君の空になる

mimi*

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これから

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「どうたった? あれからどうにかなったか?」
 登校して一番、沈んだ千彰に声をかけてきたのはいつものとおり萩原徹だった。その明るい声はまるで千彰が失敗するわけがないと言っているようで、被害妄想もいいところだが、筋違いな憤りを覚えてしまう。
「玉、砕!」
 まるで自分に言い聞かせるように声を強くした。まったくやってられない。玉砕どころじゃない。あれは完全に嫌われた。初対面からして最悪な印象を与えていたのに、ますます分を悪くしただけだ。
「はは、玉砕かよ! いいねー、面白いねー、千彰、そんなに嫌われることしたの?」
 してない、とは言い切れず、千彰は返す言葉を見失った。今日の朝。ホームに都子の姿はなかった。早めに来ることはあっても遅刻することはない彼女のことだ。どうやら電車の時間を変えられてしまったらしい。
「だいたいあーいうタイプはもっと慎重に扱わなきゃだめなんだよ。急に告白はやめといた方がいいと思ったなー、俺は。で? 振られた理由ちゃんと聞きにいったんだろ?」
「は……」
 じゃあそれを最初にちゃんと忠告してくれよ、と千彰は心から思った。……いや、でも実際言われたからといってそうしたかは分からないけれど。きっぱり振られるのが怖くてあんな馬鹿げた告白の仕方をしたのだ、聞かなかった確率の方が大きいかもしれない。
 何にしても嫌われたことに変わりはないが。
「頭悪い奴は好きじゃないって」
「へえ、まさしく千彰のことだな。英語だけは異常にいいけど」
「つーか、俺のこと何も知らないから、嫌とかいう以前に理由さえ存在しないって」
「だろうな」
「あと」
 思い浮かんだ言葉に藤見良介を思い出して、胸がちくりと痛んだ。それと同時にわきあがる嫉妬心。苦々しい表情が顔に広がる。
「顔のいい男は嫌いだって」
 次の瞬間、隣を歩いていた徹は笑いを爆発させた。
「終わったな、お前終わった!」
 ひどい言葉をげらげら笑いながらはきだす。それに、千彰は少なからず傷ついた。
「……笑いすぎだろ」
「だって、お前、何で勝負するって言ってたっけ?」
「……顔?」
「だろ。お前が自慢できるのってそれくらいだもんなあ」
 ますますひどいことを言ってのける徹の辞書にはデリカシーという言葉が存在していないらしい。
「都子ちゃんだっけ」
「名前で呼ぶなよ」
「千彰なんてフって正解正解。見るからに頼りなさそうだもんな」
「は? 意味分かんねえ」
「だって、この歳でこんな開けっぴろげに恋愛相談するの、お前くらいだぞ」
 あー腹痛い、と徹は口元をひくひく引きつらせた。
 別に、恋愛相談をしていたつもりはない。徹が話せというから話していただけだ。
「おーまーえー」
「わー怒るなっ。タンマタンマ、千彰、他にも、いいとこあるから」
 慌てたように言葉を付け足した徹は両腕で自分をかばいながらさっと千彰から逃れた。
「えーっと……」
 目線を空に上げ、考えるその姿はかなりしらじらしい。
「そーいや、お前んち、結構金持ちだよな。妹かわいいし。素直でいい子だよな」
「……それ、俺と何の関係もないだろ」
 思わず低い声が出ると、焦ったように徹はぶんぶん首を振った。
「いや、関係ある! 女ってそーゆーとこまで気にすんだよ!」
「……ほんとかよ」
 これまでも徹からは散々てきとうなことを言われてきたのでどうも信用ならない。彼に向ける視線も自然と訝かしげなものになる。
「ほんとほんと。あ、ほら、お前昔から喧嘩だけは強いよな。うん。いいとこだよ、そういうのも」
「……もーいい」
 そろそろ呆れさえ感じていた千彰は、ひとつため息をつき、ばっさりと徹の言葉を切った。

 とりあえず考えるのはこれからのことだ。まだ彼女のことを諦めるつもりはない。そのためには、まず今の状況をどうにかしなくてはならない。
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