見合い相手が女装した男だった。しかも僕のストーカーらしい。

一一(カズイチ)

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脅迫状編

微笑みの貴腐人もとい腐男子

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「ハルさん結婚しちゃうの!?亅
「しませんよ。見合いはしますけどね」
「本当? それって会うだけだよね? 会ったら最後、話が進んじゃうなんて事無いよね?」
「少なくとも僕にそのつもりはありません。僕は三男なので政略結婚としてもあまりうまみは無いので、先方もそう力を入れた話ではないでしょう」
「……家関係なく、ハルさん目当てかもしれないじゃん」

 大きな図体を縮こませてしゅんとする姿に、ラインハルトは内心もだえた。

(その表情。ワンコ攻めか、無邪気な年下受けのどちらでもいけるな。流石だアーサー! 僕の目に狂いは無かった!)

 ラインハルトの部屋へ飛び込んできた青年――アーサーは、ラインハルトの年下の幼馴染だ。

 彼は男爵家の長男で、幼少期に近所に引っ越してきて以来ラインハルトを兄のように慕い、その後をついてきている可愛い弟分である。
 今の彼は、ラインハルトの所属する研究室のゼミ生。

 人懐こい大型犬のようなアーサー。
 ハニーブラウンの髪に黒目。
 ラインハルトも身長は高い方だが、アーサーは更に数センチ高い。
 運動部に所属しており、騎士団への勧誘もあったくらい運動神経と体格が良い。
 キラキラと目を輝かせてご主人様――ラインハルトにまとわりつく姿は、さながらゴールデンレトリバー。
 ご主人様大好きなワンコ君は、ラインハルトが誰かのものになるのがショックらしい。

(可愛いやつめ)

 すがる様なアーサーの言動に、ラインハルトは内心悶えた。
 勿論表面的には、穏やかに微笑む美形状態をキープである。



 ラインハルトはアーサーを昔から可愛がっている。
 末っ子のラインハルトとしては、純粋に自分を慕う彼が可愛いのもあるが何よりアーサーのポテンシャルを高く評価しているのだ。

 アーサーは見た目は大型犬。
 但し気性は穏やかで、料理や裁縫などの家事に長けている。
 きらびやかさは無いものの、見た目も整っている。
 ラインハルトにとってアーサーは、受けも攻めもナチュラルにこなせる万能キャラなのだ。

 ラインハルトは春であった頃から、作品毎に推しが居るタイプだ。推し同士に共通する傾向はなく基本雑食。
 今の彼の推しはアーサー。彼を軸に色々妄想するのが一番楽しい。

 アーサーと彼の友人達は、とても良い感じラインハルトの目を楽しませてくれている。

 同一作品でも接点の無いキャラ同士を強引にカップリングに仕立て上げたり、推しキャラに作品内で上手くカップリング相手がおらず脳内クロスオーバーして無理矢理自己満足する必要が無いのは楽だ。
 そして天然でしか得られない栄養がある。



 交友関係の広いアーサーだが、特に仲が良いのは2人。

 1人目は幼少期から仲の良いルイス。
 ルイスは女性ウケの良い美青年。
 ブルネットの髪に青い瞳で、アーサーに比べれば小柄で引き締まった体つきをしている。
 恋人にしたいタイプがルイス、旦那にしたいタイプがアーサーだ。

 アーサーが人懐こくってコミュニケーション能力に長けた性格とすれば、ルイスは真面目な学級委員長。

 アーサーの幼馴染ということは、即ちラインハルトとも長い付き合いという事。
 子供の頃の距離感のまままなアーサーとは違い、ルイスは成長するにつれて目上に対する適切な距離を取る様になった。

 寂しく無いとは言わないが、折り目正しいルイスがアーサーには砕けた態度を取るのを見るのは格別なのでラインハルトは満足している。
 彼らの戯れ合いを見るだけで、徹夜の疲れも吹っ飛ぶくらい幸せホルモンが分泌される。



 2人目は寄宿舎時代からルイス、アーサーの友人になったランスロット。
 前世の記憶持ちからするとランスロット=不倫男のイメージが強いのだが、真逆なタイプだ。
 夕陽の様な赤い髪に、エメラルドの瞳の華やかな美形だ。
 彼は非常に優秀で仕事の早い、しごでき上司もしくはスパダリタイプ。
 恋人や旦那にしようとすると、ランスロットに釣り合うだけのスペックが求められる高嶺の花。

 3人は同級生だが、ランスロットは生真面目でそこまで要領の良くないルイスや、のんびりした所のあるアーサーの面倒を見ることが多い。
 彼は有能だが、面倒見が良い所為で苦労する性格である。
 ランスロットは大雑把な所のあるアーサーに小言を言う事が多く、プライドを刺激されるのかアーサーも彼に対しては度々反発する姿勢を見せつつも付き合いは止めない。
 ラインハルトとしては、実に美味しい関係である。
 ランスロットの指摘に、アーサーがキャンキャン吠える姿を見るだけで肌がツヤツヤになる。



(個人的にアーサー×ルイス、ランスロット×アーサーが王道だが、属性次第でリバも全然ありだな)

 アーサーほどでは無いものの、ラインハルトはルイスともランスロットともそれなりに親しい。
 どちらも礼儀正しく、年上のラインハルトに敬意と親愛を示している。

 そんな2人が知ったら確実にショックを受けそうな事を、ラインハルトは考えているのだが思うだけなら自由。
 相手に知られなければ問題ない。
 誰も傷つけないなら、何をしても良いのである。

 例え脳内で裸のプロレス状態を想像していても、穏やかに会話しながらお茶を振る舞えば、彼等がラインハルトの微笑みに隠されたよこしまな視線に気付く事はない。
 例え嫉妬からの一方的なセックスでランスロットがアーサーを激しく攻めたてる妄想をしようとも、気付かれなれば全く問題ないのだ。



 長い付き合いの彼等に対しても、全く罪悪感を抱かずに妄想する男である。

 少人数でお互いの距離感が近いゼミ。

 大勢が自由に席を取る為、講師席からは彼等の親密度が一目瞭然な講義。

 非常に人間観察()のしがいがある。
 実に面白い。

 考古学を選択したのは、フィクションのような今の世界を更に堪能したかったからなのだが、仕事をしながらこんなに多くの男子生徒を観察できる職なんてそうそう無い。
 一定期間経てば卒業し、新入生が入ってくるので飽きも供給が途絶えることもない。
 枯れ専ではないが、講師陣に若い学生が憧れを超越した思いを抱き……なんてのも良い。

 目の前の光景や、脳内で補充した光景を思い浮かべるだけで自然とラインハルトの顔は笑みを形作る。
 大学内外で「微笑みの貴公子」と呼ばれているのだが、当の本人だけがそのことを知らない。
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