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絶海の孤島編
ズッ友チェーン
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「トリルさん! 状況はどうでした?」
屋敷に戻ったラインハルト達に、ゲルスが駆け寄ってきた。
「橋が燃えていました。山火事の危険はないでしょう。ロープウェイは無事なので何とかなりそうです」
「良かった」
「いえ、」
ギリアムの事を言いあぐねているのだろう、トリルが言葉を濁す。
「そうだ! 大変なんです! ギリアムさんと、フロイスさんの姿が無いんです。お部屋だけじゃなく、屋敷の中を一通り探したんですが何処にも居なくて……」
「ギリアム先生は、橋が掛かっていた谷底に転落した姿が見つかった」
ビエルサが淡々と告げた。
会場内に集まっていた人々の間に動揺が走る。
「まさかフロイスさんが?」
「ちょっと言い争いしただけだろ。決めつけるのはちょっと……」
「でも姿が見えないんだろ?」
「あの爺さんに、若者をどうこうすることができると思うか?」
騒つく人々に対し、偵察に同行した客が一歩進み出た。
「……皆を不安にさせたくなくて黙ってたけど、橋は誰かに燃やされたんだ」
「オイ!」
「アンタだって気付いてたんだろ? 油撒かなきゃあんなに燃えない。それにロープだってこっち側から切断されてた」
トリルの説明で落ち着いたかに見えた2人だが、彼等もラインハルトと同じ考えに思い至っていたらしい。
「ちょっと待て、それって犯人がこっち側に居るってことだろ」
「俺達は違うぞ。ずっと会場に居たし……怪しいのは部屋に戻っていた奴と使用人だ!」
「冗談じゃない! 俺は部屋で休んでいただけだ。疑うなら靴でもランタンでも調べろよ。外になんか行ってないからな!」
「皆様落ち着いてください」
ビエルサが宥めようとしたが、興奮状態になった者達は聞く耳を持たない。
「落ち着いていられるか! もう我慢できん! 俺は部屋に戻る!」
(ちょっ、それ一番言っちゃいけないヤツ!)
盛大なフラグを建てたガウン姿の男性が部屋に戻ろうとしたが、会場に残っていた男性が腕を掴んで引き止めた。
「おいおい逃げるのか?」
「馬鹿馬鹿しい。お前達と一緒に居たくないだけだ酔っ払いどもめ」
パンパンパンッ!
かつてのハルバートの真似をして、ラインハルトは手を叩いて皆の注目を集めた。
「僕達は意図的に閉じ込められました。これは事実です」
ラインハルトは敢えてショッキングな言い方をした。
「まず会場に居た方々に橋を落とすことは不可能。トイレで中座した人物もいますが橋まで行って帰ってくるのには時間がかかる上に、ロープを切るのも、油を撒くのも大荷物になります。招待客の身で道具を持ち込むのは難しく、現地調達も現実的ではありません」
会場に居たメンバーが胸を撫で下ろした。逆に部屋に戻っていた者達の表情が曇る。
「次に部屋に戻った方と、使用人の方々にはアリバイがない状態です。だからと言って此処でバラバラに過ごしても事態は好転しません」
「じゃあどうしろと言うんだ?」
(一箇所にまとまって過ごすのが無難だけど、難しいだろうな)
何より使用人が仕事できなければ、救助までの生活がかなり苦しいものになる。
「グループを作って相互監視しながら生活するのが無難ですね。犯人が我々の中に居らず、屋敷の外に潜んでいたとしてもグループで行動していれば身を守ることができます」
「僕から提案があります」
ビエルサが指示すると、ゲルスが駆け足で箱を持ってきた。
中には幾つもの手錠が入っていた。通常と違うのはチェーンが長く、1メートル位ある事。
「過去、当家には窃盗犯が度々侵入しました。これは彼等を捕えた後、騎士団が到着するまでの間、屋敷で拘束する為に用意されたものです」
「何でこんなに長いんだ?」
チェーンを持った客の一人が、両手を広げてみせる。
「牢屋が無いので、柱にチェーンを通して動き回れない様にしていました」
「俺達に繋がれろってことか!?」
ザワつく男達に、ビエルサが首を振る。
「使うのは片手だけです、もう片方を別の人物が装着してペアになります。僕を含めアリバイの無い者が装着します。ペア相手をランダムに選べば結託している可能性もない。充分な長さがあるので、多少不自由はありますが生活に支障はない筈です。何よりこれ以上争わなくて済む。この状況で内部分裂は本当に危険です。僕達はアリバイがある方を安心させる為にこれだけの事をするんです、もう文句はありませんね?」
侯爵家の当主に此処まで言われて、不服と言える者はいないようだ。
アリバイのあるものは自衛の為、自主的にグループを作って行動する事になった。
「クジでも作るのか?」
「2グループに分け片方が手錠を、もう片方が鍵を選びます。合致する組み合わせがペアです」
「それなら細工は難しいな」
二人ひと組での行動を受け入れる流れになったので、当主は更なる提案をした。
「完全ランダムなので、男女のペアができてしまう可能性があります。先に女性陣だけでペアを作らせてください」
「この長さじゃ、一緒の部屋に寝る事になるから仕方がない」
「使用人と客の組み合わせになったらどうする?」
「男女は仕方ないけど、使用人とまで分けたらランダムの意味がないだろ。使用人同士なら結託もあり得る」
「となると、使用人とペアになったらそっちに合わせて動かなきゃ行けない訳か。ついてねぇな」
「おい。アリバイの無いやつ手を挙げてくれ!」
元々頭の良い人達が集まっているお陰で、一度方針が決まると話が早い。
冷静になった彼等は積極的に意見を出してサクサクと行動しだした。
「奇数だぞ。誰かアリバイある奴、協力してくれ」
好んで不自由な状態になりたい者はいない。誰も名乗り出る気配が無い為、ラインハルトは渋々立候補した。先程仕切るような真似をした手前、何もしない訳にはいかなかった。
トリルと目が合い微笑まれたが、ラインハルトのテンションは上がらなかった。
*
11(-2)人の招待客、7人の使用人、そしてビエルサ。
うちアリバイがなかったのは3人の招待客とビエルサ。
使用人は会場を出入りしていた者もいるが強制的に全員手錠対象となった。幸いにも男女比は問題なくペアを作ることができた。
「ラインハルト先生。よろしくお願いしますね」
「ははは……」
ラインハルトの口から乾いた笑いが漏れる。
使用人の比率が圧倒的に多いので仕方ないのだが、ラインハルトのペアはトリルだった。
よりによってフランシス邸の使用人の中では一番地位が高く忙しいらしい彼。
忙殺的な意味で眠れない夜になりそうだ。
屋敷に戻ったラインハルト達に、ゲルスが駆け寄ってきた。
「橋が燃えていました。山火事の危険はないでしょう。ロープウェイは無事なので何とかなりそうです」
「良かった」
「いえ、」
ギリアムの事を言いあぐねているのだろう、トリルが言葉を濁す。
「そうだ! 大変なんです! ギリアムさんと、フロイスさんの姿が無いんです。お部屋だけじゃなく、屋敷の中を一通り探したんですが何処にも居なくて……」
「ギリアム先生は、橋が掛かっていた谷底に転落した姿が見つかった」
ビエルサが淡々と告げた。
会場内に集まっていた人々の間に動揺が走る。
「まさかフロイスさんが?」
「ちょっと言い争いしただけだろ。決めつけるのはちょっと……」
「でも姿が見えないんだろ?」
「あの爺さんに、若者をどうこうすることができると思うか?」
騒つく人々に対し、偵察に同行した客が一歩進み出た。
「……皆を不安にさせたくなくて黙ってたけど、橋は誰かに燃やされたんだ」
「オイ!」
「アンタだって気付いてたんだろ? 油撒かなきゃあんなに燃えない。それにロープだってこっち側から切断されてた」
トリルの説明で落ち着いたかに見えた2人だが、彼等もラインハルトと同じ考えに思い至っていたらしい。
「ちょっと待て、それって犯人がこっち側に居るってことだろ」
「俺達は違うぞ。ずっと会場に居たし……怪しいのは部屋に戻っていた奴と使用人だ!」
「冗談じゃない! 俺は部屋で休んでいただけだ。疑うなら靴でもランタンでも調べろよ。外になんか行ってないからな!」
「皆様落ち着いてください」
ビエルサが宥めようとしたが、興奮状態になった者達は聞く耳を持たない。
「落ち着いていられるか! もう我慢できん! 俺は部屋に戻る!」
(ちょっ、それ一番言っちゃいけないヤツ!)
盛大なフラグを建てたガウン姿の男性が部屋に戻ろうとしたが、会場に残っていた男性が腕を掴んで引き止めた。
「おいおい逃げるのか?」
「馬鹿馬鹿しい。お前達と一緒に居たくないだけだ酔っ払いどもめ」
パンパンパンッ!
かつてのハルバートの真似をして、ラインハルトは手を叩いて皆の注目を集めた。
「僕達は意図的に閉じ込められました。これは事実です」
ラインハルトは敢えてショッキングな言い方をした。
「まず会場に居た方々に橋を落とすことは不可能。トイレで中座した人物もいますが橋まで行って帰ってくるのには時間がかかる上に、ロープを切るのも、油を撒くのも大荷物になります。招待客の身で道具を持ち込むのは難しく、現地調達も現実的ではありません」
会場に居たメンバーが胸を撫で下ろした。逆に部屋に戻っていた者達の表情が曇る。
「次に部屋に戻った方と、使用人の方々にはアリバイがない状態です。だからと言って此処でバラバラに過ごしても事態は好転しません」
「じゃあどうしろと言うんだ?」
(一箇所にまとまって過ごすのが無難だけど、難しいだろうな)
何より使用人が仕事できなければ、救助までの生活がかなり苦しいものになる。
「グループを作って相互監視しながら生活するのが無難ですね。犯人が我々の中に居らず、屋敷の外に潜んでいたとしてもグループで行動していれば身を守ることができます」
「僕から提案があります」
ビエルサが指示すると、ゲルスが駆け足で箱を持ってきた。
中には幾つもの手錠が入っていた。通常と違うのはチェーンが長く、1メートル位ある事。
「過去、当家には窃盗犯が度々侵入しました。これは彼等を捕えた後、騎士団が到着するまでの間、屋敷で拘束する為に用意されたものです」
「何でこんなに長いんだ?」
チェーンを持った客の一人が、両手を広げてみせる。
「牢屋が無いので、柱にチェーンを通して動き回れない様にしていました」
「俺達に繋がれろってことか!?」
ザワつく男達に、ビエルサが首を振る。
「使うのは片手だけです、もう片方を別の人物が装着してペアになります。僕を含めアリバイの無い者が装着します。ペア相手をランダムに選べば結託している可能性もない。充分な長さがあるので、多少不自由はありますが生活に支障はない筈です。何よりこれ以上争わなくて済む。この状況で内部分裂は本当に危険です。僕達はアリバイがある方を安心させる為にこれだけの事をするんです、もう文句はありませんね?」
侯爵家の当主に此処まで言われて、不服と言える者はいないようだ。
アリバイのあるものは自衛の為、自主的にグループを作って行動する事になった。
「クジでも作るのか?」
「2グループに分け片方が手錠を、もう片方が鍵を選びます。合致する組み合わせがペアです」
「それなら細工は難しいな」
二人ひと組での行動を受け入れる流れになったので、当主は更なる提案をした。
「完全ランダムなので、男女のペアができてしまう可能性があります。先に女性陣だけでペアを作らせてください」
「この長さじゃ、一緒の部屋に寝る事になるから仕方がない」
「使用人と客の組み合わせになったらどうする?」
「男女は仕方ないけど、使用人とまで分けたらランダムの意味がないだろ。使用人同士なら結託もあり得る」
「となると、使用人とペアになったらそっちに合わせて動かなきゃ行けない訳か。ついてねぇな」
「おい。アリバイの無いやつ手を挙げてくれ!」
元々頭の良い人達が集まっているお陰で、一度方針が決まると話が早い。
冷静になった彼等は積極的に意見を出してサクサクと行動しだした。
「奇数だぞ。誰かアリバイある奴、協力してくれ」
好んで不自由な状態になりたい者はいない。誰も名乗り出る気配が無い為、ラインハルトは渋々立候補した。先程仕切るような真似をした手前、何もしない訳にはいかなかった。
トリルと目が合い微笑まれたが、ラインハルトのテンションは上がらなかった。
*
11(-2)人の招待客、7人の使用人、そしてビエルサ。
うちアリバイがなかったのは3人の招待客とビエルサ。
使用人は会場を出入りしていた者もいるが強制的に全員手錠対象となった。幸いにも男女比は問題なくペアを作ることができた。
「ラインハルト先生。よろしくお願いしますね」
「ははは……」
ラインハルトの口から乾いた笑いが漏れる。
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