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第五章 もう一つの世界

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 なんだあれ?? 紙がどんどん消えていく。転移とは違うのかな??


「ッ!! 獣王様!!」


 俺を見つけたジークは、キラキラした顔で嬉しそうに俺の所へ来ると、頭を俺に突き出して褒めてと言ってるように見える。何をしたのかは分からないが、頭を撫でてやると嬉しそうに尻尾を、ユラユラ動かしてますますジークのキラキラ感が増す。


 無駄に美形だから、笑顔が眩しい。獣化して欲しいんだけど。


「何やそれ。転移みたいなやつか??」


「これは魔道具で、手紙を他のギルドに転送するものです。この特別な紙しか転送できないので、ゼン様の言う転移のように万能ではありません。愁様、お疲れ様でした。この内容で転送したのですが、大丈夫でしょうか??」


 ノインが愁に見せた後、愁はゼンとゼルにも見せてオッケーが出た事で、ノインが目に見えてホッとした。


「良かったです。ジークが天界の住人以外には、知らせない方がいいと言うので、急遽書き直しましたが……」


「当たり前だ。天界の奴等以外、獣だろうと凛様には逆らえなくても獣王だとは気付かない。そもそも獣王の存在すら分からない可能性がある。それに、水星様と金星様の事も気付かないだろう」


 ジークが別人のように喋り出すが、俺とゼンの服を掴んで離さないので、あまり格好がつかない。


「そんな状態で言われても、説得力が無いんですよ。私は鳥で獣ではないんですから、貴方がしっかりしてくれないと、こちらは困るんです。獣事情は、獣にしか分からないんですから、しっかりして下さい」


「ノインの言う通りだ。ジーク、聖獣がそんな状態でどうするんだよ……リュカ、冒険者登録をしてしまおう。こっちでの身分証になるから、凛様と水星様も……金星様はどうする??」


「俺達は持ってるから大丈夫。勝手に作られてたから、召喚されて気を失ってた時に、いろいろいじられて……うっ……気持ち悪い」


「え、兄さん大丈夫?? 悪阻つわり??」


 駿は絶対面白がってるだろ。でも、気持ち悪いんだとしたら、俺の枷の影響なのかな??


「愁、思い出さない方がいいよ。枷が反応してるんだ……恥ずかしいけど、俺の事考えてみて」


「凛くんの……キスしていい??」


「いいよ……ンッ」


 愁が噛み付くように俺にキスしてくると、だんだん俺をゼンから奪うように抱きしめてくる。


「終いや。愁、凛くんを奪うんは許さんからな。凛くんが軽すぎて持ち上がってもうたんやろうけど」


「せやけど、俺等も見ててムカつくのはムカつくからな。愁さんのキスは長すぎるしな」


 ゼルは俺から愁を引き剥がすと、上書きの為にキスをしてくるが、激しすぎて若干酸欠になりグッタリする。そんな俺を、オロオロとして心配してくるジークは、獣化して俺達の周りをグルグルする。


「ごめん……けど、気持ち悪さがなくなった。凛くん、ありがとう」


「凛くん、今日の夜は覚悟しといてな。酸欠だけじゃ済まさんからな」


「いいよ。好きにして」


『グッ……可愛いすぎる!!』


 俺はゼンとゼルに言ったつもりが、他のみんなも何故か悶えていて、ジークなんかは床に倒れていた。


「では、凛様と水星様の登録をしましょう。注目されるでしょうが、受付の方までお願いします。ジークはそのまま放っておいて結構ですので」


 ノインに言われて受付の方に向かうと、確かに注目はされたが騒がしくはなかった。


「ではこのタグに……ゼン様とゼル様で、凛様のタグはお選びになりますか??」


「なんか種類あるんか?? 凛に付けるなら、出来れば小さい方がええけど」


「タグは同じなんですが、ブレスレットが何種類かあります。凛様がつけているような、革製のバンドとチェーンのようなもの、あとはタグを埋め込むタイプの枷のようなものですね。ただ他にあるのであれば、そちらに付けていただいても構いません」


 ノインはゼンとゼルの顔色を伺いながら、二人にいろいろと説明してくれている。その場は謎の緊張感が漂っていて、周りの人達も様子を伺ってくる。ノインは、俺のアクセサリーを見て、鍵が付いてる事が気になったのだろう。他の人達のを見ると、みんなギルドで渡された物を付けているのに、タグさえあれば何でもいいと言ってくれた。


「んー、なんも無いんよなあ。ちゅーか、こっちの金も無いし、買うにしても今は難しいか。凛くんが身につけるんやったら、それなりにええもんやないと」


「あっちで買ってくるか……ノイン、そのタグにつけるんは、今度でもええんか??」


「あ、はい。大丈夫です。タグだけ無くさないようにしていただければ……それと、お金でしたら掲示板の依頼か、魔物の素材をギルドに持ってきていただければ、引き取りますよ」


 ゼンとゼルは少し考えた後、登録だけ済ませる為に、名前だけを書いてタグに魔力を流し込んだ。


「ゼン、下ろしてくれないと、俺だけ登録出来ない」


「周りの目が気になるんよなあ。凛くんに何かあったら嫌やんか」


「ずっと見られとって、なんか情報盗まれても嫌やしな」


 その瞬間、その場に居た全員が目を逸らし、ノインまで目を逸らしてしまったが、漸くゼンが俺を下ろしてくれて、登録が無事に終わった。


 そういえば、こっちの文字はあっちと違うのに、普通に読み書き出来るな。
 

「では、登録が終わりましたので、念の為ランクの説明をします。冒険者にはランクというものがありまして、最初のランクはその者の魔力を通して、決められています。御三方は……後で見ていただいて、下からD、C、B、A、Sランクとなっています。ランクを上げるには、依頼をこなしていただくのですが……省きますね。そちらは身分証となりますので、無くさないようにして下さい。それから、そちらにお金も入りますので、支払い等はタグで全てお願いします」


「カード払いみたいなもんやな。凛くん、それ無くさんように収納しとこうな」


 タグを収納すると、周りから凄い見られたが、ギイ達が何も言わないため、そのまま周りの事は気にせず、俺達はノインにお礼だけ言って、そのまま冒険者ギルドを出た。




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