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第六章 加速する愛

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 陣が帰った後は、俺とゼンとゼルの髪染めをした後、愁の服やベッドなどを買いに出かけたのだが、まさかのそこでお義母さんに会ってしまい、俺達は捕まってしまって、立派な家に連れてこられた。


「凛ちゃん、貴方最高よ!! この二人とも、殆ど番と言ってもいいわね。それくらい繋がりが深いのだけど、どうやったらこんな事になるのか、少し気になるわね。子作りだけじゃないでしょ??」


 俺達はゼンとゼルの実家に来てすぐに、着せ替え人形にされ、全員の撮影が始まってしまった。愁は慣れているのか、結構楽しそうだったが、洸はかなり疲れ果てていて、ソファでグッタリしていた。しかし、それも全て撮られているため、俺にくっついて離れなくなってしまい、そこにゼンとゼルも来た。


「愁は元気やな。あいつの写真は使えへんのに、なんであんなノリノリなん??」


「愁さんって、結構目立つの好きよなあ」


「俺、もう無理……でも、凛と撮れて良かった。これ、待ち受けにしよう」


「あれ、もう終わり?? 洸はブラコンのくせに、やっぱり待ち受けはツーショットなのか。まあ、俺も凛くんとのツーショットにするけど」


 全員疲れはしたものの、写真には満足したらしく、それぞれが俺とのツーショットを待ち受けにしていて、俺だけは全員で撮ったものをホーム画面にし、ロック画面をゼンとゼルと撮ったものにしてみた。


「そんじゃ、今からまた買い物行くで」


 それから俺達は、愁のベッドや服などを買った後、夜になって漸く家に帰ってきた。そしてやっとゆっくり出来ると思ったが、珍しく耀が一人で訪問してきたのだ。


「耀、何したの?? 今日はみんな……愁さん以外は、結構疲れてるんだけど。特に俺はクタクタ」


 洸はそう言いながら、ソファに座る俺の腰に、地べたに座って前から抱きついてきている。


 今日の洸はだいぶ甘えん坊だな。可愛いけど、その場所に顔を埋めるのはやめてほしい。


「俺は愁さんに用があったんだ。佐良さんから、愁さんに会って挨拶してこいって言われてて、なんの事か分からないんだけど……」


「ん?? 佐良さんから聞いとらんのか?? お前、これから愁に教えてもらうんやで。もうファルコンの練習には参加しとるんか??」


「してる……ます。ゼン兄……ゼンさんと」


「あー、もう普通にしてええで。お前はもう身内やろ。普通に喋ったらええわ」


「俺も、洸の兄呼びに慣れとるから、呼び捨てでも、兄さんでもどっちでもええわ。耀の方が年下感あるしな」


 俺も耀のことはいまいち分からないけど、陣が世話になってるし、これから同じチームなら、もっとコミュニケーションとらないとな。ただ……耀は俺のこと怖がってるんだけど、そこだけ直してもらわないと。


「じゃあ俺からも一つだけ……なんで凛くんを怖がってるんだ?? それじゃ、ファルコンのセッターは諦めた方がいいよ。今のファルコンは、凛くんが居てこそのチームだ。凛くんが居なくなったら、ゼンとゼルも居なくなるし、リュカも祐希も剛も居なくなるだろうね。耀がそのままだと凛くんは、下手したらバレーを辞めるんじゃないかな??」


 愁は当たってるでしょ? と言わんばかりに、俺の方を見てくる。そして、俺を怖がる耀の味方は、この家には誰も居ない。その事に耀は気づいたのか、少しずつ震え始め、その場から動けなくなってしまったのか、しゃがみ込んでしまった。


 洸に似てるけど、耀は逃げれないタイプなのか。洸はすぐに部屋の隅に行ってたなあ。


「愁、ありがとう。でも、いじめはダメだよ。俺は洸が可愛くて仕方ないんだけど、耀は洸に似てるから、あんまりキツイ事は言えないんだよ。怒った時以外はだけど……」


「俺の居場所に耀が入るなら、少し八つ当たりしたくもなる。俺だけの居場所だったのに……だから厳しくしたいし、耀には完璧に俺の代わりを果たしてもらわないと困るんだ」


「……分かった。耀のことは愁に全部任せるよ。俺が辞めるっていうのも間違いじゃないしね。陣との約束は守れなくなるけど、陣の番が俺を怖がるなら、俺はバレーを辞める。陣が大事だから、陣の番も俺にとっては大事なんだよ。それだけは分かっててほしい」


 俺は震える耀の頭を優しく撫で、洸を引きずって庭の方に行き、ルイの上に乗せてもらって月光浴を始めた。本当は、こっちでは月光浴をしなくてもいいのだが、今日は愁と耀がしっかり話せるように俺は庭に来たのだ。


「凛……耀がごめん。ユラの名付けの時、凛は陣に怒ってたでしょ?? その時から、耀は凛に近づけなくなったみたいで……俺に毎回聞いてくるんだよ。今日の凛は元気だったか、凛はどんな物が好きなのか、凛が怒る原因はどんなものが多いのか……いっぱい聞かれるんだ。多分陣にも聞いてると思う。耀は凛のこと大好きなんだよ。獣王だからっていうのもあると思うけど、俺みたいに本当は甘えたいんだと思う」


 あー……あっちの獣達みたいな状態か。俺とゼンとゼルが親みたいな感覚なんだっけ。そう思うと今の耀は、親に怒られた子どもが、泣きながら謝ってるような状態なのかな。ただ、耀の場合は謝る事がないから、どうしていいか分からないんだろうな。


「今も自分のせいで、凛を追い出したみたいに感じてるか、凛が自分に怒って離れて行ったと思ってると思う」


「え……耀って洸よりも、繊細だったりする?? ゼンとゼルも内容は聞いてた方がいいだろうし、愁の部屋は買ってきた物でいっぱいだから、ちゃんと話し合ってほしくて、俺はこっちに来ただけなんだけど」


「嫌われたくない人には、何も言えなくなる。俺は聞かれたら言えるけど、耀は命令か……一日中粘ってやっと自分の気持ちを言ってくれる」


 陣はちゃんと耀とのコミュニケーションとれてるのかな。というか、双子って厄介な性格の奴しか居ないの?? ゼンとゼルも一応双子だし、俺と陣も双子、耀と洸も双子、ついでにゲッカとカンザシも双子だし……この世界の双子事情って大丈夫なのかな。



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