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魔女、攫われる
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魔獣の襲撃の後しばらく休み、メリルとデュークは、二つ目の宿場町にその日の夜に到着することができた。予定よりだいぶ遅れての到着だ。
おそらくクローディアたちは、すでに宿をとっているはずだ。
デュークの体調はあまりよくはなく、どうにか宿に着くと、そのままベッドに崩れるように倒れこんでしまった。
メリルも魔力を著しく消費しだいぶ疲れていたが、当初の目的を果たさなければならない。クローディアへの接触は、王子であるデュークを介してでないと難しいだろう。よって、メリルは一人でもできること――夜のうちにクローディアたちの泊まる宿を見つけるべく行動を起こすことにした。
デュークには書置きと簡単な食事を枕元に置いて、そっと部屋を出る。
「あの、貴族の令嬢とその従者の二人連れだと思うのですが、この宿にお泊りになっていませんか? 当家のお嬢様なのです。年は十八歳。色白で、栗色の髪に翡翠の瞳。切れ長の瞳で少しきつい印象のあるとても美しいお嬢様なんですが」
お嬢様を探す使用人といった風情で、事前にデュークに聞いた特徴を元に宿に聞き込みにあたる。
「うちは安宿だからねえ。そんなお嬢様なんて泊まりゃしないよ」
「訳アリはごめんだね」
「ここに載ってるのが全員だがな」
「泊ってけよ。食堂にいれば、出くわすかもしれないぜ」
何件か宿をあたったが、そもそも、偽名を使っているかもしれない上に、顔も知らないメリルが、探せるわけがなかった。
(はあぁ。明日、デュークと一緒に街の出口で張るしかないか……)
五件目の宿に断られて、そろそろ諦めて自分の泊る宿に戻ろうとしていた時だった。
「人探しをしているのは、あなたですね?」
耳元に、淡々とした温度を感じさせない男の声が響き、メリルの全身が総毛立つ。
そして、首に強いショックを感じて、メリルの意識は刈り取られた。
◇◇◇◇◇◇
パシャリ。
顔にかかった水の冷たい感触で、メリルの意識はゆっくりと暗闇から覚醒した。
薄暗い、明かりを落とした部屋で、土埃で汚れた板張りの床が目に入る。
どうやら自分は床に転がっているらしい。
頬に張り付く濡れた髪が気持ち悪い。
手でぬぐおうとして、腕が動かないことに気が付いた。腕は後ろ手で縛られていた。
(つかまった? ああ、ばかばか、しくじった)
相手がこんな強硬手段に出るとは思わなかった。メリルは一人で聞き込みなどをしてしまった自分の馬鹿さ加減を後悔する。逃げている側からすれば、メリルは敵だ。若い女が一人でいたら、倒せる相手と判断されるに決まっている。
(でも、即座に殺されなかったということは、向こうも私と話したいってこと)
震えを押し殺して考えをまとめようとしていると、再び、バシャ、という音とともに、顔に水がかけられる。
「いい加減目を覚ましなさいな」
魅惑的、といってもいい抑揚の美しい声だ。
メリルは、床から、声のするほうへと顔をあげた。
「あなたが、クローディア嬢なの?」
「ふうん、私を探しているくせに、私の顔は知らないのね」
彼女は椅子に座って、優雅に足を組みながらメリルを見下ろしている。つややかな栗色の髪に翡翠色の猫のように気の強そうな瞳が美しい、華やかな美女だった。旅装なのに、その凛とした美しさは隠しきれていない。背後に控えているのが駆け落ちした侍従とやらだろうか。きれいな顔立ちの二十代半ばの男は、なんの感情もない瞳でメリルを見下ろしていた。
「あなた、誰? なぜ私を追っていたの?」
ふと、メリルはその言葉に引っかかりを覚えた。なぜも何もないのではなかろうか? 普通駆け落ちをしたら、家族から追手がかかるものだろう。それなのに、彼女はなぜ「なぜ」と聞くのだろう。
尊大な態度で、余裕を見せようとしているようだが、クローディアの見定めるような視線に、メリルはわずかに怯えの色を見て取った。
(もしかして――)
「聖女から命を狙われてるのね」
クローディアの瞳がわずかに揺れた。
(当たりだ)
きっとこれはただの駆け落ちではない。聖女を恐れたからこそ彼女は逃げたのだ。
そして、命を狙われるということは、彼女が何か、「重要な情報を知っている」証拠だ。
クローディアは、自分の動揺をかくすように尊大にふるまい続ける。
「何の事か分からないわ。でも、そんなことを言うってことは、あの女の手の者じゃないのね。あなたは、誰の命令で動いているのかしら?――言っておくけど、誰に何を言われても私は戻らないわよ」
「……私は、私達は、王国の将来のために動いているの。聖女が何か特殊な力を振るって王宮の人々を操っていることは分かっているわ。あなたを止めに来たのではないの。あなたの話が聞きたいだけよ」
メリルは、縛られたままできる限り顔を上げて、言葉に力を込めた。
ここで第三王子の名前を出していいのだろうか?
メリルが言っても信じてもらえないかもしれない。
仮に信じてもらえたとしてどうだろう。信用は増すかもしれない。けれど、秘密裏に動いているデュークの存在がばれて危険にさらすかもしれない。
駆け引きや交渉事を行ったことのないメリルには判断がつかない。
だから、せめて、彼女から重要な情報を聞き出したかった。
「――あの日、何があったの? あなたはなぜ、聖女の力の影響を受けていないの?」
クローディアは、その話を聞いた途端、みるみる顔を青ざめさせた。
「知らないわよ! 私は何も知らないわ!」
「ひょっとして脅されているの? 安心して。私達には、あなたを守る力があるわ。私達は、……カハッ」
途端におなかをひどく蹴りつけられて、メリルは呼吸を止めた。
息をすることもままならず、目に涙がにじむ。
視界の端にメリルを蹴りつけた従者の足が見えた。
「お嬢様、この者の甘言に惑わされてはいけません。粗雑な聞き込みに、私に簡単に捕らえられるほどの能力の低さからも、この者の所属する組織のレベルもたかが知れています。それに、このような状況なのにこの女の仲間は誰も助けに来ません。きっと捨て駒なのでしょう。そのような者の言う事など気に掛ける価値もありません」
「そう、そうよね。お父様もお母様も弟も……あ、あの方も、みんな、あの女の言いなりになってしまったわ。あの女の恐ろしさを知らないからみんな私にそんなこと言えるのよ」
「そうです。彼女の力は非常に大きい。私とお嬢様、たった二人だけだから目立たずここまで来られたのです」
「分かっているわ――私を守ってくれる人はもうイアン以外に誰もいないのだもの」
呼吸のできないまま、メリルは、顔だけをクローディアの方に向ける。
イアンという侍従の胸に縋りつく必死なクローディアの表情とは裏腹に、侍従の瞳は酷薄ともいえる冷たさを持ってメリルを見下ろしていた。
「お嬢様、この者は、私が排除いたします」
「殺すの? こんな間抜けな子をわざわざ殺す必要ある?」
「お嬢様は優しすぎます。聖女様のお力をご存じでしょう。この者を通してお嬢様が逃げたことを知られる可能性もあります」
「でも、」
「お嬢さま。もう、お嬢様の味方は私しかいないのです。お嬢様の身の安全のためには、わずかな禍根すらも残せません。私が、信じられませんか? 信じていただけないのであれば、この先お嬢様を連れて逃げ切ることが難しくなってしまいます」
「そんなことない! 信じるわ、信じる! 私にはもうイアンしかいないんだもの」
「……っ、まっ、クロ……。デュー……が、」
「お嬢様、外に出て、隣の小屋の影に隠れていてください。始末をつけたらすぐに参ります」
「分かったわ」
そういうとクローディアは部屋から出ていった。
メリルは、従者を睨みつけた。
従者は、酷薄な表情を張り付けたまま、メリルの腕を部屋の中央にある柱に縛り付ける。
「これから火事を起こします。騒ぎを起こした方が私達がここを去るのに都合がいいですから。――あの方のために死ねることを光栄に思いなさい」
「――あの方って、『マリア』?」
従者は途端にメリルを睨みつけ、再び蹴りつける。メリルの意識が遠のく。
「お嬢様も、あの方の聖なる行いのために命を捧げるべきなのです。きっと分かってくださるでしょう――お待ちいただけますか、私はもうすぐ使命を果たし、あなたの元に参ります」
従者は、天に向かい、恍惚とした表情でそう告げると、メリルを一瞥すらせずに部屋を出ていった。
やがて、外から、油の臭いと、煙のくすぶる臭いがしてきた。
◇◇◇◇◇◇
王宮の中庭で、マリアはいつものようにお茶を飲んでいた。
いつもと違う時間に、今日は、魔法使いだけを呼び寄せる。
彼女は魔法使いに、王子たちには知られたくないこまごまとしたお願いをよくするのだ。
「ねえロドニー。あの女どうなった? 従者の、なんだっけ、あの人に念入りにお願いしたのに、なかなか報告が来ないからちょっと気になっちゃったの。あの従者君、抵抗がすごかったからちゃんとマリアのお願い聞いてくれるか心配になっちゃったのよねえ。ちゃんとお仕事できてるのかマリア、心配だなあ」
「監視の厳しかった公爵邸より無事、あの方を連れ出せたようです。お望みの結果になるのはもうすぐかと」
「そう? 楽しみー」
「しかし、マリア様の御心を煩わせた不届きな輩ですので、仕事をこなした後は少し罰が必要ですね」
「うんうん、そうしちゃって。ロドニーのそういう気が利くところ、マリア、好きよ」
「マリア様……」
聖女は、彼女の魔法使いがぼろぼろにした庭の片隅を見てにっこりと邪気のない笑みを浮かべた。
「この世界に来て気づいちゃった。私って、きれいな庭より、ぐちゃぐちゃに踏みにじられた荒れ地の方が好きなのかも」
おそらくクローディアたちは、すでに宿をとっているはずだ。
デュークの体調はあまりよくはなく、どうにか宿に着くと、そのままベッドに崩れるように倒れこんでしまった。
メリルも魔力を著しく消費しだいぶ疲れていたが、当初の目的を果たさなければならない。クローディアへの接触は、王子であるデュークを介してでないと難しいだろう。よって、メリルは一人でもできること――夜のうちにクローディアたちの泊まる宿を見つけるべく行動を起こすことにした。
デュークには書置きと簡単な食事を枕元に置いて、そっと部屋を出る。
「あの、貴族の令嬢とその従者の二人連れだと思うのですが、この宿にお泊りになっていませんか? 当家のお嬢様なのです。年は十八歳。色白で、栗色の髪に翡翠の瞳。切れ長の瞳で少しきつい印象のあるとても美しいお嬢様なんですが」
お嬢様を探す使用人といった風情で、事前にデュークに聞いた特徴を元に宿に聞き込みにあたる。
「うちは安宿だからねえ。そんなお嬢様なんて泊まりゃしないよ」
「訳アリはごめんだね」
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「泊ってけよ。食堂にいれば、出くわすかもしれないぜ」
何件か宿をあたったが、そもそも、偽名を使っているかもしれない上に、顔も知らないメリルが、探せるわけがなかった。
(はあぁ。明日、デュークと一緒に街の出口で張るしかないか……)
五件目の宿に断られて、そろそろ諦めて自分の泊る宿に戻ろうとしていた時だった。
「人探しをしているのは、あなたですね?」
耳元に、淡々とした温度を感じさせない男の声が響き、メリルの全身が総毛立つ。
そして、首に強いショックを感じて、メリルの意識は刈り取られた。
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パシャリ。
顔にかかった水の冷たい感触で、メリルの意識はゆっくりと暗闇から覚醒した。
薄暗い、明かりを落とした部屋で、土埃で汚れた板張りの床が目に入る。
どうやら自分は床に転がっているらしい。
頬に張り付く濡れた髪が気持ち悪い。
手でぬぐおうとして、腕が動かないことに気が付いた。腕は後ろ手で縛られていた。
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(でも、即座に殺されなかったということは、向こうも私と話したいってこと)
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「いい加減目を覚ましなさいな」
魅惑的、といってもいい抑揚の美しい声だ。
メリルは、床から、声のするほうへと顔をあげた。
「あなたが、クローディア嬢なの?」
「ふうん、私を探しているくせに、私の顔は知らないのね」
彼女は椅子に座って、優雅に足を組みながらメリルを見下ろしている。つややかな栗色の髪に翡翠色の猫のように気の強そうな瞳が美しい、華やかな美女だった。旅装なのに、その凛とした美しさは隠しきれていない。背後に控えているのが駆け落ちした侍従とやらだろうか。きれいな顔立ちの二十代半ばの男は、なんの感情もない瞳でメリルを見下ろしていた。
「あなた、誰? なぜ私を追っていたの?」
ふと、メリルはその言葉に引っかかりを覚えた。なぜも何もないのではなかろうか? 普通駆け落ちをしたら、家族から追手がかかるものだろう。それなのに、彼女はなぜ「なぜ」と聞くのだろう。
尊大な態度で、余裕を見せようとしているようだが、クローディアの見定めるような視線に、メリルはわずかに怯えの色を見て取った。
(もしかして――)
「聖女から命を狙われてるのね」
クローディアの瞳がわずかに揺れた。
(当たりだ)
きっとこれはただの駆け落ちではない。聖女を恐れたからこそ彼女は逃げたのだ。
そして、命を狙われるということは、彼女が何か、「重要な情報を知っている」証拠だ。
クローディアは、自分の動揺をかくすように尊大にふるまい続ける。
「何の事か分からないわ。でも、そんなことを言うってことは、あの女の手の者じゃないのね。あなたは、誰の命令で動いているのかしら?――言っておくけど、誰に何を言われても私は戻らないわよ」
「……私は、私達は、王国の将来のために動いているの。聖女が何か特殊な力を振るって王宮の人々を操っていることは分かっているわ。あなたを止めに来たのではないの。あなたの話が聞きたいだけよ」
メリルは、縛られたままできる限り顔を上げて、言葉に力を込めた。
ここで第三王子の名前を出していいのだろうか?
メリルが言っても信じてもらえないかもしれない。
仮に信じてもらえたとしてどうだろう。信用は増すかもしれない。けれど、秘密裏に動いているデュークの存在がばれて危険にさらすかもしれない。
駆け引きや交渉事を行ったことのないメリルには判断がつかない。
だから、せめて、彼女から重要な情報を聞き出したかった。
「――あの日、何があったの? あなたはなぜ、聖女の力の影響を受けていないの?」
クローディアは、その話を聞いた途端、みるみる顔を青ざめさせた。
「知らないわよ! 私は何も知らないわ!」
「ひょっとして脅されているの? 安心して。私達には、あなたを守る力があるわ。私達は、……カハッ」
途端におなかをひどく蹴りつけられて、メリルは呼吸を止めた。
息をすることもままならず、目に涙がにじむ。
視界の端にメリルを蹴りつけた従者の足が見えた。
「お嬢様、この者の甘言に惑わされてはいけません。粗雑な聞き込みに、私に簡単に捕らえられるほどの能力の低さからも、この者の所属する組織のレベルもたかが知れています。それに、このような状況なのにこの女の仲間は誰も助けに来ません。きっと捨て駒なのでしょう。そのような者の言う事など気に掛ける価値もありません」
「そう、そうよね。お父様もお母様も弟も……あ、あの方も、みんな、あの女の言いなりになってしまったわ。あの女の恐ろしさを知らないからみんな私にそんなこと言えるのよ」
「そうです。彼女の力は非常に大きい。私とお嬢様、たった二人だけだから目立たずここまで来られたのです」
「分かっているわ――私を守ってくれる人はもうイアン以外に誰もいないのだもの」
呼吸のできないまま、メリルは、顔だけをクローディアの方に向ける。
イアンという侍従の胸に縋りつく必死なクローディアの表情とは裏腹に、侍従の瞳は酷薄ともいえる冷たさを持ってメリルを見下ろしていた。
「お嬢様、この者は、私が排除いたします」
「殺すの? こんな間抜けな子をわざわざ殺す必要ある?」
「お嬢様は優しすぎます。聖女様のお力をご存じでしょう。この者を通してお嬢様が逃げたことを知られる可能性もあります」
「でも、」
「お嬢さま。もう、お嬢様の味方は私しかいないのです。お嬢様の身の安全のためには、わずかな禍根すらも残せません。私が、信じられませんか? 信じていただけないのであれば、この先お嬢様を連れて逃げ切ることが難しくなってしまいます」
「そんなことない! 信じるわ、信じる! 私にはもうイアンしかいないんだもの」
「……っ、まっ、クロ……。デュー……が、」
「お嬢様、外に出て、隣の小屋の影に隠れていてください。始末をつけたらすぐに参ります」
「分かったわ」
そういうとクローディアは部屋から出ていった。
メリルは、従者を睨みつけた。
従者は、酷薄な表情を張り付けたまま、メリルの腕を部屋の中央にある柱に縛り付ける。
「これから火事を起こします。騒ぎを起こした方が私達がここを去るのに都合がいいですから。――あの方のために死ねることを光栄に思いなさい」
「――あの方って、『マリア』?」
従者は途端にメリルを睨みつけ、再び蹴りつける。メリルの意識が遠のく。
「お嬢様も、あの方の聖なる行いのために命を捧げるべきなのです。きっと分かってくださるでしょう――お待ちいただけますか、私はもうすぐ使命を果たし、あなたの元に参ります」
従者は、天に向かい、恍惚とした表情でそう告げると、メリルを一瞥すらせずに部屋を出ていった。
やがて、外から、油の臭いと、煙のくすぶる臭いがしてきた。
◇◇◇◇◇◇
王宮の中庭で、マリアはいつものようにお茶を飲んでいた。
いつもと違う時間に、今日は、魔法使いだけを呼び寄せる。
彼女は魔法使いに、王子たちには知られたくないこまごまとしたお願いをよくするのだ。
「ねえロドニー。あの女どうなった? 従者の、なんだっけ、あの人に念入りにお願いしたのに、なかなか報告が来ないからちょっと気になっちゃったの。あの従者君、抵抗がすごかったからちゃんとマリアのお願い聞いてくれるか心配になっちゃったのよねえ。ちゃんとお仕事できてるのかマリア、心配だなあ」
「監視の厳しかった公爵邸より無事、あの方を連れ出せたようです。お望みの結果になるのはもうすぐかと」
「そう? 楽しみー」
「しかし、マリア様の御心を煩わせた不届きな輩ですので、仕事をこなした後は少し罰が必要ですね」
「うんうん、そうしちゃって。ロドニーのそういう気が利くところ、マリア、好きよ」
「マリア様……」
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