4 / 48
突然の花婿交替劇
嵐の結婚式
しおりを挟む
結婚式当日…、の朝。
それはそれは眩しいほどの美しさだった。
サンフォース伯爵邸に花嫁を迎えに来た花婿のナルシスが。
「なぁ、本当にいいのか?やめるならまだ間に合うぞ」
「そうよアリスちゃん。私はずっと反対だって言っていたのに!」
先程からうるさいのはアリスの両親だ。
両親は当然ながら女癖の悪いナルシスを気に入らず、ずっとこの結婚に反対していたのだ。
「お嬢様!お願いだから目を覚ましてください!」
「そうだぞお嬢!お嬢には、せめて一途に想ってくれる男と一緒になってほしかったのに!」
アリスに縋るようにして泣いているのは侍女のフェリシーで、怒っているのは秘書のラウルだ。
「ああ、なんて美しいんだろうな、僕の花嫁は」
周囲との温度差も感じず歯の浮くような台詞を述べているのはもちろん新郎のナルシスだ。
真っ白なドレスを身に纏いレースのヴェールを被らされて現れたアリスを見ると、ナルシスは目を細めた。
彼自身も白地に金糸で刺繍された美麗な婚礼衣装を纏い、それこそ匂い立つような色香を放っている。
一年余りの婚約時代にも決して誠実な婚約者ではなかったナルシスであるが、結婚式自体は楽しみにしていたらしい。
おそらく自分が主役になれる晴れ舞台だからであろうが。
いや、彼は妻になるアリスのことももちろん気に入っている。
美しいものが好きなナルシスは、この美しい花嫁の顔も体つきも好きだ。
老若男女問わず賛辞の対象であるアリスを自分のものにできるなど、彼の自尊心を擽ってやまない。
あの才色兼備と名高い、それでいて清楚な雰囲気を漂わせるアリスをベッドに組み敷けるのは自分だけ。
いつも落ち着いている彼女が、どんな顔を見せてくれるだろうか。
それに彼女は、誰より自分を理解してくれている。
たしかに話は合わないのだが、アリスは婚約者だからとナルシスを縛らない。
いつも自由にさせてくれ、醜い嫉妬で怒ったりもしない。
「アリス…」
ナルシスは跪いてアリスの手を取ると、その甲に口づけた。
思わず手を引きそうになったアリスだが、そこはなんとか堪える。
「ああ、やっと君が僕のものになるんだね。待ち遠しかったよ」
うっとりと上目遣いで見上げるナルシスは自分の言葉に酔っているようだ。
社交界で手が早いと噂のナルシスではあるが、さすがに婚約中にアリスに手を出すことはできなかったから、正真正銘今夜は二人の初夜になるはずだ。
「じゃあ、行こうか、愛しい人」
二人が乗った馬車が教会に着くと、ナルシスは恭しくアリスに手を差し伸べた。
そして礼拝堂に向かおうとした時、何やら奥の方から女性の叫び声が聞こえてきた。
「何かあったのかしら?」
アリスが眉をひそめると、ナルシスは
「なんだろうねぇ」
とのんびりと答える。
しかし次の瞬間、その花のようだったナルシスの顔は蒼ざめた。
警備を振り切って突進してきたのは、とある下級貴族の令嬢だったのだ。
「ナルシス様!!!」
「ひぃっ!な、何⁈」
「この、裏切り者~!!」
「うわぁっ!やめろ!」
ナルシスに飛びかかろうとしていた令嬢は、すんでのところで警備の者に取り押さえられた。
「嘘つき!嘘つき~っ!」
取り押さえられながらも令嬢はキッとアリスを睨みつける。
しかしアリスは涼しい顔で見返した。
女癖の悪いナルシスのことである。
こんな事態は予測していた。
なんなら、婚約時代にもこんなことは多々あったのだ。
その度両親やラウルたちに婚約を解消するよう迫られたが、アリスはナルシスを見捨てなかった。
おそらくナルシスは結婚したって落ち着きはしないだろうが、それでも別によかったから。
アリスにとって必要なのは女伯爵を支える有能で品行方正な夫ではない。
上位貴族出身という肩書きと社交性、そして事業には全く興味を示さない…というか邪魔にならない配偶者だ。
そしてナルシスは、そんなアリスが望むお飾り夫にうってつけだった。
アリスは首を傾げ、泣き叫ぶ令嬢を眺めた。
さて、この令嬢はおそらくナルシスの元恋人なのだろうが、珍しいタイプだと思ったのだ。
こんなとんでもなく女好きなナルシスではあるが、その実、きちんと付き合う女性は選んでいる。
あくまで相手も遊びで、別れる時も後腐れのない女性を。
不思議と別れた女性がナルシスの悪口を言わないことも、アリスは気に入っていた。
それなのにー。
「ひどいわナルシス様!私のお腹にはあなたの赤ちゃんがいるのに!」
女性が喚く声を聞いて、アリスはやっと腑に落ちた。
「そうね。たしかにそれはないわ」
女癖が悪くともお頭がお花畑でもよいと思っていたアリスだが、さすがに結婚前にナルシスの子を宿した女の登場は予測していなかった。
「さすがに婚外子がいる人は無理だわ。この結婚はなかったことにしましょう」
アリスは無表情のままあっさりとナルシスに告げた。
そして踵を返すと、あわあわと慌てふためくだけのナルシスを一瞥もせずにテキパキと侍女に指図し始めた。
まずは教会の神父へ、そして教会に向かっていたアリスの両親の馬車にも結婚取りやめの連絡を入れるようにと。
「侯爵家のご家族はもう到着してらっしゃるはずだからすぐに連絡を。ご参列の方々には申し訳ないけど私の方からご説明いたしましょう」
「待ってくれ、お嬢!そのまま説明してはお嬢の名前に傷が付く!」
秘書のラウルが焦ってアリスを止める。
「別に傷などつかないわ。むしろ式を挙げる前に判明してよかったのよ」
「だから私は最初から反対したのです!こんな下半身ダラしない男など!」
侍女のフェリシーが憤慨の余り淑女らしからぬ暴言を吐いている。
「仕方ないじゃないの、今そんなこと言ったって」
アリスは涼しい顔で答えた。
「誤解だ!僕は無実だ!」
誰も、ナルシスの叫びなど聞いていない。
彼は縋るような瞳をアリスに向けた。
彼女はいつもナルシスに会えば花のような笑顔を向けていた。
話は噛み合わなかったが、二人の間に流れる空気は決して不愉快なものではなかったはずだ。
「あの女は僕以外の男とも関係している。だから僕の子供を身篭ったなど嘘だ!信じてくれ、アリス!」
「でも貴方の子ではないという確証もありませんのよね?」
「それは…。でも君は、僕を愛しているのだろう?」
そうでなければ、あの数多いた求婚者の中からナルシスを選んだ理由がない。
「いいえ、ちっとも」
アリスは冷ややかな瞳をナルシスに向けた。
「飛び回っているだけならいざ知らず、他の花に受粉までさせるミツバチはもういりませんわ。さようなら、侯爵家の次男様」
それはそれは眩しいほどの美しさだった。
サンフォース伯爵邸に花嫁を迎えに来た花婿のナルシスが。
「なぁ、本当にいいのか?やめるならまだ間に合うぞ」
「そうよアリスちゃん。私はずっと反対だって言っていたのに!」
先程からうるさいのはアリスの両親だ。
両親は当然ながら女癖の悪いナルシスを気に入らず、ずっとこの結婚に反対していたのだ。
「お嬢様!お願いだから目を覚ましてください!」
「そうだぞお嬢!お嬢には、せめて一途に想ってくれる男と一緒になってほしかったのに!」
アリスに縋るようにして泣いているのは侍女のフェリシーで、怒っているのは秘書のラウルだ。
「ああ、なんて美しいんだろうな、僕の花嫁は」
周囲との温度差も感じず歯の浮くような台詞を述べているのはもちろん新郎のナルシスだ。
真っ白なドレスを身に纏いレースのヴェールを被らされて現れたアリスを見ると、ナルシスは目を細めた。
彼自身も白地に金糸で刺繍された美麗な婚礼衣装を纏い、それこそ匂い立つような色香を放っている。
一年余りの婚約時代にも決して誠実な婚約者ではなかったナルシスであるが、結婚式自体は楽しみにしていたらしい。
おそらく自分が主役になれる晴れ舞台だからであろうが。
いや、彼は妻になるアリスのことももちろん気に入っている。
美しいものが好きなナルシスは、この美しい花嫁の顔も体つきも好きだ。
老若男女問わず賛辞の対象であるアリスを自分のものにできるなど、彼の自尊心を擽ってやまない。
あの才色兼備と名高い、それでいて清楚な雰囲気を漂わせるアリスをベッドに組み敷けるのは自分だけ。
いつも落ち着いている彼女が、どんな顔を見せてくれるだろうか。
それに彼女は、誰より自分を理解してくれている。
たしかに話は合わないのだが、アリスは婚約者だからとナルシスを縛らない。
いつも自由にさせてくれ、醜い嫉妬で怒ったりもしない。
「アリス…」
ナルシスは跪いてアリスの手を取ると、その甲に口づけた。
思わず手を引きそうになったアリスだが、そこはなんとか堪える。
「ああ、やっと君が僕のものになるんだね。待ち遠しかったよ」
うっとりと上目遣いで見上げるナルシスは自分の言葉に酔っているようだ。
社交界で手が早いと噂のナルシスではあるが、さすがに婚約中にアリスに手を出すことはできなかったから、正真正銘今夜は二人の初夜になるはずだ。
「じゃあ、行こうか、愛しい人」
二人が乗った馬車が教会に着くと、ナルシスは恭しくアリスに手を差し伸べた。
そして礼拝堂に向かおうとした時、何やら奥の方から女性の叫び声が聞こえてきた。
「何かあったのかしら?」
アリスが眉をひそめると、ナルシスは
「なんだろうねぇ」
とのんびりと答える。
しかし次の瞬間、その花のようだったナルシスの顔は蒼ざめた。
警備を振り切って突進してきたのは、とある下級貴族の令嬢だったのだ。
「ナルシス様!!!」
「ひぃっ!な、何⁈」
「この、裏切り者~!!」
「うわぁっ!やめろ!」
ナルシスに飛びかかろうとしていた令嬢は、すんでのところで警備の者に取り押さえられた。
「嘘つき!嘘つき~っ!」
取り押さえられながらも令嬢はキッとアリスを睨みつける。
しかしアリスは涼しい顔で見返した。
女癖の悪いナルシスのことである。
こんな事態は予測していた。
なんなら、婚約時代にもこんなことは多々あったのだ。
その度両親やラウルたちに婚約を解消するよう迫られたが、アリスはナルシスを見捨てなかった。
おそらくナルシスは結婚したって落ち着きはしないだろうが、それでも別によかったから。
アリスにとって必要なのは女伯爵を支える有能で品行方正な夫ではない。
上位貴族出身という肩書きと社交性、そして事業には全く興味を示さない…というか邪魔にならない配偶者だ。
そしてナルシスは、そんなアリスが望むお飾り夫にうってつけだった。
アリスは首を傾げ、泣き叫ぶ令嬢を眺めた。
さて、この令嬢はおそらくナルシスの元恋人なのだろうが、珍しいタイプだと思ったのだ。
こんなとんでもなく女好きなナルシスではあるが、その実、きちんと付き合う女性は選んでいる。
あくまで相手も遊びで、別れる時も後腐れのない女性を。
不思議と別れた女性がナルシスの悪口を言わないことも、アリスは気に入っていた。
それなのにー。
「ひどいわナルシス様!私のお腹にはあなたの赤ちゃんがいるのに!」
女性が喚く声を聞いて、アリスはやっと腑に落ちた。
「そうね。たしかにそれはないわ」
女癖が悪くともお頭がお花畑でもよいと思っていたアリスだが、さすがに結婚前にナルシスの子を宿した女の登場は予測していなかった。
「さすがに婚外子がいる人は無理だわ。この結婚はなかったことにしましょう」
アリスは無表情のままあっさりとナルシスに告げた。
そして踵を返すと、あわあわと慌てふためくだけのナルシスを一瞥もせずにテキパキと侍女に指図し始めた。
まずは教会の神父へ、そして教会に向かっていたアリスの両親の馬車にも結婚取りやめの連絡を入れるようにと。
「侯爵家のご家族はもう到着してらっしゃるはずだからすぐに連絡を。ご参列の方々には申し訳ないけど私の方からご説明いたしましょう」
「待ってくれ、お嬢!そのまま説明してはお嬢の名前に傷が付く!」
秘書のラウルが焦ってアリスを止める。
「別に傷などつかないわ。むしろ式を挙げる前に判明してよかったのよ」
「だから私は最初から反対したのです!こんな下半身ダラしない男など!」
侍女のフェリシーが憤慨の余り淑女らしからぬ暴言を吐いている。
「仕方ないじゃないの、今そんなこと言ったって」
アリスは涼しい顔で答えた。
「誤解だ!僕は無実だ!」
誰も、ナルシスの叫びなど聞いていない。
彼は縋るような瞳をアリスに向けた。
彼女はいつもナルシスに会えば花のような笑顔を向けていた。
話は噛み合わなかったが、二人の間に流れる空気は決して不愉快なものではなかったはずだ。
「あの女は僕以外の男とも関係している。だから僕の子供を身篭ったなど嘘だ!信じてくれ、アリス!」
「でも貴方の子ではないという確証もありませんのよね?」
「それは…。でも君は、僕を愛しているのだろう?」
そうでなければ、あの数多いた求婚者の中からナルシスを選んだ理由がない。
「いいえ、ちっとも」
アリスは冷ややかな瞳をナルシスに向けた。
「飛び回っているだけならいざ知らず、他の花に受粉までさせるミツバチはもういりませんわ。さようなら、侯爵家の次男様」
154
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
【完結】呪言《ことほぎ》あなたがそうおっしゃったから。
友坂 悠
恋愛
「君はまだ幼い、私は君を大事にしたいのだ」
あなたがそうおっしゃったから。
わたくしは今までお飾りの妻でがまんしてきたのに。
あなたがそうおっしゃったから。
好きでもない商会のお仕事を頑張ってこなしてきたのに。
全部全部、嘘だったというの?
そしたらわたくしはこれからどうすればいいっていうの?
子供の頃から将来の伴侶として約束された二人。
貴族らしく、外あたりが良く温厚に見えるように育ったラインハルト。
貞淑な令嬢、夫を支えるべき存在になるようにと育てられたアリーシア。
二人は両家に祝福され結婚したはず、だった。
しかし。
結婚したのはラインハルトが18になった歳、アリーシアはまだ14歳だった。
だから、彼のその言葉を疑いもせず信じたアリーシア。
それがまさか、三年後にこんなことになるなんて。
三年間白い結婚を継続した夫婦は子を残す意思が無いものと認められ、政略的な両家のしがらみや契約を破棄し離縁できる。
それがこの国の貴族の婚姻の決まりだった。
元は親同士の契約に逆らって離縁しやり直すための決まり事。
もちろん、そんな肉体的繋がりなど無くても婚姻を継続する夫婦は存在する。
いや、貴族であれば政略結婚が当たり前、愛はなくても結婚生活は続いていく。
貴族の結婚なんて所詮そんなもの。
家同士のつながりさえあれば問題ないのであれば、そこに愛なんてものがなくってもしょうがないのかも、知れない。
けれど。
まさかそんなラインハルトから離婚を言い出されるとは思ってもいなかったアリーシア。
自分は傾いた家を立て直すまでのかりそめの妻だったのか。
家業が上手くいくようになったらもう用無しなのか。
だまされていたのかと傷心のまま実家に戻る彼女を待っていたのは、まさかのラインハルトと妹マリアーナの婚約披露。
悲しみのまま心が虚になったまま領地に逃げ引き篭もるアリーシアだったが……
夫と妹に、いや、家族全てから裏切られたお飾り妻のアリーシア。
彼女が心の平穏を取り戻し幸せになるまでの物語。
【完結】恋が終わる、その隙に
七瀬菜々
恋愛
秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。
伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。
愛しい彼の、弟の妻としてーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる