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7 ネイビーブルー・カタストロフィ(その4)
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静刻と別れた階段の踊り場で、ギィアは結晶化したファージに組み伏せられていた。
動かないファージの下でギィアは数秒前のことを反芻する。
階段を降りて体育館へと戻ったギィアの正面で、ファージが覆い被さろうと上体を持ち上げる。
ギィアはすでにファスナーから伸ばしていたホースのノズルを向け、すかさず凝結ガスを吹き付ける。
しかし、残圧が足りないのかガスに勢いがない、吹き出る量が少ない。
ギィアは階段を一段ずつ後ろ向きに上がりながらガスを浴びせ続ける。
踊り場に達したのと同時にファージが力尽きる、同時にガスの残量がゼロになる。
“相打ち”だった。
凝結ガスにより固まったファージはギィアを仰向けに押し倒すような形で覆い被さる。
まるで掛け布団のように覆い被さったファージの下で、首だけを出したギィアは思う。
あと数分もすればガスの効果は消えてファージは自由の身になる。
それと同時に自分は取り込まれて異空間へ隔離されるのだろう。
しかし――。
その数分で十分だ。
その数分で円盤型ロボが放送設備の操作方法を解析し、新たな音源を校内へ流す。
その数分で歴史が変わる。
歴史が変わればファージも消える。
そして――。
ギィアは意識がもうろうとしてきていることに気付く。
それは自身の存在確率が急速にゼロに向かっていることを示している。
最初の音源で失敗した時のことを思い出す。
「ちゃんとやったよー。わかんない。うん。え? 確認の電話はいらないって……どーゆーこと?」
〈〈ネイビーブルー・カタストロフィの回避に成功すればギィアの存在自体が消えるからだよ。ネイビーブルー・カタストロフィが発生しなかった時間軸には、ネイビーブルー・カタストロフィを回避するために生み出されたギィアは存在しないのだから〉〉
「あ、そーか。……そーだよね。うん、わかった。じゃね」
そんなことを思い出している間にも、無意識にサーチしたファージのパラメータが数値を上げていくのを感じる。
それはファージがこの期に及んでさらに成長しようとしていることを意味している。
ギィアの存在自体が消えようとしているのと対照的に、ファージの凶悪度は増していく。
このいずれもが静刻の行動が歴史改変に直結していることを意味している。
間もなく、静刻の手によって第二放送室へ持ち込まれた音源が校内に流れ、ブルマ否定派女子はその根拠を失う。
そして、その結果、ネイビーブルー・カタストロフィは回避される。
すでにファージの下敷きになっているギィアの身体に感覚はない。
消えつつある意識の中でギィアは思う。
これで目的を果たせるのです。
これ以上の栄誉はないのです。
後悔なんてないのです。
ありがとうなのです。
静刻。
静刻。
静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻。
薄れつつある意識の中でギィアは――
「ひとつ訊いていいか」
――静刻の声を聞いた。
動かないファージの下でギィアは数秒前のことを反芻する。
階段を降りて体育館へと戻ったギィアの正面で、ファージが覆い被さろうと上体を持ち上げる。
ギィアはすでにファスナーから伸ばしていたホースのノズルを向け、すかさず凝結ガスを吹き付ける。
しかし、残圧が足りないのかガスに勢いがない、吹き出る量が少ない。
ギィアは階段を一段ずつ後ろ向きに上がりながらガスを浴びせ続ける。
踊り場に達したのと同時にファージが力尽きる、同時にガスの残量がゼロになる。
“相打ち”だった。
凝結ガスにより固まったファージはギィアを仰向けに押し倒すような形で覆い被さる。
まるで掛け布団のように覆い被さったファージの下で、首だけを出したギィアは思う。
あと数分もすればガスの効果は消えてファージは自由の身になる。
それと同時に自分は取り込まれて異空間へ隔離されるのだろう。
しかし――。
その数分で十分だ。
その数分で円盤型ロボが放送設備の操作方法を解析し、新たな音源を校内へ流す。
その数分で歴史が変わる。
歴史が変わればファージも消える。
そして――。
ギィアは意識がもうろうとしてきていることに気付く。
それは自身の存在確率が急速にゼロに向かっていることを示している。
最初の音源で失敗した時のことを思い出す。
「ちゃんとやったよー。わかんない。うん。え? 確認の電話はいらないって……どーゆーこと?」
〈〈ネイビーブルー・カタストロフィの回避に成功すればギィアの存在自体が消えるからだよ。ネイビーブルー・カタストロフィが発生しなかった時間軸には、ネイビーブルー・カタストロフィを回避するために生み出されたギィアは存在しないのだから〉〉
「あ、そーか。……そーだよね。うん、わかった。じゃね」
そんなことを思い出している間にも、無意識にサーチしたファージのパラメータが数値を上げていくのを感じる。
それはファージがこの期に及んでさらに成長しようとしていることを意味している。
ギィアの存在自体が消えようとしているのと対照的に、ファージの凶悪度は増していく。
このいずれもが静刻の行動が歴史改変に直結していることを意味している。
間もなく、静刻の手によって第二放送室へ持ち込まれた音源が校内に流れ、ブルマ否定派女子はその根拠を失う。
そして、その結果、ネイビーブルー・カタストロフィは回避される。
すでにファージの下敷きになっているギィアの身体に感覚はない。
消えつつある意識の中でギィアは思う。
これで目的を果たせるのです。
これ以上の栄誉はないのです。
後悔なんてないのです。
ありがとうなのです。
静刻。
静刻。
静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻静刻。
薄れつつある意識の中でギィアは――
「ひとつ訊いていいか」
――静刻の声を聞いた。
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