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第三章 大事な繋がり

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 その日、みんなが帰ったのは夕方頃だった。あれから、俺と陣は写真をずっと撮られるわ、ビデオは撮られるわで、正直練習よりも疲れた。


「なあ、凛くん……俺等の真名って……」


 ゼンが真剣な表情で俺に聞いてくると、ゼルも気になってたのか俺を見てくる。


「俺が最初に名前を付けたなら、ゼンはノウゼンカズラ、ゼルはローゼルだよ。そこから取ったのが、ゼンとゼルだもん。俺には魂の色は視えなかったし、ゼンとゼルの方が知ってるでしょ??」


「やっぱそうなんや。なんとなく、言ったらいけん気はしとったから誰にも言っとらんし、凛くんから直接それが真名やって言ってもらって、やっとしっくりきたわ」


「凛からもろた真名が花の名前やったから、俺等の印は蝶になったんか?? それとも他になんか理由があるんかな」


 でも……そしたら俺の真名ってなんだろう。俺を染めたのが、ゼンとゼルだって言ってたよな??


「俺の真名……何か知ってる?? 俺だけ知らない」


 俺が聞いてみると二人は顔を見合わせて、ちゃんと覚えてくれているのか、懐かしむように微笑んだ。


「あん時な……確か俺等が、凛くんと出会う前のせいの時、いろんな国に行って猫探ししとったんよな」


「そうそう。その影響で名前つけたんよな。声が鈴の音に似とる思って、リンって名前にしたんや」


「そしたら、俺は鈴なの?? でもあんまりピンとこない」


 少し俯く俺の頭を、ゼンとゼルは撫でてくれるが、真名がしっくりこなくて、本当は俺ではない誰かなのではと不安になる。


違うちゃうで。リンってのはどっから取ったんやと思う?? いろんな国に行ったって言うたやろ?? 鈴の音に似とるけど、その鈴がナニかにもよるやんか」


「俺等の名前つけてくれたんやから、凛には当ててほしいんやけどなあ。結構ヒント出したと思うんやけど……いろんな国行ったっちゅう事は、いろんなもん見てきたっちゅう事や。ちゃんと行って、見て、聞いてきた結果、リンになったんやから」


 分からない。鈴なんていっぱいあるし、いろんな鈴があるじゃんか。


「泣きそうやから、もうやめようか。凛くん……俺等の名前、花にしてくれてありがとうな。凛くんとお揃いは嬉しいもんやな……なあ、スズラン」


 ゼンがそう言うと、俺はいつの間にか泣いていて、名前をつけられる瞬間を覚えてない筈なのに、魂がちゃんと覚えているのか、涙が流れて止まらなくなる。


「結局泣いてもうたな。スズランの花言葉、凛なら分かるやろうけど、幸福の再来……俺等は凛に幸せになってほしい思ったんや。なのに、スズランみたいに白い猫になって、凛の幸せを願ったのに、凛は周りにばっか幸せ運ぶやろ。俺等は後悔したんや……俺等が居らんかったら、凛は幸せになったかもしれん。9回も死なんくて良かったかもしれんって」


 そんな事ない。俺は幸せだった。ちゃんと幸せだったんだ。今だって幸せで……ありがとうって言わないといけないのに。ちゃんと幸せだって言わなきゃいけないのに、涙が止まってくれない。


「凛くん、大丈夫や。俺等は分かっとるから。凛くんが幸せやったって、今も幸せなんやって分かっとる。俺等はな、スズランのすずおとに似とる思ったんや。ちゃんと日本にも来て、日本語とか漢字とかも学んだんやで。鈴蘭スズランって漢字にすずがあるやろ?? 音読みやとりんやって分かっとったから、リンにしたんや。鈴のチリンチリンって音から、リンにしたわけやないからな??」


 あぅ……気付かれてた。てっきり音から取ったのかと思って……ピンとこないわけだ。


「そっか、スズラン……大事にするね。ありがとう。俺はやっぱり幸せ者だ」


 しっかり笑って二人に幸せだと伝えると、次は二人が涙目になっていた。ゼンとゼルがどれだけ自分達を責めていたのか、俺を好きでいてくれてたのか、考えるだけで胸が張り裂けそうになる。


 ありがとう。本当にありがとう。俺はね……本当に幸せなんだ。怖い事も悲しい事も、他人から不幸だと思われても、それがあるからこそ、ちょっとした事でも幸せだと思えるし、実際幸せすぎるくらいなんだ。だからこの幸せを、ゼンとゼルにも分けてあげたい。俺が二人を幸せにするから……


「ノウゼンカズラ、ローゼルの二人に、幸福が訪れますように……俺から二人に、おまじない」


 俺が二人の頭を撫でると、ポカンとした二人が急に慌てだした。


「凛くん、ソレまじない違うちゃう!! 祝福やから!!」


「まじないは、静流とか向井にやっとったやつやで。凛が二人の恋の応援しとったやろ。そん時頭撫でられんかったか?? 周りの奴が凛の頭撫でるんは、無意識に幸せ貰おうとしとるからや。それが凛の気持ち次第で、まじないになってまうんよ」


「え……知らなかった。だからシズも向井さんも、急に恋人できたりしてたの??」


「そうゆう事やな。凛くん、頭撫でられても良いって思う時と、そう思わん時あるやろ。人にもよるんやろうけど……例えば、愁が俺の事殴ろうとしとった時、あれ凛くんは怖かっただけやろうけど、俺を殴ろうとしたんが許せんかったんやろな。あん時の尻尾、怯えてるようには見えんかったで。膨らまして怒っとったわ」


 あ、あの時か。ブロック板使った時の……なんか1年も経ってないのに懐かしいな。でもそっか……ちゃんと自分で自分の事守らないとダメだよな。


「凛の本能が、大丈夫やって思うんやったら、撫でさせたらええ。どうせソノまじないも、凛の気持ち次第なんやから」


「せやな。凛くんの身体が拒否するんやったら、それは本能的なもんやから、ちゃんとそれに従うんやで」


「うん、分かった」


 その後はゼンに髪の毛を染められて、青っぽい明るめのグレーになった。そして、いつも通り子作りをすると、今日はご機嫌だったのか、すぐに上へ戻っていき、寝不足気味だった二人はすぐに眠ってしまった。
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