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第四章 縛りと役目
9☆
しおりを挟む俺が寝室に連れて行かれると、二人に痛いくらい抱きしめられる。
「凛くん、良かった……ほんまにごめん。俺等、一番やったらいけん事した」
「凛……許さんくてええから……そばに居らせて。抱きしめさせて」
確かにショックだったし、今思い出しても悪夢みたいな光景で、考えれば考える程、どんどん自分が消えてく気がする。けど一番傷ついてるのは、ゼンとゼルでしょ。俺にした事実は変わらないし、言った言葉は取り消せない。その証拠に……
「凛くん!! 嫌や!! なんで消えるんや!!」
「やっと抱きしめられたのに、なんで!!」
俺の身体が、あの瞬間を思い出すだけで消えそうになる。自分の意思に反して、透けていく身体が怖い。きっとこれは、俺の存在が番に否定された証だ。
「ごめん。消えたくないんだけど、思い出すとダメみたいだ。嫌でも思い出しちゃうのに、どうしたらいいんだろう……一人は怖いな」
「凛くん……凛くんは嫌かもしれんけど、抱かせてほしい。じゃないと、消えてまう」
「俺等がリュカに連れられて、迎えに行った時はもっと酷かった。俺等しか凛の魂は触れんから……凛は起きんし、抱くのが一番安定するんやって……せやから、ごめん。凛が起きんかったこの1ヶ月、殆ど抱いとった」
「俺等は、どうしても凛くんを繋ぎ止めたかった。ごめん、凛くんが嫌がっても離してやれん。絶対に無理なんや。俺等には凛くんしか居らん」
あぁ……俺は本当に弱いな。一人じゃ何も出来ない。俺は二人に生かしてもらってる。こんなにも、生きるのは大変なんだな。知らなかった。
俺は二人にフワッと抱きついて、フェロモンを出せるか分からないけど、それでも意識してみたら、ちゃんとフェロモンが出せたようで、それに反応した二人が中に入ってくる。
「凛くん……凛くん、ごめん。ごめん」
「ゼン、泣かないで。もう謝らなくていい。俺の存在を否定しないで……そしたら、ちゃんとここに居れるから。ゼルも俺を愛して。そばにいて。嘘でもいいから言葉にして……俺はどんな二人でも……ゼンとゼルを愛してる」
「あぁ……俺も愛してる。凛、大事な番。俺等の宝物」
「凛くん……俺等の白猫。愛してる」
そこからは、何度も何度も愛を伝えてくれる。俺を優しく抱きながら、繋ぎ止めようと俺の名前を呼んでくれた。
「良かった。凛くんの身体……抱きしめられる。凛くん……好き。大好き」
「凛……大好き。俺等だけの綺麗な白猫。まだ抱かせて。ちゃんと抱かせて欲しい」
「ゼン、ゼル……大好き。噛んで……印つけて」
俺の頸に二人が噛みつくと、魂を噛まれたような気がして、それと同時に首輪をつけられたような苦しさと、痛みが襲ってくる。
「うッ……はぁ、イッ……はぁ、はぁ……く、くるし……イタイ」
「凛くん、もう逃がさん……」
「どこまでも追いかけてやる。凛が嫌がっても……」
『離れるのは許さん。命令や』
あぁ……もう、消えられない。首輪があったら、逃げられない。絶対に捕まる。けど……良かった。
俺が気を失う寸前、二人が笑ったような気がした。その時の目は、多分周りから見たら怖いと思うけど、俺はもっと怖い目を知っている。あの虫を見るような目……存在を否定されてるような目……あれに比べたら可愛いものだ。
ーーーーーーーーーーーー
(sideゼンとゼル)
凛が気を失っても尚、狂ったように抱き続ける二人は、確実に凛を繋ぎ止められるように、中へ熱を吐き出し続けた。
「凛くん……はぁ、綺麗。新しい首輪、気に入ってくれたか??」
「凛……鈴鳴らして。綺麗な音聞かせて」
すると二人に応えるように、凛の鈴の音が鳴る。それは家中に響いているようで、チリリンと綺麗な音に反応するカイとレイが、遠吠えをあげた。
「綺麗やな……気に入ったみたいや」
「凛、大好き……はあ、はあ……可愛い」
二人が激しく突き始めると、気を失ってる筈の凛が乱れ始めて、いつもなら抑えている甘い声が、二人の耳に入ってくる。
「んアッ……アッ、あッ……アんッ、ンッ……はあ、アッ」
(可愛い。凛くん……もっと、もっと乱れて。あんな事忘れてしまえ)
(凛……上書きしたるから、もっと乱れて。もっと、もっと)
『愛してる』
二人が凛の中で達すると、自分達の髪が真っ白になっている事に気がついた。
「ゼル、お前髪色変わっとるで」
「兄貴こそ変わっとるやんか。真っ白やぞ」
(チッ……鏡見たいけど、抜きたくないわ)
(兄貴の奴、抜く気ないやろ)
ゼンが凛にキスをして舌を絡めると、ゼルも負けじと無理矢理引き剥がしてキスをする。
「おい、奪うなや。お前はさっさと出ろや」
「兄貴こそ出ていけや」
「俺はまだ抱くんや。お前はフェロモンなかったら、もう出んやろ」
「フェロモン無しでも、まだまだできるわ」
凛が気を失ってる事をいい事に、二人が喧嘩を始めると、いつの間にか帰ってきていたスイセンが、凛のお腹に入って行く。
「カカ様眠い。僕も寝る」
「……お前、まさかそこで寝る気やないよな??」
「凛の腹ん中で寝るなんか……羨ましい!!」
「トト達うるさい!! 出て行って!!」
スイセンによって、中から強制的に押し出されると、ゼンとゼルは仕方なく凛を抱えて、お風呂に連れて行った。
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