妖精を舐めてはいけません

りんご飴

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妖精欠乏症

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「ルリナ、ルリナ」

 まだ寝ているルリナの頬を撫でる。可愛い唇を啄みながら、耳元で名前を呼んだ。

「……ん」

 鼻にかかった声を出して、薄紫色の瞳がレグルスを写した。

「レ、レグルス!」

 慌てて飛び起きたルリナは、オロオロと視線を動かして落ち着かない。
 羽をしゃぶられて絶頂を味わったことが恥ずかしいのだろうか。
 抱きしめて背中を撫でる。

 ん?

 ふと一瞬、ルリナの香りとは別の香りがした気がした。ルリナの髪に鼻をつけて、胸一杯に吸い込むと、ルリナの花の香りで満たされる。

 気のせいか……。

「レグルス、どこか行ってた?」

「うん。仕事に呼ばれちゃって。一人にしてごめんね。私もルリナと離れるなんてしたくなかったよ」

 ルリナは腕の中で、より密着するようにすり寄ってきた。
 胸に顔を擦り付けて何度も顔を左右に振る。子供のようで可愛いが、鼻が擦れて赤くならないか心配だ。

「仕事は終わったから家に帰るんだけど……一度、花の中に戻る? 花ごと家まで運ぶから。ね」

「……うん」

 レグルスの腕の中から出て、一瞬だけ光った瞬間。小さな妖精族の姿に戻って、ふらふらと薄紫色の花に向かった。

「え? ルリナ、今は魔力いっぱいだよね?」

「うん。いっぱい」

「妖精の姿にもなれるの?」

 ルリナはきょとんとして、自分の姿をみた。

「あ、本当だ」

 無意識に妖精の姿になっていた。
 人間サイズにも変われるのか試してみると、一瞬の光と共に、人間サイズのルリナに戻った。

「魔力がたっぷりなら、自由に変われるみたい」

 言うと、薄紫色の花に手をのばす。

「待って、ルリナ」

 引き留めようと名を呼ぶが、間に合わなかった。

 ルリナの姿は、花の中に消えてしまった。




 レグルスの屋敷に着いて、自室の机に鉢植えを置く。昨夜も同じように、自室で蕾を眺めて過ごした。

「ルリナ、出ておいで」

 呼び掛けても反応はない。

 蕾をそっと手のひらで包み込む。指先で撫でながら、呼び掛け続けたが、ルリナは出てくることはなかった。



 次の日の朝も、仕事の際も、ルリナの花は蕾のままだった。
 何度も話しかけ、蕾にキスをし、ルリナを思って蕾を舐めながら自慰をした。
 ルリナを思うと、どうしようもなく下半身が疼く。
 初心で、素直で、可愛いルリナ。
 可愛い姿を思い浮かべながら、硬くなったペニスを握る。
 
「お願いだから、出ておいで」

 何かルリナを怒らせることをしただろうか。
 羽をしゃぶったことか? それとも、意識がないルリナの恥部を舐めまわしたことか?

 ……勝手に契約したから?

「怒っているなら、何度でも謝るよ。だからお願い。ルリナの顔を見せて」



 次の日も同じ。
 花は固い蕾のまま。

 いつルリナが出て来ても分かるように、片時も花から離れない。    
 仕事中も入浴中も食事中もトイレの中でも。
 仕事中はピクニックバスケットの中に花を入れて。



「おい、レグルス。お前最近おかしいよな」

 最近、食堂でオスカーとかち合う。以前から時々、同じ時間になることはあったが、3日連続は面倒だ。

「別に何もかわりない」

「そうだな。3日前がおかしかったんだ。あの日のお前はさ、気持ち悪いくらいニヤニヤしてただろ。次の日は元に戻ってたけどな。
 それにそれ……」

 レグルスの膝の上に置かれてい
るピクニックバスケットを指さす。
 何が入っているのか謎だが、突然そんなものを持ち歩くようになった姿は気持ち悪い。

「……女でも紹介しようか?」

「いらない」

 間髪いれずに返ってきた答えに、オスカーは心の中で「そりゃそうだろうな」と相槌をうつ。
 恋人がいるのに他の女に釣られる訳がないか。

 思いだすのは薄紫色の髪をした可愛らしい少女だ。
 キスでとろとろになり、胸の突起を弄ると気持ちいいと鳴き、秘部の柔らかさと愛液の甘さ……思い出すだけで下半身が反応してしまう。

「女にでもフラれたか?」

 冗談半分で言った言葉に、レグルスは固まった。
 紅茶を混ぜていたスプーンを落とすなんて……こんなレグルスは見たことがない。

「マジかよ」

 レグルスの動揺っぷりに、冗談で言った言葉が真実に近いことを知った。

 ルリナがレグルスと別れたのなら好都合だ。
 あの日からずっとオスカーの頭から離れない少女。
 レグルスには悪いが、別れたのなら自分がルリナの恋人になっても問題ないだろう。
 まずは優しく抱きしめて、慰めて、キスをして……。

 そんなことを考えていると、レグルスはふらふらと立ち上がって食堂を出て行った。

「あれは重症だな……」

 レグルス不調の原因が自分かもしれない。しかしルリナを手に入れるには好都合だ。

 ルリナがどこにいるか、探さないといけない。
 オスカーは久しぶりに本気で女を思う自分に、ニヤリと笑った。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※

レグルスさんはポンコツになってしまった……。


 
 
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