺も普段は、母さんに言われて夏用の長袖羽織ってるし」


 俺はそっちよりもパスワードの方が気になる。なんで俺の誕生日にしたんだ? 俺のイコール陣の誕生日だって思うだろうに。


「ほんま佐良さんは凛くん大事にしとるなあ」


「ねぇ、俺もゼンさんとゼルさんの誕生日知りたい。俺だけ知らない」


「俺等の誕生日? 俺は10月11日、ゼルは10月31日やな。どっちも10月やし、覚えやすいやろ?」


 確かに覚えやすい。ゼルさんはハロウィンだし。俺のパスワードも1131とかにしようかな。いや6桁にして101131にしよう……なんか1が多いな。


「誕生日、母さんから聞いたって、前にゼルさんに言ってたけど、陣の誕生日と一緒になるのに、そのパスワードにしたの?」


「ん?? あん時起きとったんかいな!! 凛くん悪い子やなあ。今も嘘ついとるしな」


 まじか、そんなとこまで知ってるのか。双子イコール同じ誕生日だろ?普通はさ。


「自然分娩やったから、ちょうど日付またいでもうたって、佐良さん言うとったで。凛くんなかなか出てこんで、大変やったって笑っとったわ」


 母さん、そんな事まで話したのかよ。


「他にもいろいろ聞いて、子供の頃の写真まで見せてもろたけど、10歳頃の凛くんが可愛すぎて、鼻血出しとったらむっちゃ引かれてん。そっからは見せてもろっとらんなあ」


 いや、そりゃ引かれるだろ。自分の息子の小さい頃の写真見せて鼻血だされたら、普通にもう見せなくなるわ。


 その後もいろいろと話しながら体育館に向かい、着いてすぐに車から降りようとすると、俺のスマホがブブッと震える。


「あ……ゼンさん、母さんが今日は早めに着くから、それまで俺と車で待っててだって」


「そうなん? 佐良さんがアップ前に来るなんか、珍しいやんか。凛くん絡みなんか?」


 少しの間車で待っていると、母さんから電話がきてゼンさんだけ外に出る。車の前ではゼンさんと母さんが、何か真剣な表情で話しているが、俺には聞こえず、二人のやり取りを見ていた。


 少し待つと母さんに手招きされたので車を出て、代わりにゼンさんが、母さんから渡された俺のジャージ一式を持って、自分の荷物を取りに戻ってきた。


「あら凛、可愛い物持ってるじゃない。ソレ持って行くの?」


「うん、ゼルさんに貰ったんだ。匂いついてるやつで、他にもハンカチとかタオルとかあるだろうに、なんでかコレ渡されて」


「匂い? あー、さっきゼンが言ってたのはこの事ね。ゼンからは何か預かってる?」


「ん? うん、この服借りてるから大丈夫だけど」


 ゼンさん、母さんに何話したんだ?


「佐良さん、行きましょか。あと凛くんにはコレ、お絵描きしとってもええけど、できれば俺のプレーの感想とか書いといてほしいんや」


 そう言って渡されたタブレットとペンシル。


 向井さんみたいにメモしてって事か? でも俺がメモするより、母さんが書いた方がいいんじゃないのか?


「凛はゼンのプレーだけ見て、書いてくれたらいいわ。母さんは他の選手も見ないといけないし、ゼンも凛に見えるものが気になるみたいよ。土曜日の試合でも、今日と同じようにメモしておくといいわ。今日から一週間、凛の仕事はゼンの研究ね」


 ゼンさんの……確か土曜の試合も見てて欲しいって言われてたな。でも俺でいいのかな。俺はレシーバー目線でしか見れないし。


「凛くん頼んだで!! 細かいとこも全部書いとってええから」


「分かった。ゼンさんがそういうなら、よく見ておく」


「凛、目薬ちゃんと差しなさいよ」


 俺は目薬と、今日着るTシャツだけ母さんから受け取って、二人と一緒に体育館へと入った。


『はよざいますッ!!』


「あれ? 佐良さん、今日早いですね。ゼン遅い……ってあれ? 凛くん?」


 愁さんは俺に気づいて目を丸くし、他の人達も少し驚いている。


「おはようございます。今日から一週間、お邪魔します」


「凛は今日から一週間、公欠扱いだから、なんとなく察して欲しいわ。邪魔にはならないから大丈夫よ。みんなはいつも通りやってちょうだい。ゼン、凛連れて更衣室に行ってきな。戻り次第、しっかり準備体操してから、混ざってきなさい」


「はい!! ほな凛くん行こか」


 俺はゼンさんに背中を押されて更衣室に向かい、Tシャツだけ着替えて、ゼンさんもドリンクなどの準備していた。


「ゼンさん、みんなザワザワしてたけど、やっぱりこの時期は迷惑だよな」


「ん? あー、あれか……あれはなんで俺が、凛くんと佐良さんと一緒にるのか、気になっとっただけやで。凛くんの事、聞かれとらんからわざわざ言う必要もないしな。まあ、凛くんがうちに一週間来るんやと、言っとかんとな。うちの凛くんに触らんでってな!! 特に愁には言っとかんと、あいつ絶対触りまくるわ」


 そうかな……あんまり触られ……いや、結構頭は撫でられてた気がするな。ほぼ全員から。



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