魔王君と俺 〜婚活から逃げて異世界へ行ったら、初日からヤバいのに誤解されてゴールインした件〜

一一(カズイチ)

文字の大きさ
74 / 84
ようこそ実力主義のグランピングへ<蛇足編3>

そ、そうきたか〜(後半アウクトルサイド)

しおりを挟む
「何だいむさ苦しいメンバーだね。女の一人もいないのかい」
「メルセさん!?」
「アタシもお邪魔して良いかい。花の一つでもあった方が、酒が美味いだろ」
「お前が花ってタマかよ」

 アヴァンが突っ込む。
 ゼルドナは腕を組んで目を閉じたまま我関せずだ。

「こんなしなやかな野生の花、滅多にお目にかかれるもんじゃないよ」
「あははは。どうします? フォンスさん?」

 ダンがフォンスに問いかけた。

「……彼女は世慣れていそうだし、女性の意見も聞けたら嬉しい」
「じゃあ。メルセさんは此方へどうぞ」
「一杯ひっかけて娼館にしけこむんじゃなくて、顔突き合わせて相談事なのかい?」
「ちょ! メルセさん!」

 ダンが真っ赤になって否定する。

「彼らにはアウクトルの事で相談乗ってもらいたかったんだ」
「……へぇ」

 魔界の住民は基本魔王至上主義だ。魔王関連の相談は慎重にならざるを得ない。
 しかし、この街の住民にはその縛りがない。
 アウクトルに座標を教えてもらったことで、俺は今後もここへ自力で転移可能だ。
 俺は男友達とは別に、何かあった時に相談できる相手が欲しい。

 偏見かもしれないが、ダンは純情そうで恋愛経験が豊富には見えない。
 ゼルドナは硬派すぎてダンと同レベルな気配がする。
 メルセは男女の仲に詳しそうだし、もしかしたらこの中で一番頼りになるかもしれない。

「アウクトルの事で誰かに相談しようと思っても、交友関係を広げていなかったので手詰まりになった事があった。彼は故郷では特別な存在だから、詳細を伏せて彼方の誰かに相談するよりも、この街の君たちに相談する方が忌憚のない意見を聞けると思ったんだ」
「特別って血筋が凄いとか? あの魔術もそれで?」
「血統ではなく彼固有のものだ。彼の能力は故郷で突出している。相談したいのは能力とは関係ない、彼自身の事だ」
「ふぅん。そもそも二人はどういう関係なんだい?」
「出会った切欠は彼を亡き者にしたい人物が、俺に殺させようとしたんだ」
「おいおい物騒だな」
「俺は最初からそのつもりはなかったから、まあ…その人物を騙す形で依頼を引き受けた」

 俺の回答が気に入ったのか、アヴァンがヒュウと口を鳴らした。
 対照的にダンは不安そうだ。

「それ大丈夫なんですか?」
「問題ない。もしかしたら、この先何かあるかもしれないが、それは俺の責任だ」
「それで? ターゲットだった坊やと接触して、今は仲良しこよしかい?」
「俺はそうありたいと思っている。だがアウクトルの考えが読めなくて困っている」
「結構わかりやすいと思うが」

 ずっと聞き役だったゼルドナが口を開いた。

「俺たちが合流してからずっと不機嫌だった。それを隠そうともしていない。あれは仲の良い友達が、他人に取られるのを警戒する子供と一緒だ」
「アンタはもう黙っときな。いいかい、飲み終わるまで口を開くんじゃないよ。これはアンタの為なんだからね」

 何故か顔を青くしたメルセが、ゼルドナに酒瓶を押し付けた。

 *

「アンタたち、やたら距離が近いけどヤる事やってんだろ?」

「「「ブッ」」」

 俺とメルセ以外のメンバーが咽せた。

「肉体関係の事を指しているなら微妙だ」

 明け透けかもしれないが、彼女から言い出した事だし特に気にする性格でもなさそうだ。

「微妙って、そんな表現あるのかい?」

 あまり吹聴したい内容ではないが、変に隠しては意味がない。
 対魔族と違って、何も隠さずに相談できるのが彼らに相談する最大の利点だ。

「俺は性別を変えた状態で彼の子供を産んでいる。性行為で妊娠した」

「「「ングッ」」」

「彼は性別を変えた状態で俺の子供を産んでいる。俺の血液を使って妊娠した」

 最早誰も酒に手をつけない、全員驚いた顔で俺を凝視している。

「どちらも必要に迫られてのものだった。俺は気にしていないが、当時の彼は気にしたのかもしれない。今は踏ん切りがついているみたいだが」
「……アウクトルさんは17歳だって言ってませんでした?」

 計算が合わないと思ったのだろう。ダンは困惑顔だ。

「そこが難しいところで、俺の子供を産んだのは今のアウクトルと同一と考えて良いが、俺を妊娠させたのは……ええと、彼の本体というか、意識は彼と同一なんだが肉体は別なんだ」

 現在本体が休眠状態で、分体が活動していること。意識は共通と話す。

「つまり彼の記憶では肉体関係ありだが、今の体とは実は何もない。子供が存在するので、事情を知る者には内縁関係と認知されている」
「……ちょっと、理解に時間がかかるというか。時間かけても理解できる自信がないです」
「まー、とにかく色々あったって事だろ! 問題は今の悩みと、それをどうするかだ!」

 アヴァンが雑にまとめた。
 俺が酒に口を付けたので、他の面々もつまみに手を伸ばしたり、飲酒を再開した。

「昨日アウクトルに迫られたんだが、彼は男同士の状態で俺を抱きたいらしい」

「「「ヴグッ」」」

 メルセ以外が咽せた。

「……アンタはどうしたんだい?」
「断った」
「どうして?」
「とにかく童貞を捨てるのが目的といった感じで……彼が焦っているように感じたからだ」
「アンタ自身は抱かれる事についてどう思ってるんだい? 気持ち悪い? 嫌?」

 実感が湧かない為か、そこまで嫌悪感はない。だが元々性行為に興味がないので、しなくて済むならそれに越したことはない。

「嫌悪感はないが、安易にするべきではないと思っている」
「今回のは安易なのかい?」
「一般的な感覚が分からないんだ。男にとって童貞を捨てる事は、そんなに急を要するというか…大事な事なんだろうか?」
「あー、まあ。そこら辺は人によりけりだな。誰でも良いから早く卒業したいってヤツは確かに多い」
「……僕はいつよりも、誰との方が重要です…」
「随分可愛い事言うじゃないか~」
「ダンの言う誰かって、例の彼女の事だろ?」
「ちょっ、止めてください!」

「……アンタが大事な坊やほっぽり出して、この連中と飲みに行ったのは、坊やの事を相談したかったからなんだね」
「そうだ」

 大事とはちょっと違うが、そんな細かい訂正はしなくても良いだろう。面倒だ。

 =========

 フォンスをターゲットに遠見系の魔術をかけるとバレる。
 だからメルセに魔術をかけ、彼女の目を通じてアウクトルは飲み会の様子を盗み見た。

 フォンスがメルセに鑑定や解呪をすればアウトだが、そうなる確率は非常に低い。
 マリオネット役が優秀なこともあり、難なくアウクトルは目的を遂げた。

 フォンスがアウクトル以外の人間と接触しようとしたのは、恋愛相談を行う為だった。
 確かにこれはアウクトル本人には言えない。

 フォンスには自分以外とは極力関わって欲しくない。
 だがアウクトルに関する悩みを、誰かに相談したいといういじらしい想いを棄却するのはあまりに狭量だ。
 アウクトルだって、フォンスの事について友人達に意見を求めている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...