俺に取り憑いた幽霊が同級生を求めて困る

ことりさん

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 朝、目が覚めて身体を起こそうとしたら倦怠感に襲われて立てなかった。
 それは暁生が今までに感じたことのない不調だった。

「う……うう……」
 そう唸って、全身に力を込め、伝い、這うように洗面所へ行った。
 鏡で見た自分の顔は、鈍感な暁生にも分かる、くっきりとした隈が刻まれている。顔も、不健康そうにこけたような気がする。久々に体重を計ったら驚くことにこの数日で数キロ痩せていた。

 その状態でリビングまで行くと、母が驚いたようにやって来た。

「ちょっと、あんた、どうしたの?」
「母ちゃん、今日は何だか身体の調子が……仮病ぢゃないよ」
「もう、とにかく寝てなさい」

 そのまま寝室まで戻された。
 暁生はその日学校を休んだ。

 ベッドの中で、暁生はすぐに弥彦へメールを打った。




~~~~~~~

――帰り、俺の家に寄ってほしい。



~~~~~~~


 もう本当に、時間がないのかもしれない。
 自分はこのまま衰弱して死んでしまうのだろうか。こんなに弱ってしまった今、弥彦の顔しか浮かんでこない。

 返事はすぐに来た。



~~~~~~~

――帰りに寄るから、住所教えて



~~~~~~~
 


 そして夕方、弥彦がやってきた。
 母が弥彦を暁生の部屋に通し、暁生の寝ているベッドのすぐ横に腰掛けを用意して、弥彦に座るよう促した。弥彦は、すいません、と会釈して座った。

「ゆっくりしていってくださいね、暁生、母さんちょっとばあちゃんの家に行って、買い物して帰るから二時間くらい空けるけど、ちゃんと寝ているのよ、明日もこの状態だったら病院に行くからね」

 母はそう言って弥彦に会釈すると出ていった。部屋のドアがパタンと閉まり切ったとき、弥彦は口を開いた。


「ようよう、ヤバイな」
「……俺、お前に何度も何度も、キスしたくなるんだ」
「大沢に、乗っ取られかけているんだよ」
「だからそれは違うって言ってる……でも、身体は本当にヤバイと思うよ。どうしたらいいんだよ、もう」

「親父に相談したんだ、今のあんたの状態はさ、十日間くらいあんたを拘束して除霊の儀式をしないと駄目だって言っていた。それでも、何か持っていかれるかもしれない」
「”持っていかれる”って、どういうこと?」
「後遺症っていうの――心身に影響が残るかもってこと」
「なんだよ……それ……」

 朦朧とする意識の中で、確実の自分の生命が衰えていくのが分かる。昨日まで笑っていたのに、もう笑えない。

「そうなるとあんたのご両親にも、上手く説明しないといけないな」
「なあ」
 弥彦はまだ話を続けようとしていたが、暁生はそんな弥彦の手首を掴み、遮った。

「昨日言ってたことなんだけど」
「……ああ……あれな」
「俺の中の大沢は、俺の体で、お前のことを抱けばすんなり出るって言ったんだろう」
「……」
「その方法なら、まだ間に合うんだよな」
「……土岐、」
「これは俺の大真面目な言葉だ、マジなの。マジで、俺は死なないよ。だからさ、俺の気持ちをいい加減認めてほしいんだ」

 暁生の告白に弥彦はただコクンと頷いた。ひょうきんなものだが、身体に力が漲ってきたような気がした。
「はは、やったぜ……でも本当に、いいのか?」
「さっさと……そうしてくれよ……」





 暁生は弥彦の細い手首を引っ張り、ベッドに座らせる。そして後ろから被さるように弥彦を抱きしめ、そっと弥彦の額に流れる黒髪に触れた。
 シャンプーの匂いがする。弥彦は少し、びっくりしたように後ろに引いた。けれども、暁生はそれを許さない。もう片方の手で弥彦の細い首元を捉え、確実に、唇を奪った。
 弥彦と唇を合わせるのは、もう何度目だろうか。どうして、こんなにも気持ち良いのか。それは、弥彦も同じ気持ちなのだろう。まるで飼い猫のように大人しくしている……。
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