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第二話 クズ勇者、旅に出る
その十八
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「うわぁ! 本当に素晴らしい大聖堂ですね!」
フィルが驚いているのもムリはない。大きな壁面にドラゴンや一角獣、ケンタウロスなど神獣の像が並べられたその外観に圧倒される。
さすが大聖教の本拠地、ガルチ聖教国の玄関口であり第二の都市、ファーナンド。そのシンボルとなる大聖堂である。
「ああ、そうだなあ」
オレは感情のこもっていない声で返答する。ていうか、さっきから気が重い。
「グエル? どうしたの? あんまり驚いていないようだけど。まるで前にも見たことがあるみたいに――」
マルタが不思議そうにオレの顔をのぞき込んだ。
「ん? そ、そんなことはないぞ。いやあ、すごいなあ」
そう、白々しく反応する。
まあ、正直のところ、大聖堂を見たのはこれが初めてではない。前の人生で見たときにはたしかに驚いた。しかし、それ以上にここで受けた仕打ちのほうが強烈すぎて、とても楽しむ気持ちになれないのだ。
「そう? それならイイけど」
マルタはまだ納得してなさそうだが、ココは無視するに限る。
「グエル様ぁ! 中も見学しましょう!」
フィルが、大聖堂の入口で手を大きく振って、叫んでいる。まったく、完全に観光気分だなぁ――それに、『様』になっているぞ?
オレはため息をつく。
「本当に美しい聖堂ですね。人間の英知が生み出した芸術と言うべきでしょう」
知らない男が、そんなことを語りながら近づいてきた。
貴族だろうか? 全体を金糸で刺繍された、いかにも高価そうな紺のジャケットを纏っている。オレは、「はあ――」と気の抜けた返事をした。
「ところで、神への祈りを捧げるための建築物だというのに、どうして獰猛な神獣を壁面に並べているか知っていますか?」
「――えっ?」
いきなりそんな質問をされるので、戸惑ってしまう。しかし、その男性はオレの返答を待つことなく――
「モルタルの壁は風雨に弱く、すぐに痛んでしまうそうです。ですから、ああやって神獣が『にらみ』を利かせることで、風雨から守ってもらおうという考えらしいですよ。なかなか滑稽だと思いませんか? これほどの建築物を作れる人間が、そのような迷信にすがろうとするなんて」
穏やかな話し方なのだが、どこかバカにしているふうに聞こえる。『人間が――』って、まるで自分がそうでないかのように――それはともかく、この声、どこかで聞いたことが――
「壁が崩れたら作り直せばイイだけです。権力者はそのくらいにしか思っていないはずでしょ? これを作るために消費した莫大な費用は、神を信じさせ、救いを求める民たちが働いて得たなけなしのおカネを、寄付と言ってむしり取っただけなのですから。まったく、人間のやることには一貫性がありません。不思議な生き物です」
なんだ? 何が言いたいんだ?
「オマエは――」
オレが言いかけた時、「グエルさま~」と、フィルが再びオレを呼んだ。
「ほら、姫様が呼んでいますよ。行ってあげたらどうですか?」
「えっ? 姫って――って、あれ?」
隣にいたはずの男が、いつのまにかいなくなっていた。いったい、なんなんだ? 声をかけられるまで、まったく気づかなかったし――それって……
ヘンな幻覚でも見てしまったのだろうか――疲れているのかなあ……
「グエルさま~先に入りますよぉ!」
それにしても、フィルのテンションが高い。まあ、いいけど――
話しかけてきた男がなんだったのか――ちょっと、気になるが、オレはフィルに急かされ大聖堂の中に入った。
薄暗く、ひんやりとした聖堂内は実に広い。無数にある柱の間を抜け祭壇の前まで行くと、フィルとマルタが立っていた。その正面には巨大な女神の像。アスタリア大聖教の唯一神、アスタリアを模した大理石の像である。
「こんなにスゴかったのか――」
王都の大聖堂にもアスタリア像はあるが、それをはるかに凌ぐほどの大きさ――前の人生でもこれを見たはずだが、まったく記憶にない。あの頃は、神をも恐れないほど慢心していたからなあ……ふとフィルを見ると、涙を流していた。
「私、ココに来ることが夢だったのです。それが叶いました」
感無量という表情で言われると、からかうこともはばかれる。
オレは「よかったな」とだけ声にした。
その時、知っている声を耳にして、オレは慌てる。
フィルが驚いているのもムリはない。大きな壁面にドラゴンや一角獣、ケンタウロスなど神獣の像が並べられたその外観に圧倒される。
さすが大聖教の本拠地、ガルチ聖教国の玄関口であり第二の都市、ファーナンド。そのシンボルとなる大聖堂である。
「ああ、そうだなあ」
オレは感情のこもっていない声で返答する。ていうか、さっきから気が重い。
「グエル? どうしたの? あんまり驚いていないようだけど。まるで前にも見たことがあるみたいに――」
マルタが不思議そうにオレの顔をのぞき込んだ。
「ん? そ、そんなことはないぞ。いやあ、すごいなあ」
そう、白々しく反応する。
まあ、正直のところ、大聖堂を見たのはこれが初めてではない。前の人生で見たときにはたしかに驚いた。しかし、それ以上にここで受けた仕打ちのほうが強烈すぎて、とても楽しむ気持ちになれないのだ。
「そう? それならイイけど」
マルタはまだ納得してなさそうだが、ココは無視するに限る。
「グエル様ぁ! 中も見学しましょう!」
フィルが、大聖堂の入口で手を大きく振って、叫んでいる。まったく、完全に観光気分だなぁ――それに、『様』になっているぞ?
オレはため息をつく。
「本当に美しい聖堂ですね。人間の英知が生み出した芸術と言うべきでしょう」
知らない男が、そんなことを語りながら近づいてきた。
貴族だろうか? 全体を金糸で刺繍された、いかにも高価そうな紺のジャケットを纏っている。オレは、「はあ――」と気の抜けた返事をした。
「ところで、神への祈りを捧げるための建築物だというのに、どうして獰猛な神獣を壁面に並べているか知っていますか?」
「――えっ?」
いきなりそんな質問をされるので、戸惑ってしまう。しかし、その男性はオレの返答を待つことなく――
「モルタルの壁は風雨に弱く、すぐに痛んでしまうそうです。ですから、ああやって神獣が『にらみ』を利かせることで、風雨から守ってもらおうという考えらしいですよ。なかなか滑稽だと思いませんか? これほどの建築物を作れる人間が、そのような迷信にすがろうとするなんて」
穏やかな話し方なのだが、どこかバカにしているふうに聞こえる。『人間が――』って、まるで自分がそうでないかのように――それはともかく、この声、どこかで聞いたことが――
「壁が崩れたら作り直せばイイだけです。権力者はそのくらいにしか思っていないはずでしょ? これを作るために消費した莫大な費用は、神を信じさせ、救いを求める民たちが働いて得たなけなしのおカネを、寄付と言ってむしり取っただけなのですから。まったく、人間のやることには一貫性がありません。不思議な生き物です」
なんだ? 何が言いたいんだ?
「オマエは――」
オレが言いかけた時、「グエルさま~」と、フィルが再びオレを呼んだ。
「ほら、姫様が呼んでいますよ。行ってあげたらどうですか?」
「えっ? 姫って――って、あれ?」
隣にいたはずの男が、いつのまにかいなくなっていた。いったい、なんなんだ? 声をかけられるまで、まったく気づかなかったし――それって……
ヘンな幻覚でも見てしまったのだろうか――疲れているのかなあ……
「グエルさま~先に入りますよぉ!」
それにしても、フィルのテンションが高い。まあ、いいけど――
話しかけてきた男がなんだったのか――ちょっと、気になるが、オレはフィルに急かされ大聖堂の中に入った。
薄暗く、ひんやりとした聖堂内は実に広い。無数にある柱の間を抜け祭壇の前まで行くと、フィルとマルタが立っていた。その正面には巨大な女神の像。アスタリア大聖教の唯一神、アスタリアを模した大理石の像である。
「こんなにスゴかったのか――」
王都の大聖堂にもアスタリア像はあるが、それをはるかに凌ぐほどの大きさ――前の人生でもこれを見たはずだが、まったく記憶にない。あの頃は、神をも恐れないほど慢心していたからなあ……ふとフィルを見ると、涙を流していた。
「私、ココに来ることが夢だったのです。それが叶いました」
感無量という表情で言われると、からかうこともはばかれる。
オレは「よかったな」とだけ声にした。
その時、知っている声を耳にして、オレは慌てる。
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