恋におちたら止まらない

mimi*

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ホントウの

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「あ、ああ……今村か。えっと、うん、散歩」
 彼の物言いには多少不審さを感じたが、あえて妃芽子はそれを気にしないことにした。
 なんとなく、学校で受ける彼のイメージと違う。
 妃芽子はその場の空気を居心地の良いものに変えたくて、彼に向かって何となく微笑んだ。ひょいっと座り込む。そして直也の足下にいる彼の飼い犬らしい犬の頭を撫でた。
「可愛いね。名前、なんて言うの?」
「……ちゃお」
「ぶっ」
 妃芽子は思わず吹き出した。いつもあんなクールな彼の口から『ちゃお』という単語が漏れたのだ。失礼だと思いつつも笑わずにはいられなかった。
「ひでーな。そんな笑わなくても……。ちなみに名前は俺が付けたんじゃないから」
「だよね。藤沢くんが付けたとか聞かされたときにはわたし失神するよ」
「うわっ、それもひでー」
 直也と二人で話すのは初めてのことだったが、以外にもスムーズに会話は弾んだ。

――こういうチャラチャラした感じの男の子は苦手だと思ってたけど……。

 ちゃおがいるせいかもしれない。彼の雰囲気がいつもと違うからかもしれない。どちらにしろ、妃芽子は今の状況を楽しんでいた。学校一のモテ男と話す機会など、きっともう一生ない。
「今村は、買い物か」
「うん。ちょっと急にお客さんが来ちゃって」
「ふーん……。……てゆーか眼鏡は? かけてないから、一瞬ってかかなりの間誰か分かんなかった」
 それでさっき固まってたのか、と妃芽子は納得して、直也の質問に対する答えを言う。
「生活上は問題ないから、学校以外ではかけてないの。といっても今は一番前の席だから、眼鏡かけなくても黒板見えるんだけどね」
「へぇ。でもほんと全然違うな。外で学校の奴らに会っても気付かれないだろ」
「うん……まあそうかも。気付いてくれるの茉莉子くらいかなあ……」
「はは。ま、俺は分かったけどね」
「時間かかったけど?」
「それはしょうがないっしょ」
 妃芽子の言葉に、直也はおかしそうに笑って返した。
 やっぱり学校とは違う。学校では何というか冷たいというか無関心というか……女の子に対してそんな感じなのに。

――というか、その笑顔思い切りストライクゾーンなんですけど……。

 直也のようなかっこいい男の子に微笑まれたら、いくら硬派で優等生の妃芽子でもくらっとくる。
 妃芽子が変なのに気が付いたのか、直也はどうした、と聞いてきた。
「気にしないで。藤沢くんのその笑顔がわたしのストライクゾーンに思いっ切り入っただけだから」
 直也は惚けた表情では? と妃芽子に返事を返す。そして意味が分かったのか、今度は彼の方がぶっと吹き出した。さきほどの妃芽子よりも激しかった。
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