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脅迫状編
付き人宣言
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「俺がラインハルト様をお守りします!」
「いえ、結構です」
威勢の良いセシルの宣言を、ラインハルトは即座に断った。
「刃物を仕込むなんて悪質です。犯人が見つかるまで、俺は絶対貴方から離れません!」
「元から君は僕の側に居たんでしょうが」
「今までは影からでしたが、今後は堂々とお側にいます」
キリッとした表情は絵になるが、彼の背景を知る身ではトゥンクできない。
(ヒェッ)
ラインハルトは悪寒がした。
「……生徒を危険な目に遭わせることはできません。これは僕個人の問題なので何とかします。君は関わらないように」
「心配してくださってるんですね! 大丈夫です俺、強いので!」
建前を述べてなんとか断ろうとするが、相手を喜ばせる形になった。
「武道の心得が?」
「護身術です!」
「何処で習ったんですか?」
「通信教育です!」
(ダメじゃん)
そもそも通信教育で学べるものなのか。
騙されているとしか思えない。
ボディガード役ならアーサーの方が頼りになりそうだが、彼も生徒の時点で却下だ。
アーサーに関しては建前ではなく、若者を犯罪者と対峙させるわけにはいかないという、至極まっとうな考えだ。
ラインハルトが今できるのは、然るべき対応として職場に報告した後で、警察に届け出ることだ。
脅迫状の内容にも、差出人にもラインハルトは心当たりがない。
明るみになって困るような罪とやらも覚えが無いので、堂々と被害者として報告できる。
ラインハルトの制止虚しく、やる気満々のセシルはその後も当然のように部屋に居座り、帰宅時には彼を家まで護衛した。
フリート家は中堅どころの伯爵家であり、先代当主であるラインハルトの父が亡くなった際に少し金に困ったことがあったが今は安定している。
しかし成人済みの三男に専用の馬車を用意するほどでは無い。
マクガーデン家は裕福なので、セシルには登下校の時刻に合わせて家の馬車が迎えに来る。
寄り道したい時は事前に申請しておき、突発的な予定変更があれば折角の迎えをその場で帰すことになる。
セシルは20歳越えているが、おそらく誘拐防止対策だろう。
今回はラインハルトの退勤時間まで職員用駐車場で待機してもらい、送り届けてもらった。
幸いにも通信教育の成果が発揮される事態にはならなかった。
**
声をかけられたのでラインハルトが振り返ると、古文科の助手の女性だった。
「ラインハルト先生」
「ああ、イブさん。こんにちは」
「はい、こんにちは。ちょっとよろしいですか?」
足音軽く駆け寄ると、彼女は彼を夕食に誘った。
「私食べ歩きが趣味で、前に美味しかった店にまた行きたいんですが一人だとちょっと……」
「わかりました。僕で良ければご一緒させてください」
彼女は数少ない女性職員だ。この時代では珍しく職業婦人として自立していて立派だが、それでも一人で外食はハードルが高いようで度々ラインハルトを誘うのだ。
この時代は良い店をネット検索する事はできない。
看板を見て飛び入り入店する博打か、知り合いのクチコミの2択になる。
失礼だが地雷探知犬の様な彼女の存在はありがたい。
*
「ラインハルト様!」
ラインハルトがイブと話していると講義終了後に駆けつけたのだろう、息を切らせたセシルに名前を呼ばれた。
慌てているというより、焦っている様な表情だ。
「後で日時連絡しますね」
セシルをチラ見すると、彼女はラインハルトの肩にボディタッチし、耳元で囁いて退散した。
(コレさえ無ければな)
彼女がラインハルトを何度も食事に誘う理由は明らかだ。
貴重な存在だが、ボディタッチも増えてきているし、そろそろ潮時かもしれない。
*
「ラインハルト様は、あの女性に好意をお持ちなんですか?」
ラインハルトの部屋に入るなり、セシルは切り出した。
随分ストレートな問いだ。
真剣な顔なので、世間話のノリではない。
「彼女が誰か聞かないという事は、知っているんですね」
古文科のイブと物理学科のセシルに接点があるとは思えない。即ちストーキング行為の賜物だろう。
「俺が自分で調べた範囲なので軽くですが、ラインハルト様周辺の人間関係は把握済みです。脅迫状の件があるので、家の力を使って特に関わりが深そうな相手は、改めて調査員を使って身辺調査中です」
「ちょっと待ちなさい。君は手出ししない様に伝えた筈です。しかも人を雇うなんて、ご両親の了承を得ないと駄目でしょう」
セシルは親に養われている身だ。
金銭が関与する事で勝手な真似は許されない。
探偵の中には、知り得た情報を基に依頼主を強請る悪質な者も存在する。
ラインハルトのプライベートを調べた事に対し、セシルに悪びれた様子はない。先日の態度もだが、この時代はストーキングが犯罪だという認識が無いのかもしれない。
そうなると彼が隠れて部屋に出入りしたり、講義に参加したのはストーカーの自覚があるからではなく、自分が他科の学生だからか。
「脅迫状の件は父に話しました。ラインハルト様は我が家の縁談相手なので、動いているのは家が懇意にしている調査員です」
(安心して良いんだか悪いんだか)
結局縁談の件は宙ぶらりん状態。
マクガーデン家当主としては、ラインハルトは手放したく無い相手。
セシルがラインハルトの付き人のような事をしているのも容認している。
親の許可を得たセシルは堂々とラインハルトの側にいるようになった。
家への送り迎えは勿論、昼食も一緒。
彼がラインハルトから離れるのは、物理学科の必修講義の際だけ。
2枚目の脅迫状はまだ届いていないが、些細な嫌がらせをされるようになった。
自分の存在をチラつかせるかのように、一つ一つの悪戯は言い逃れできる範囲だが明らかに悪意ある人物の仕業だ。
どれもラインハルトの不在を狙ったもので、彼の行動予定を把握していないと不可能な内容だ。
現時点では肉体に危害を加える意図はみられないが、万が一に備えてフリードリンクのお茶は撤去した。
*
実の所ラインハルトはセシルを疑っていた。
偶々脅迫状が届けられた所に居合わせ、ラインハルトを守るという名目で彼の側で過ごす大義名分を得たセシル。
あまりに彼にとって都合の良い展開だ。
手紙に関しては、懐に忍ばせておいた物を自分が見つけたように振る舞えば良い。
渋りながらもラインハルトがセシルを側に置くことにしたのは、彼を監視する為だ。
付き人のような振る舞いを許容しているが、最初から彼に守ってもらうつもりはない。
しかし嫌がらせの件で、セシルは犯人候補から外れた。
理系の必須科目の講義は出席確認が厳しいので、身代わりを立てる事はできない。
セシルは常にラインハルトの側にいる為、嫌がらせを実行する事は不可能だ。
彼が自分で嫌がらせをできなくても、文系棟に所属する共犯者が居れば可能だ。
セシルは他科の生徒で、寄宿学校時代から今に至るまで部活動には入っていない。
しかし寄宿学校や、教養科目の講義を通じてできた文系の友人がいる可能性は否定できない。
試しにセシルを考古学科のゼミ生に紹介したが、全員面識は無いようだった。
ラインハルトだけの見立てでは不安なので、観察力のあるアーサーにもさり気なく確認した。アーサーは人の機微に敏感なので、彼の前で顔見知りなのに他人のフリをすれば絶対に気付く。
セシルが考古学科以外の文系学生に手紙で指示を出している可能性も考えた。
日中はラインハルトに付き切りでも帰宅後は自由だ。セシルはラインハルトの予定を言わなくても把握しているので、使用人に命じて手紙を届けさせたり、直接会って指示出すことは可能。
どちらの手段も前日にしか連絡できないため、当日イレギュラーな動きをしてみたが嫌がらせはあった。
ラインハルトは積極的に犯人探しをするつもりはないが、自衛の為それなりに調べる事はする。
素人の浅知恵だが、この段階でラインハルトはセシルを容疑者から外した。
週末にはラインハルトの部屋に鍵が取り付けられる予定だ。
施錠する事によって、嫌がらせが止むように祈るしかない。
もし施錠後も続くようであれば、犯人は考古学科所属――考えたくないが、ラインハルトにとって身近な人物が犯人である可能性が高い。
「いえ、結構です」
威勢の良いセシルの宣言を、ラインハルトは即座に断った。
「刃物を仕込むなんて悪質です。犯人が見つかるまで、俺は絶対貴方から離れません!」
「元から君は僕の側に居たんでしょうが」
「今までは影からでしたが、今後は堂々とお側にいます」
キリッとした表情は絵になるが、彼の背景を知る身ではトゥンクできない。
(ヒェッ)
ラインハルトは悪寒がした。
「……生徒を危険な目に遭わせることはできません。これは僕個人の問題なので何とかします。君は関わらないように」
「心配してくださってるんですね! 大丈夫です俺、強いので!」
建前を述べてなんとか断ろうとするが、相手を喜ばせる形になった。
「武道の心得が?」
「護身術です!」
「何処で習ったんですか?」
「通信教育です!」
(ダメじゃん)
そもそも通信教育で学べるものなのか。
騙されているとしか思えない。
ボディガード役ならアーサーの方が頼りになりそうだが、彼も生徒の時点で却下だ。
アーサーに関しては建前ではなく、若者を犯罪者と対峙させるわけにはいかないという、至極まっとうな考えだ。
ラインハルトが今できるのは、然るべき対応として職場に報告した後で、警察に届け出ることだ。
脅迫状の内容にも、差出人にもラインハルトは心当たりがない。
明るみになって困るような罪とやらも覚えが無いので、堂々と被害者として報告できる。
ラインハルトの制止虚しく、やる気満々のセシルはその後も当然のように部屋に居座り、帰宅時には彼を家まで護衛した。
フリート家は中堅どころの伯爵家であり、先代当主であるラインハルトの父が亡くなった際に少し金に困ったことがあったが今は安定している。
しかし成人済みの三男に専用の馬車を用意するほどでは無い。
マクガーデン家は裕福なので、セシルには登下校の時刻に合わせて家の馬車が迎えに来る。
寄り道したい時は事前に申請しておき、突発的な予定変更があれば折角の迎えをその場で帰すことになる。
セシルは20歳越えているが、おそらく誘拐防止対策だろう。
今回はラインハルトの退勤時間まで職員用駐車場で待機してもらい、送り届けてもらった。
幸いにも通信教育の成果が発揮される事態にはならなかった。
**
声をかけられたのでラインハルトが振り返ると、古文科の助手の女性だった。
「ラインハルト先生」
「ああ、イブさん。こんにちは」
「はい、こんにちは。ちょっとよろしいですか?」
足音軽く駆け寄ると、彼女は彼を夕食に誘った。
「私食べ歩きが趣味で、前に美味しかった店にまた行きたいんですが一人だとちょっと……」
「わかりました。僕で良ければご一緒させてください」
彼女は数少ない女性職員だ。この時代では珍しく職業婦人として自立していて立派だが、それでも一人で外食はハードルが高いようで度々ラインハルトを誘うのだ。
この時代は良い店をネット検索する事はできない。
看板を見て飛び入り入店する博打か、知り合いのクチコミの2択になる。
失礼だが地雷探知犬の様な彼女の存在はありがたい。
*
「ラインハルト様!」
ラインハルトがイブと話していると講義終了後に駆けつけたのだろう、息を切らせたセシルに名前を呼ばれた。
慌てているというより、焦っている様な表情だ。
「後で日時連絡しますね」
セシルをチラ見すると、彼女はラインハルトの肩にボディタッチし、耳元で囁いて退散した。
(コレさえ無ければな)
彼女がラインハルトを何度も食事に誘う理由は明らかだ。
貴重な存在だが、ボディタッチも増えてきているし、そろそろ潮時かもしれない。
*
「ラインハルト様は、あの女性に好意をお持ちなんですか?」
ラインハルトの部屋に入るなり、セシルは切り出した。
随分ストレートな問いだ。
真剣な顔なので、世間話のノリではない。
「彼女が誰か聞かないという事は、知っているんですね」
古文科のイブと物理学科のセシルに接点があるとは思えない。即ちストーキング行為の賜物だろう。
「俺が自分で調べた範囲なので軽くですが、ラインハルト様周辺の人間関係は把握済みです。脅迫状の件があるので、家の力を使って特に関わりが深そうな相手は、改めて調査員を使って身辺調査中です」
「ちょっと待ちなさい。君は手出ししない様に伝えた筈です。しかも人を雇うなんて、ご両親の了承を得ないと駄目でしょう」
セシルは親に養われている身だ。
金銭が関与する事で勝手な真似は許されない。
探偵の中には、知り得た情報を基に依頼主を強請る悪質な者も存在する。
ラインハルトのプライベートを調べた事に対し、セシルに悪びれた様子はない。先日の態度もだが、この時代はストーキングが犯罪だという認識が無いのかもしれない。
そうなると彼が隠れて部屋に出入りしたり、講義に参加したのはストーカーの自覚があるからではなく、自分が他科の学生だからか。
「脅迫状の件は父に話しました。ラインハルト様は我が家の縁談相手なので、動いているのは家が懇意にしている調査員です」
(安心して良いんだか悪いんだか)
結局縁談の件は宙ぶらりん状態。
マクガーデン家当主としては、ラインハルトは手放したく無い相手。
セシルがラインハルトの付き人のような事をしているのも容認している。
親の許可を得たセシルは堂々とラインハルトの側にいるようになった。
家への送り迎えは勿論、昼食も一緒。
彼がラインハルトから離れるのは、物理学科の必修講義の際だけ。
2枚目の脅迫状はまだ届いていないが、些細な嫌がらせをされるようになった。
自分の存在をチラつかせるかのように、一つ一つの悪戯は言い逃れできる範囲だが明らかに悪意ある人物の仕業だ。
どれもラインハルトの不在を狙ったもので、彼の行動予定を把握していないと不可能な内容だ。
現時点では肉体に危害を加える意図はみられないが、万が一に備えてフリードリンクのお茶は撤去した。
*
実の所ラインハルトはセシルを疑っていた。
偶々脅迫状が届けられた所に居合わせ、ラインハルトを守るという名目で彼の側で過ごす大義名分を得たセシル。
あまりに彼にとって都合の良い展開だ。
手紙に関しては、懐に忍ばせておいた物を自分が見つけたように振る舞えば良い。
渋りながらもラインハルトがセシルを側に置くことにしたのは、彼を監視する為だ。
付き人のような振る舞いを許容しているが、最初から彼に守ってもらうつもりはない。
しかし嫌がらせの件で、セシルは犯人候補から外れた。
理系の必須科目の講義は出席確認が厳しいので、身代わりを立てる事はできない。
セシルは常にラインハルトの側にいる為、嫌がらせを実行する事は不可能だ。
彼が自分で嫌がらせをできなくても、文系棟に所属する共犯者が居れば可能だ。
セシルは他科の生徒で、寄宿学校時代から今に至るまで部活動には入っていない。
しかし寄宿学校や、教養科目の講義を通じてできた文系の友人がいる可能性は否定できない。
試しにセシルを考古学科のゼミ生に紹介したが、全員面識は無いようだった。
ラインハルトだけの見立てでは不安なので、観察力のあるアーサーにもさり気なく確認した。アーサーは人の機微に敏感なので、彼の前で顔見知りなのに他人のフリをすれば絶対に気付く。
セシルが考古学科以外の文系学生に手紙で指示を出している可能性も考えた。
日中はラインハルトに付き切りでも帰宅後は自由だ。セシルはラインハルトの予定を言わなくても把握しているので、使用人に命じて手紙を届けさせたり、直接会って指示出すことは可能。
どちらの手段も前日にしか連絡できないため、当日イレギュラーな動きをしてみたが嫌がらせはあった。
ラインハルトは積極的に犯人探しをするつもりはないが、自衛の為それなりに調べる事はする。
素人の浅知恵だが、この段階でラインハルトはセシルを容疑者から外した。
週末にはラインハルトの部屋に鍵が取り付けられる予定だ。
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