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近づく、離れる
再び王宮で
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クロードが避寒地から戻ってきて一月くらい経った頃、アリスは再びルイーズ王女と王宮で遭遇した。
その日は仕事で王宮を訪れた帰りに王太子妃ゾフィーの部屋でお茶を楽しんでいたのだが、非常識にも、突然ルイーズ王女が現れたのだ。
「お義姉様!私もご一緒させてくださいませ!」
先触れもなく現れた義妹に、ゾフィーは眉を顰める。
「ルイーズ、いつも言っているけれど、王族としての自覚と品位を持ちなさい」
「わかってるわよ!でも来年には隣国に嫁ぐのだもの。それまでは甘えさせてくれたっていいでしょう?」
「仕方ないわね…。ごめんなさいアリス。少しだけ付き合ってくれる?」
ゾフィーに申し訳なさそうに頼まれ、アリスは「とんでもない」と首を横に振った。
いつもなら兄である王太子からこってり叱られるからと、ルイーズはゾフィーに対してはあまり無茶なことをしないらしい。
しかしここ数日は王太子が視察で王都を出ているので、王女は増長しているようなのだ。
これは、後でゾフィーが話してくれたことだ。
「クロードの奥さんね、ごきげんよう」
ルイーズはアリスのすぐ側に腰をかけた。
彼女の護衛騎士たちは部屋の外で控えている。
「お目にかかれて光栄です、王女様」
「ああ、今日は残念ながらクロードはいないわよ。まぁ、奥さんなら知っているでしょうけど」
「……はい」
クロードは夜勤明けで、今頃まだサンフォース邸で眠っている。
ここでクロードと顔を合わせなくて済んだことに、アリスは少しホッとしていた。
正直、ルイーズにべったり侍っているクロードなどあまり見たくはない。
しかしこの後のルイーズとの会話で、アリスは神経をすり減らすことになる。
「私、クロードの奥さんと色々話してみたかったのよね」
「私と…、ですか?」
「ほら、来年私が隣国に嫁ぐ時、クロードは私に付いてくるでしょう?貴女はどうする気なのかと思って。だって貴女だって女伯爵としてのお仕事があるでしょうし。それに、クロード自身は貴女をどうするつもりなのかしら」
「はぁ…」
「ほら、クロードがいない方が言いやすいことだってあるでしょう?」
意味ありげに含み笑いするルイーズに、アリスは苦笑で返した。
「夫のことは私より…、王女様の方が良くご存知かもしれません」
「そうね。私の方がずっと長く一緒にいるもの。でも最近クロードったら自宅へ帰ることが多くなったのよね。前はいつも宿舎に寝泊まりしていたから、呼び出せばすぐに駆けつけて来たのに」
そう言うとルイーズは横目でアリスを流し見た。
何やら愚痴を言いはじめたルイーズに、アリスは少し面倒臭くなってきた。
いや、最初から居心地は悪かったけれど、正直もう色々放ってここから出て行きたい。
そんなアリスの代わりに、ゾフィーが口を挟んでくれる。
「そうね、それは良い傾向だわ。休みの日も王宮にいるのでは、クロードだって身も心も休まらないでしょうから」
しかしゾフィーの言葉はかえってルイーズの気持ちを煽ったようだ。
「自宅だからって休まるかしら。ねぇ、家にいる時クロードは何してるの?まさか、伯爵家の手伝いなんてさせてないわよね?夫婦で、いつもどんな話をしてるのかしら?私はクロードの主人なのだから教えてくれてもいいでしょう?」
「いい加減になさいルイーズ。夫婦の会話を聞くなんて下品よ」
ゾフィーに嗜められたルイーズは、目を吊り上げてふいっと顔をそらした。
王女は一体アリスに何をしたいのだろうか。
「ところで…」
ルイーズはふとアリスの髪を見上げて、髪飾りに目を留めた。
「あなたのその飾り、クロードからプレゼントされたの?」
それは大きなサファイアの付いた、宝石加工で有名な貿易相手から買った一点物だ。
もちろんクロードからもらった物ではない。
「これは…、自分で購入しました」
「そう…」
ルイーズはにわかに口角を上げ、自分の髪に手をやった。
「まぁ、クロードに宝石を見る目なんてないものね。だって見てよ。これね、クロードに買ってもらったのよ。ほら、離宮にいた時に私に似合うからって贈ってくれたんだけど、これなんてガラス玉よね。でも色や形のセンスはいいから使ってあげてるの。それにしても自分の瞳の色を私に付けさせるなんて、クロードったら、何考えてるのかしらね。ホント笑っちゃう。それからね、王都に帰ったら寒いからって言ってショールも贈ってくれたの。安物だったけど、結構温かかったわ」
ルイーズが延々と語る中、アリスはただ黙って聞いていた。
ゾフィーがなんとかルイーズの話をやめさせようと何度も口を挟んでいたが、ルイーズはとうとう言いたいことを全て言い切ったようだ。
晴れ晴れとした顔でルイーズが引き上げて行くと、ゾフィーは心配そうにアリスに声をかけた。
「今日は本当にごめんなさいねアリス。ルイーズの言っていたことは気にしないで。あんなこと、全部嘘に決まっているから」
嘘…、なのかな?とアリスは思う。
アリスはクロードから装飾品などもらったことがない。
あんな、女慣れしていないような人だから当然のように思っていたけど、実は、ルイーズ王女には贈っていたのだとしたら…。
その日は仕事で王宮を訪れた帰りに王太子妃ゾフィーの部屋でお茶を楽しんでいたのだが、非常識にも、突然ルイーズ王女が現れたのだ。
「お義姉様!私もご一緒させてくださいませ!」
先触れもなく現れた義妹に、ゾフィーは眉を顰める。
「ルイーズ、いつも言っているけれど、王族としての自覚と品位を持ちなさい」
「わかってるわよ!でも来年には隣国に嫁ぐのだもの。それまでは甘えさせてくれたっていいでしょう?」
「仕方ないわね…。ごめんなさいアリス。少しだけ付き合ってくれる?」
ゾフィーに申し訳なさそうに頼まれ、アリスは「とんでもない」と首を横に振った。
いつもなら兄である王太子からこってり叱られるからと、ルイーズはゾフィーに対してはあまり無茶なことをしないらしい。
しかしここ数日は王太子が視察で王都を出ているので、王女は増長しているようなのだ。
これは、後でゾフィーが話してくれたことだ。
「クロードの奥さんね、ごきげんよう」
ルイーズはアリスのすぐ側に腰をかけた。
彼女の護衛騎士たちは部屋の外で控えている。
「お目にかかれて光栄です、王女様」
「ああ、今日は残念ながらクロードはいないわよ。まぁ、奥さんなら知っているでしょうけど」
「……はい」
クロードは夜勤明けで、今頃まだサンフォース邸で眠っている。
ここでクロードと顔を合わせなくて済んだことに、アリスは少しホッとしていた。
正直、ルイーズにべったり侍っているクロードなどあまり見たくはない。
しかしこの後のルイーズとの会話で、アリスは神経をすり減らすことになる。
「私、クロードの奥さんと色々話してみたかったのよね」
「私と…、ですか?」
「ほら、来年私が隣国に嫁ぐ時、クロードは私に付いてくるでしょう?貴女はどうする気なのかと思って。だって貴女だって女伯爵としてのお仕事があるでしょうし。それに、クロード自身は貴女をどうするつもりなのかしら」
「はぁ…」
「ほら、クロードがいない方が言いやすいことだってあるでしょう?」
意味ありげに含み笑いするルイーズに、アリスは苦笑で返した。
「夫のことは私より…、王女様の方が良くご存知かもしれません」
「そうね。私の方がずっと長く一緒にいるもの。でも最近クロードったら自宅へ帰ることが多くなったのよね。前はいつも宿舎に寝泊まりしていたから、呼び出せばすぐに駆けつけて来たのに」
そう言うとルイーズは横目でアリスを流し見た。
何やら愚痴を言いはじめたルイーズに、アリスは少し面倒臭くなってきた。
いや、最初から居心地は悪かったけれど、正直もう色々放ってここから出て行きたい。
そんなアリスの代わりに、ゾフィーが口を挟んでくれる。
「そうね、それは良い傾向だわ。休みの日も王宮にいるのでは、クロードだって身も心も休まらないでしょうから」
しかしゾフィーの言葉はかえってルイーズの気持ちを煽ったようだ。
「自宅だからって休まるかしら。ねぇ、家にいる時クロードは何してるの?まさか、伯爵家の手伝いなんてさせてないわよね?夫婦で、いつもどんな話をしてるのかしら?私はクロードの主人なのだから教えてくれてもいいでしょう?」
「いい加減になさいルイーズ。夫婦の会話を聞くなんて下品よ」
ゾフィーに嗜められたルイーズは、目を吊り上げてふいっと顔をそらした。
王女は一体アリスに何をしたいのだろうか。
「ところで…」
ルイーズはふとアリスの髪を見上げて、髪飾りに目を留めた。
「あなたのその飾り、クロードからプレゼントされたの?」
それは大きなサファイアの付いた、宝石加工で有名な貿易相手から買った一点物だ。
もちろんクロードからもらった物ではない。
「これは…、自分で購入しました」
「そう…」
ルイーズはにわかに口角を上げ、自分の髪に手をやった。
「まぁ、クロードに宝石を見る目なんてないものね。だって見てよ。これね、クロードに買ってもらったのよ。ほら、離宮にいた時に私に似合うからって贈ってくれたんだけど、これなんてガラス玉よね。でも色や形のセンスはいいから使ってあげてるの。それにしても自分の瞳の色を私に付けさせるなんて、クロードったら、何考えてるのかしらね。ホント笑っちゃう。それからね、王都に帰ったら寒いからって言ってショールも贈ってくれたの。安物だったけど、結構温かかったわ」
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「今日は本当にごめんなさいねアリス。ルイーズの言っていたことは気にしないで。あんなこと、全部嘘に決まっているから」
嘘…、なのかな?とアリスは思う。
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