新米女神の運命の赤い糸

りんご飴

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女神の恋ばな

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「それで逃げ出して来たってわけね~~」

 艶やかなプルンとした唇からフゥと息を吐く。
 燃えるような鮮やかな赤毛の美女は、リアのミルクティー色の髪をソッと撫でた。

「いつまでウジウジしてるの。大地の神らしくないわねぇ」

「愛の姉上。リアはまだ生まれたばかりだ」

「ん~~だってね、ファタちゃん。先代の大地の神なんて一瞬で伴侶が決まったじゃない」

 降臨したその日に街ですれ違った娘を選んだ、先代の大地の神。確か宿屋の娘だったなと、愛の女神は呟いた。
 出会った瞬間ビビっと来て、「私の子を生んでくれ」「はい、喜んで」と、実にスムーズに相手が決まったはず。代々、大地の神の子作りは、難航することがなかったのだ。
 リアのケースは珍しい。

「そうねぇ、リアちゃんの場合、愛の力の影響を受けちゃったことも原因かもしれないわ。愛に悩みは付き物だもの。ファタちゃんも分かるでしょう?」

「……ふむ。
 デシルの奴が引っ掻き回したのも問題だな。運命の糸が絡まって厄介だ」

 ファタが舌打ちする。

 運命が見えるファタの目には、複雑に絡まって団子状になった運命が見えた。最初は確かにあらゆる方向に真っ直ぐ伸びていたのに。
 リアの伴侶選びはなかなか困難になった物だと、ため息をついた。

「リアちゃん、顔をあげて。ああ、暗い顔しちゃって、もう。可愛い顔が台無しじゃない」

「辛いなら、別の道を行けばよい。ぐずぐず引きこもるより、ずっと簡単だろう」

 団子状に絡まった運命の脇に伸びる、一本の運命。これを選べば、最も簡単に解決出来る。
 煩わしい関係をスッパリ切り捨て、新たな運命を進めばいい。

「でも、リアちゃんはもう決めちゃったんでしょ?」

 複雑に絡まった運命を選ぶことを。
 愛を知る二人には分かる。リアは楽な道を選ばない。

 本来なら輝くような新緑の瞳が、まだ陰を落としている。
 愛の女神は、リアの頬を両手でつまんで引き延ばした。痛いですと抗議するリアの声は、笑えるほど弱々しかった。

「何が不安? お姉さん達に話してごらんなさい?」

 愛の女神の微笑みは慈愛に満ちていて、妹を心配する姉の顔だ。

「ほら、私ってば愛のスペシャリストだし。ファタちゃんは愛を知る先輩だしね」 

 パチリとウインクした瞬間、ピンク色のハートが飛んだ。

 ようやくリアは軽い笑みを浮かべる。

「…………赤い糸が、切れてしまったんです」

 一度結び付いて、切れて、リアが望んでも、もう糸は彼に反応しない。

「私の気持ちと、彼の気持ちが同じ物ではないからかもしれません。
 彼は愛してると言いながら私に触れないですし、私ももしかしたら子供をつくる為に彼を利用しようとしているのかも……そう思うと……なんだか苦しくて」

 愛にもいろいろある。
 性欲を伴う情欲的な愛。
 信頼で結ばれる深い友愛。
 無条件で愛さずにいられない無償の愛。
 長い年月をかけて育った永続的な愛。
 自分大好き自己愛。
 安心感や支え合う気持ちが強い家族愛。

 だけどそれは人間だけの物。
 神には唯一、無償の愛しか存在しない。

「あらまぁ、リアちゃんは難しく考えすぎよ。
 確かに愛は複雑だけど、結局はあなたが愛だと感じたら愛だし、違うと思ったら愛じゃないのよ」

「ふむ。赤い糸は可能性の一つでしかない。己の行動次第で運命は変化する」

 途絶えそうな血筋を繋ぎ止めようとする、国王のように。リアとの運命をたどり続けた皇太子のように。

「リアちゃん。人間の間ではこういう言葉があるみたいよ」

 愛の女神は魅惑的に微笑む。

「押して駄目なら押し続けろーーですって」
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