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脅迫状編
それからそれから
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ラインハルトの話に思うところがあったのか、ジョセフは前向きに検討したいと述べた。
ラインハルトとしても、即決できるような案件では無いのでそれ以上は何も言わなかった。
後はマクガーデン家の問題だ。
「何で君が付いてくるんですか?」
「ラインハルト様にお詫びしたくて」
てっきり玄関先で見送るだけかと思ったら、セシルは当然のような顔をして馬車に同乗した。
(嫌な予感がする)
セシルのお詫びは、今の所100%の確率で性的なご奉仕だ。
彼にはそんなにラインハルトが欲求不満に見えるのか悩むところだが、彼の性格を考えるに自分がして欲しい事をやっているのだろう。
案の定ラインハルトは馬車の中で色々された。
(揺れる馬車の中でって、あんなに怖いものなんだな)
先日はバレるんじゃ無いかという危機感でラインハルトはヒヤヒヤしたが、今回は怪我するんじゃ無いかという危機感で寿命が縮んだ。
**
「ジークハルト!! 貴方自分が何言ってるのか分かっているの!?」
玄関ホールにまで、マリアンヌの悲鳴が届いてくる。
帰宅先のフリート家は、混乱の真っ只中だった。
先日ラインハルトは試作品を返却する際、電話の有用性や交換機の概念などを話した。
その後、研究室とラインハルトの両者から電話機について聞かされたジークハルトの心は揺れた。
ジークハルトは研究に未練があった。
それを後押ししたのが……
「ジークさん。アンタは自分が好きな事をやれば良い。俺が後押しするよ」
シグルドである。
彼は公爵子息だった。
シグルドは嫡男なのだが、昔から色々やらかしており親も匙を投げた状態。放蕩息子だが決定的なやらかしは無く実家で一定の地位を保っており、公爵家の後ろ盾あってのものだが投資による個人資産がある。
家は真面目な次男が継ぐ予定なので、シグルドは気儘な身分でありながらそれなりの権力と金を持っている。
「アンタが俺の事をどう思おうと構わない。まあ好意的に見てくれたら嬉しいけどね」
「何やってるんだシグルド!?」
結局ラインハルトにくっついてフリート家に上がり込んだセシルが、友人を問い詰めた。
「何って惚れた相手の夢を後押ししたい、健気な男の献身ってヤツさ」
「お前が? ラインハルト様のお兄様に?」
「おいおい、俺をジークさんに紹介したのはお前だろ」
「そういう紹介じゃ無い!」
確かに先日、セシルとシグルドはフリート家の夕食に招かれた。当然ジークハルトも同席したのだが、挨拶のみでシグルドとは会話らしい会話はしていなかったはずだ。
新たな登場人物の出現に、マリアンヌのターゲットがラインハルトにシフトした。
「ラインハルト! 貴方が関与しているんですか!? しかもマクガーデン家とも破談など……」
「お兄様がシグルドとカップルになるなら、俺がラインハルト様とカップルになっても良いですよね!」
「何言ってるんですか君!?」
空気を読まないセシルの脳天気な発言に、ラインハルトはツッコミをいれた。
「……そもそも俺はこの男とそう言った関係じゃ無い。この男が一方的に喋ってるだけだ」
ジーハルトは淡々と否定した。
割と淡々と話が進んだマクガーデン家の応接室とは違い、フリート家の応接室は各々が好き勝手発言する無法地帯だ。
パンパンパンッ!
手を叩いて皆の注目を集めたのはハルバート。
「ジークフリート兄さんは研究者に戻りたい。母さんは伯爵家の後継者問題が不安。相違ありますか?」
「無い」
「そうよ」
二人から言質をとると、ハルバートは口元に笑みを浮かべた。
「では兄さんには研究者に戻ってもらい、私が家を継ぎます。条件として少し身分差のある相手との結婚を母上に認めてもらう事になります。長男と三男からは孫が望めない可能性があるので、母上も私の提案を拒否したり嫁イビリしたりしませんよね?」
「俺はこの男とは――」
「兄さん黙ってください。母上、良いですね? 今すぐ返答しなければ、この提案が不服と見て私は家を出ますよ。そうなったら母上は自分で兄さんを説得しなければいけませんね」
ニコニコと決断を迫る次男に、母は折れた。
「~~ッ分かったわ!」
「では此処にサインください」
口頭では信用できない。
言い合いの最中、ハルバートが会話に入っていなかったのは契約書を書いていた為だ。
「はい確かに。兄さんの研究は、私とシグルドさんが後押しします。兄さんをものにできるかはシグルドさん次第ですが、スポンサーとして圧力をかけるのは禁止です」
「わかってるよ。そんな事しても……いや、プレイの一環なら良いかもしれないけど止めておこう。ジークさん睨まないでくれよ、冗談だって」
契約書をポケットにしまいながら、ハルバートは弟を振り返った。
「ラインハルトは好きにしなさい。後継者問題は解決したし、私は弟の性癖に口出しするつもりは無いよ」
「前者はありがたいですけど、後者は複雑です。僕は同性愛者じゃありませんからね」
「ラインハルト様!?」
ラインハルトの発言に、セシルが悲鳴を上げる。
(何でショック受けた顔してるんだ)
ラインハルトは自分が男色家でないと以前から申告していた。
裏切られたような顔をされても困る。
セシルとの行為は襲われただけだ。
「まあまあセシル。俺と一緒に頑張れば良いじゃないか」
「お前と一緒にやるつもりは無いが、俺も諦めるつもりは無い」
「迷惑だ」
「諦めてください」
(日頃はハルバート兄さんは中間管理職状態なんだけど、要領が良いから最終的に一番得するんだよな)
一人勝ちしたハルバートと違い、ジークハルトはシグルド、ラインハルトはセシルと悩みの種はくっ付いたままのようだ。
【脅迫状編END】
ラインハルトとしても、即決できるような案件では無いのでそれ以上は何も言わなかった。
後はマクガーデン家の問題だ。
「何で君が付いてくるんですか?」
「ラインハルト様にお詫びしたくて」
てっきり玄関先で見送るだけかと思ったら、セシルは当然のような顔をして馬車に同乗した。
(嫌な予感がする)
セシルのお詫びは、今の所100%の確率で性的なご奉仕だ。
彼にはそんなにラインハルトが欲求不満に見えるのか悩むところだが、彼の性格を考えるに自分がして欲しい事をやっているのだろう。
案の定ラインハルトは馬車の中で色々された。
(揺れる馬車の中でって、あんなに怖いものなんだな)
先日はバレるんじゃ無いかという危機感でラインハルトはヒヤヒヤしたが、今回は怪我するんじゃ無いかという危機感で寿命が縮んだ。
**
「ジークハルト!! 貴方自分が何言ってるのか分かっているの!?」
玄関ホールにまで、マリアンヌの悲鳴が届いてくる。
帰宅先のフリート家は、混乱の真っ只中だった。
先日ラインハルトは試作品を返却する際、電話の有用性や交換機の概念などを話した。
その後、研究室とラインハルトの両者から電話機について聞かされたジークハルトの心は揺れた。
ジークハルトは研究に未練があった。
それを後押ししたのが……
「ジークさん。アンタは自分が好きな事をやれば良い。俺が後押しするよ」
シグルドである。
彼は公爵子息だった。
シグルドは嫡男なのだが、昔から色々やらかしており親も匙を投げた状態。放蕩息子だが決定的なやらかしは無く実家で一定の地位を保っており、公爵家の後ろ盾あってのものだが投資による個人資産がある。
家は真面目な次男が継ぐ予定なので、シグルドは気儘な身分でありながらそれなりの権力と金を持っている。
「アンタが俺の事をどう思おうと構わない。まあ好意的に見てくれたら嬉しいけどね」
「何やってるんだシグルド!?」
結局ラインハルトにくっついてフリート家に上がり込んだセシルが、友人を問い詰めた。
「何って惚れた相手の夢を後押ししたい、健気な男の献身ってヤツさ」
「お前が? ラインハルト様のお兄様に?」
「おいおい、俺をジークさんに紹介したのはお前だろ」
「そういう紹介じゃ無い!」
確かに先日、セシルとシグルドはフリート家の夕食に招かれた。当然ジークハルトも同席したのだが、挨拶のみでシグルドとは会話らしい会話はしていなかったはずだ。
新たな登場人物の出現に、マリアンヌのターゲットがラインハルトにシフトした。
「ラインハルト! 貴方が関与しているんですか!? しかもマクガーデン家とも破談など……」
「お兄様がシグルドとカップルになるなら、俺がラインハルト様とカップルになっても良いですよね!」
「何言ってるんですか君!?」
空気を読まないセシルの脳天気な発言に、ラインハルトはツッコミをいれた。
「……そもそも俺はこの男とそう言った関係じゃ無い。この男が一方的に喋ってるだけだ」
ジーハルトは淡々と否定した。
割と淡々と話が進んだマクガーデン家の応接室とは違い、フリート家の応接室は各々が好き勝手発言する無法地帯だ。
パンパンパンッ!
手を叩いて皆の注目を集めたのはハルバート。
「ジークフリート兄さんは研究者に戻りたい。母さんは伯爵家の後継者問題が不安。相違ありますか?」
「無い」
「そうよ」
二人から言質をとると、ハルバートは口元に笑みを浮かべた。
「では兄さんには研究者に戻ってもらい、私が家を継ぎます。条件として少し身分差のある相手との結婚を母上に認めてもらう事になります。長男と三男からは孫が望めない可能性があるので、母上も私の提案を拒否したり嫁イビリしたりしませんよね?」
「俺はこの男とは――」
「兄さん黙ってください。母上、良いですね? 今すぐ返答しなければ、この提案が不服と見て私は家を出ますよ。そうなったら母上は自分で兄さんを説得しなければいけませんね」
ニコニコと決断を迫る次男に、母は折れた。
「~~ッ分かったわ!」
「では此処にサインください」
口頭では信用できない。
言い合いの最中、ハルバートが会話に入っていなかったのは契約書を書いていた為だ。
「はい確かに。兄さんの研究は、私とシグルドさんが後押しします。兄さんをものにできるかはシグルドさん次第ですが、スポンサーとして圧力をかけるのは禁止です」
「わかってるよ。そんな事しても……いや、プレイの一環なら良いかもしれないけど止めておこう。ジークさん睨まないでくれよ、冗談だって」
契約書をポケットにしまいながら、ハルバートは弟を振り返った。
「ラインハルトは好きにしなさい。後継者問題は解決したし、私は弟の性癖に口出しするつもりは無いよ」
「前者はありがたいですけど、後者は複雑です。僕は同性愛者じゃありませんからね」
「ラインハルト様!?」
ラインハルトの発言に、セシルが悲鳴を上げる。
(何でショック受けた顔してるんだ)
ラインハルトは自分が男色家でないと以前から申告していた。
裏切られたような顔をされても困る。
セシルとの行為は襲われただけだ。
「まあまあセシル。俺と一緒に頑張れば良いじゃないか」
「お前と一緒にやるつもりは無いが、俺も諦めるつもりは無い」
「迷惑だ」
「諦めてください」
(日頃はハルバート兄さんは中間管理職状態なんだけど、要領が良いから最終的に一番得するんだよな)
一人勝ちしたハルバートと違い、ジークハルトはシグルド、ラインハルトはセシルと悩みの種はくっ付いたままのようだ。
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