幼馴染みが記憶トレーニングと称して、いやらしく俺に触れてくるんだが。

ことりさん

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目指せ大会優勝!

どうしてこうなった?(要注意!性描写あり)

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 合宿はあっという間に過ぎ、気付けば明日で最終日となった。
 恵吾は、当日の大会同様の出題形式を想定した林の特別メニューをこれまでかというくらいにたたき込まれた。
 頭はもちろん、体も使う。予選は身体機能も重要なのだ。
 朝はランニング、ビーチフラッグスで体力と瞬発力を鍛える。そして、午後からはチーム対抗で暗記練習を行う。それに加えて恵吾には特別メニューも用意されており、超ハードな毎日だった。

 大会に向けて、できることはやったつもりだ。
 合宿最後の夜は、皆で外でバーベキューをした後、花火をして久しぶりにはしゃいだ。


 恵吾と佐野は、互いに当たり障りのない会話しかしなかった。
 佐野の態度はなんとなくいつもより素っ気ない。恵吾は勝手なもので、そうされるとそれはそれで寂しい気持ちになってしまう。

(これでいいんだ、このままで……)



 バーベキューも花火も楽しかった。四人と林が集まると、余計なことを考えなくてすむため気楽だった。
 林が飲んでいた日本酒を、三ノ宮が誤って飲んでしまい、暴れ出した三ノ宮を止めるのに一時は大変だったが、東條が甲斐甲斐しく面倒を見ていた。
 三ノ宮が眠気で大人しくなった頃には花火も終わり、恵吾は花火の後のテンションのまま、後片付けを終え、部屋に帰る途中だった。

「あ、今、面白いことを思い付いちゃった~。潤、先に部屋に戻っててよ」
「なんで? ……恵吾、今日はもういいだろ」
「いいからいいから」

 佐野の制止を振り切り、恵吾はまだ戻ってきていない三ノ宮と東條の部屋に忍び込んだ。

「何する気?」
 佐野は呆れたように言う。
「三ノ宮さ、この歳でさ、お化けが恐いんだってさ、だからちょっと脅かしてやろうと思って」
「ガキじゃないんだから」
「散々暴れた腹いせだ。潤こそ、もう部屋戻れよ」
「……そうするよ」
「あ、待て、やべえ、もう戻ってきちまった、お前も、こっち」
 そう言って恵吾は咄嗟にクローゼットの中に隠れた。もちろん、佐野のことも道連れにしてだ。

(なんで俺まで?)
(ご、ごめん! つい勢いでお前まで引っ張ってしまった。でももう引き返せん)
(はぁ……恵吾、もしかして、ちょっと酔っぱらってんじゃない?)

(……バレた? さっき、翔ちゃんから少しだけ、お酒飲ませてもらったんだ、テヘ)
(テヘ、じゃないよ)
(しっ、タイミング見て、飛び出して脅かしてやろう)
(悪趣味……)


 二人は、クローゼットで息を潜めていた。
 部屋に入って来た三ノ宮はすっかり大人しくなっているが、まだ完全に酔いが醒めた様子ではなく、千鳥足でふらふらしている。
 東條は自分よりも大きなこの酔っ払いを床に落とさないように支えながらようやくベッドの上に降ろした。

「正紀君……ごめんにぇ」
「にぇってなんだよ、にぇって!」
「僕、何か、変な気分なんだ」
「それは林の酒を間違って飲んでそうなったんだろ」
「体の、自由が、利かないよお……」

 いつも頼りない三ノ宮は、いつも以上に不安要素で一杯だ。

「草太……頼むからそんな姿、見せるの、俺のいるときだけにしてくれよ」
「へっ……それってどういう意味ですか?」
「どういう意味って……」
「正紀君、僕がさ、落語愛好会に正紀君を無理に誘ってさ、正紀君、嫌じゃない?」
「は?」
「だって、今時、高校生が落語ってさ、なんかね……、僕ら、皆にキモイって影で言われてるんだよ」
「別に……それに、俺ら今時の高校生って感じじゃねえし」
「落語、楽しい?」
「楽しいよ」
「本当? 良かった~」
「草太、もう寝ろよ」
「……正紀君」
「何?」
「僕ね、正紀君のことが好きなんだ。正紀君もさ……僕の自惚れなんかじゃなかったら、僕のこと、少しは好いてくれていたりする?」


(え、ええええ!!!? いきなりなんだこの展開はっ!)

 まずい展開になった。まさか三ノ宮が東條に告白するなんて思ってもいない展開に、恵吾は完全に飛び出すタイミングを失った。

(どうすんの? これじゃ出るに出られないぞ)
(しっ、とにかくバレるのが一番マズイ。ここはひとまずやり過ごそう!)
(はあ……)
(二人が寝たらさ……こっそり戻ればいいって)
(知らないからな)

 佐野は呆れて溜息を付いた。
 外の二人は、まさかクローゼットに人が隠れているとはつゆ知らず、真剣なモードに突入した。


「……なんで草太はさ、そういう大事なことを酔った勢いで言うんだよ」
「え、だって、こういうときじゃないと、僕は一生言えない。僕、臆病でヘタレだから……」
「だからって、こんな状態のお前に、俺の一世一代の告白をして、もし明日、目が覚めて覚えがないとか言われたら、俺は立ち直れないぞ」
「え……、それってどういう……一世一代の告白って? 言ってほしい」
「言わないよ、だってお前、酔っ払ってるじゃん」
「もう、酔い、醒めたよ……だから、言ってよ、お願い」
「草太、お前、ずるいな、どこでそんな手、覚えたんだよ」
「え、どんな手?」
「……頼むから、俺を惑わすのは止めてくれ」
「……惑わしちゃ、だめ?」
「は?」
「僕、正紀君のいろんな所、見たり触ったりしたいし、僕にもそうやってしてほしいんだ」
「草太……」
「キモイよね」
「……キモくねえよ、俺だって」
「本当?」


 クローゼットの隙間から僅かに見える二人の姿。

(なんか、ヤバイ雰囲気じゃねえ?)
(全くだよ、どうすんだよ、恵吾のせいだぞ)
(つったって、もう絶対に出らんないじゃん)
(そうだね、お前が言ったように二人が寝るまで、待つしかないね。事が終わった後にさ、)
(事がって……)


「ねえ、正紀君、キスしようよ」
「……いいのか」
「うん、僕、したいんだ」

 酔った後の三ノ宮は積極的で別人のように淫らだ。そして、二人は静かになった。ときどき聞こえるのは、二人の塞がった口から洩れる吐息と、艶めかしい喘ぎ声だ。

「んっ……正紀君、なんでこんなにキス、上手なの? 童貞なんじゃないの?」
「お前、そういうこと言うなよな、初めてでも、知識はそれなりにある……」
「正紀君、お願い、下、触らせて」
「俺も、お前の、触ってみたい」
 もう、クローゼットの隙間から覗き見るような悪趣味なことはできない。恵吾と佐野は二人の秘密の情事をこんな暗闇で聞いて過ごすこととなった……。

「……う、うあ、はあ、気持ちいい」
「うん、やべえな、草太、お前、シゴキが早過ぎ、もう、気持ちいい」

(……気持ち良さそうだね)
(……佐野大先生……本当にすいませんっした)
(はぁ……)

 こんなところに隠れなければ良かった。逃げ道がないのだ。しかも一人ならまだしも、一緒にいるのは佐野だ。

「もう、いいよ」
(おまっ、声出すなよ、聞こえてばれたらどうすんだよ! 声を、もうちょっと落とせ)
(聞こえないよ、だってもうあの二人、お互いに夢中だもの)
 確かに。
 二人は互いのをしごき合い、もういつ果ててもおかしくない感じだ。
 こちらはというと、狭い暗闇で動きを封じられた滑稽な二人がいる。
 恵吾の顔のすぐそこに佐野の綺麗な顔があり、目を凝らして見ると彼はうんざりするように頭を掻いている。

(もう少しで終わるかなあ)
(終わるかも知れないけど、もう一回戦とか、もしかしたら本番とか……長引いたらどうしよう)
(どうするも何も、俺らは待つしかないよね)
(はい……)


「あああん、正紀君、好きだよぉ」
「はぁはぁ、俺も……」


 男同士の声なのに、十分にエロイ雰囲気が伝わってくる。男相手に勃つわけがないと思いながらも、雰囲気だけで多少なりとも興奮してしまう。
 そしてこれは恵吾の想像だが、恵吾だけではなくおそらく佐野も多少なりとも興奮していた。意図的ではないにしても覗きというシチュエーションのせいだろうか……。

 クローゼットの奥行きがないから、自然と抱き抱えるようにして後ろに付く佐野の下半身を、腰の辺りで感じながら、必要以上に恵吾は意識してしまう。一度意識してしまったら最後だ。全身が熱くなり、自然と息が荒くなる。
 そんな些細な動揺を、佐野は察知したらしい。

 佐野は、恵吾の首筋にそっと唇を付け、そのまま囁くように言った。
(思えば、今って俺にとっては絶好のチャンスだよね)
(な、お前、何考えてんだ!)
(ここなら、恵吾だって迂闊に抵抗できないでしょ。せっかくできたあの二人からの信用を失ったら、大会だって出られないし、林先生の顔にも泥を塗っちゃうしね)
(お、おい)
(だって、恵吾、俺のことは好きじゃなくても、俺に触られることは嫌いじゃないんでしょ)
(お、お前っ…)
(分かってんだ、恵吾の性格上、俺が今、恵吾に何しても、大声出したりしないだろう、きっとただじっと黙って堪えるんだろう)

 読まれている。恵吾は二人に好意を持ち始めていて、その関係を壊したくなかった。ここでバレたら絶対に口もきいてくれなくなるだろう。それだけは絶対に避けたい。

(俺の気持ちを、なかったことにしようとした罰だよ)
(う、……ふあ、いやだ)
(嫌じゃ、ないんでしょ。いいよ、恵吾はさ、俺に無理やり襲われただけだからさ、恵吾は何も悪くない。例え気持ち良くなって感じてしまったって不可抗力だ。恵吾は被害者でいればいい)
(潤……)
(あの二人みたいに、気持ち良くするだけだよ、黙ってなよ)
(佐野、おい、佐野ってば)
(俺、恵吾のこと好きなんだよ、ずっとずっと、どうしようもないくらい)
(そんなこと、言うな)
(どうにかしてよ、もう苦しいんだ)
(そうやってお前は、無遠慮に、俺を困らせるんだ……お前があの日、あんなことしなければ、俺はお前とずっと、あの頃のままでいられたのに)
(恵吾)
(俺だったら、好きな相手にこんなこと、こんな場所で……しない)
(恵吾が、いつまでも自分の気持ち分からないって駄々を捏ねるなら、俺が代わりに言ってあげるよ。俺の予想、っていうか、ほとんど願望かもしれないけど、たぶん、恵吾も、好きだよ)
(か、勝手なこと、言うな)
(恵吾が分からないなら、気付くまでやめないよ)
 佐野は、開き直ったように、もう遠慮しなかった。その柔らかな舌で長谷部の耳朶をレロレロと舐め、首筋から鎖骨らへんまで一気に舐め下ろす。
 恵吾は堪えきれず漏れてしまう声を必死に留めようと自身の口を塞いだ。

(本当に嫌なら、このクローゼット蹴破って、出ていきなよ。二人には、俺に無理矢理ここに押し込められたって言えばいい。そしたらもう、本当に金輪際、恵吾には触らないよ)
(そんなこと……)


 そのときだった。 

「正紀君、僕、もう本当に駄目だ! あ、ああ、イク!」
「俺も!」

 二人がイッたとき、クローゼットの中の恵吾も限界に来ていた。激しい吐息が、外の二人のものなのか、自分の内から響くものなのか、判断が付かない。
(あ、あ、もう、許して、本当に、ばれちゃうよお……潤、頼むっ!)
 恵吾の囁きを掻き消すかのように、佐野はその唇を塞ぐ。右手は執拗に長谷部の乳首を捏ねて、左手で恵吾のものを激しく上下させて捉えている。それが堪らなく気持ち良い。痙攣のような振動のせいでズボンが膝まで落ちてしまった。


(二人はもうイッたみたいだよ、静かになったし、もう寝たんじゃないかな)
(もう……分からないっ…)
(恵吾のここ、もう破裂しそうになってるよ、苦しいでしょ。本当にここでやめていい? やめてほしいなら、五秒以内に言って、ねえ、恵吾)

(……)


(五秒、経ったよ)

 佐野自身ももう下着の中に納めておくことができなくなって、恵吾の双丘の下に繋がる細い腿の間に、彼のものを挟めて擦らせた。
 恵吾は、佐野のあちこちから伝わる振動を身体の敏感な部分で受け取りながら、相手が佐野で自分が女というビジョンを想像してしまっていることを自覚してしまった。

(や、やめないで……潤……)
 恵吾は、とうとう言ってしまった。
(恵吾、俺の掌に、出してよ)
(う、うあ…もう、イクッ!!)
(俺も……)
 
 二人はクローゼットの中で静かに果てた。

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