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終章 永遠の幸せ
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しおりを挟むあれから、俺の発情期も無事に終わり、東京には代表メンバーが集められていた。事前に知らされていたメンバーから殆ど変わっていなかったが、向井さんと崎さんはどちらも呼ばれていた。メンバー12人にどちらが選ばれるかは、練習で決める事にしたらしい。そして現在、俺は近づけない人達の為にも、三毛猫の着ぐるみに着替えている。
「早速だが、練習の前に重要な事がある。三毛猫姿でも凛に近づけない者は正直に言ってくれ。時間をかけても無理そうなら、帰ってもらうしかなくなる。残念ながらリベロは凛しか居ない。それで近づけないなら、練習にすらならないからな。今は無理でも、普通の凛の姿で近づけるようにし、喋るのも問題ないように必ずするなら残ってくれ」
すると、多めに集めた筈の代表メンバーが、俺とゼンとゼルも合わせて15人ほどに減ってしまった。残ったメンバーの中には耀と不破さんは勿論、進藤さんと大智さんが残ってくれていて、向井さんと崎さんも当然ながら残っていた。
「まあ、これだけ残ればいい方か。まずは残ってくれた者達に感謝する。全員知っての通り、凛を日本代表から抜く事は考えられない。それなら、君達に頑張ってもらうしかないんだ」
「俺等からも凛くんの恋人として感謝します」
「ほんまに残ってくれてありがとうございます」
「俺からも、本当にありがとうございます。一番の原因が俺だからこそ、みんなを支えられるリベロになります。なので後ろは任せて下さい。俺がみんなに攻撃のチャンスを何度でも作ります。今年一年、よろしくお願いします」
俺達三人が頭を下げると、「こちらこそよろしく」という言葉が次々と聞こえてきて、全員が自己紹介を終えた後、合宿という事で俺は着ぐるみを着たまま、全員分を観察する事になった。
「お義父さん、俺は何日間このままで居ればいい?」
「んー、凛にはみんなを見てメモしてほしいのもあるから、三日でもいいか? それと毎日最後に着ぐるみを脱いで、練習に参加してほしい。凛的にもその方がいいんだよね?」
確かに、その方が嬉しい。少しでもいいから練習には参加したいし、合宿中はスイセンも来てくれてるから、俺のバレーしてるところ見たいって言ってるし。
俺は隣に居るスイセンを撫でるように、霊体の頭らへんに手を置くと、スイセンは嬉しそうに尻尾をユラユラと揺らし、洸が俺の行動に違和感を感じさせない為に、ドリンクを渡してきた。
「凛、兄さん達が休憩の時は、ちゃんと目薬さしてね」
「うん。これから集中するから、ゼンとゼルに、俺が反応しなかったら無理矢理やってって言っておいて」
それから三日間は、俺だけ着ぐるみを着ながらみんなの観察をし、メモをとったり俺に近づける人達には、気づいた事を教えたりして過ごした。俺が練習に混ざるようになってからは、お義父さんが俺のメモをみんなに渡し、俺の代わりにいろいろと教えてくれていて、みんなもメモを元に個人練習などもしていた。
そして二週間に渡る合宿最終日、さまざまなチーム呼んで練習試合をし、初めての試合にしては良い試合内容で終わって、翌朝解散することとなった。
「次は七月の合宿だが、もし何か気になる事があれば、連絡してほしい。凛に見てほしい場合は、動画も送るように」
『はい!!』
俺達の為にも、みんなには頑張ってもらわないといけないし、俺に出来る事なら協力するつもりだ。ただ、俺も他国のチームの研究をしないとなんだよな。そこはお義父さんと母さんが、今までの動画を探したり、海外に行って動画を撮って来たりしてくれるみたいだけど。
ゼンとゼルは、天界に帰りたい気持ちが強くなっていっているからか、家に帰るまでの間、洸と愁も混ぜて真面目にバレーの話をしていた。久しぶりに家に帰ってくると、バレーの話は終わってゼンとゼルが俺に甘えようとしてくるが、スイセンが急に毛を逆立たせて、愁の服を引っ張り始めた。
「スイセン!? 何かあったのか? 服が伸びるんだけど……」
「うぅ……あっち片付いた。シュウを呼んでるって……ついでに、ゲッカとカンザシがカカ様に会いたがってるから、どっちを先に連れて来るかシュウに決めてほしいんだって」
片付いたって……もしかして、悪魔全員の魂回収したって事?
「スイセン、あいつ等がこっちに来るっちゅう事は、悪魔の魂全部回収したんか?」
「それとも片付いたっちゅうのは、凛を狙っとる魔族も含めて、二人とも回収したんか?」
「悪魔は全員回収して、魔族も一人は回収したって……ユラに憑いてた奴だよ。ただ、もう一人は探しても、もうあっちの世界に気配がないってバァ様が言ってる」
あっちの世界に気配がないの!? それって……
『こっちに居るんか』
「多分……でも、こっちに居るなら父様達が居るから都合が良いってバァ様が言ってる。こっちで魔法は使えないから……だから今問題なのは、ゲッカとカンザシのどっちが先に、こっちに来るのか揉めてて、あっちで被害が出る前にシュウに決めてほしいみたい。二人とも魔族の気配は分かるからちょうど良いだろうって」
すると、すぐに愁は帰って行き、こっちの世界で半日ほど経つと、愁から自分を呼んでほしいという連絡が入った。
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