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回想、オレリアン
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『白い結婚』…、つまり、結婚しながら2人の間に夫婦関係が成り立たなかったということだ。
たしかにそれが離縁理由になると、聞いたことはある。
俺は、一瞬言葉を失った。
もうすぐ結婚して1年。
その間妻を放置して『白い結婚』を強いたのは俺の方だ。
コンスタンスは愕然とする俺を見て、僅かに目線を下げた。
「私では侯爵夫人としての1番の務め…、つまり、旦那様の跡継ぎを産んで差し上げることが出来ませんわ」
自嘲するように小さく笑う彼女に、目眩がする。
全て、全て俺のせいなのに。
非の打ち所がない完璧な貴婦人である彼女に勝手な苦手意識を持って、遠去けていたのは俺の方なのに。
「旦那様の恥は、最小限に致しますわ。
どうぞ、私が閨を怖がり、拒んでいたから出来なかったと言って、離縁を申し立ててくださいませ」
「…なっ…っ!」
「心配なさらなくとも、私の方に非があれば持参金はお返しいただく必要もないと存じます」
「違う!そんな心配はしていない!
金などいらない!
私は離縁などしたくないのだ!」
再び立ち上がった俺はそう叫んだ。
間にテーブルが無ければ今にも彼女に掴みかかってしまいそうだ。
「セリーヌとは貴女との縁談が持ち上がる前にすでに終わっている。
今回何の思惑があって彼女がこんな手紙を送ってきたのか知らないが、私は応じるつもりなど微塵も無い。
今回貴女を迎えに来たのは、今までの態度を謝罪し、貴女と夫婦としてやり直したかったからだ!」
真摯に訴えても、コンスタンスは怯えたように見上げるだけ。
おそらく俺の言葉など、一句足りとも彼女には響いていない。
手紙が届いてからの数日間、悩んで悩んだ末に出した『白い結婚』故の『離縁』という結論なのだろうから。
ああ、なんということだろう。
コンスタンスと夫婦としてやり直したいと覚悟した途端、離縁を突きつけられるなんて。
そしてその全ての原因は不甲斐ない俺自身にあるなんて。
今の彼女の言葉からもわかるように、俺が彼女との離縁を拒むのは社交界で恥をかくからとか、持参金を返さなくてはならないからなどの理由と思われているのだろう。
それは、今までの俺の態度を見れば当然の思いだ。
それに、セリーヌからの手紙を読めば、俺の不貞を疑われても仕方がない内容なのだ。
だが、違う。
違うんだ、コンスタンス。
もう、セリーヌへの未練などこれっぽっちも無い。
金も爵位も関係ない。
俺はただ、貴女と本当の夫婦になりたいのだ。
だが、こんな1年も妻を放置していた俺が、今更何をどう言えば信じてもらえるというのだ。
白い結婚…。
1年以上の白い結婚が離縁理由になるというなら、そうでなくしてしまえばいいのか?
それなら、俺が今目の前の彼女をこのまま押し倒し、抱いてしまえばいいのか?
だが…。
そんなことをすれば、きっと彼女は生涯俺を軽蔑し、許さないだろう。
体で縛り付けたって、おそらく心は永遠に手に入らないだろう。
結局、話は平行線のままに終わった。
まだ結婚して1年に満たない以上、『白い結婚』による離縁申し立ては出来ないし、俺にはほんの少し猶予が与えられたということだ。
その間、言葉を尽くし、誠実な態度で、彼女に信じてもらうしかない。
その後彼女は何事も無かったように俺にも使用人にも接し、俺たちは向かい合って晩餐を共にした。
側から見ていると、たしかに使用人と彼女の間には信頼関係が築かれ、あたたかいものが流れていた。
それと同時に、俺に対する使用人たちの冷たい視線もひしひしと感じた。
その夜は、当然俺たちは別々の部屋で寝んだ。
1年も別居していたのだから、使用人に取り繕うこともないと、彼女が言ったから。
そして翌朝、俺とコンスタンスは馬車に乗り込み、ヒース侯爵領を後にした。
この後、これからの生活を一変させるあの事故が起きることも知らずに。
たしかにそれが離縁理由になると、聞いたことはある。
俺は、一瞬言葉を失った。
もうすぐ結婚して1年。
その間妻を放置して『白い結婚』を強いたのは俺の方だ。
コンスタンスは愕然とする俺を見て、僅かに目線を下げた。
「私では侯爵夫人としての1番の務め…、つまり、旦那様の跡継ぎを産んで差し上げることが出来ませんわ」
自嘲するように小さく笑う彼女に、目眩がする。
全て、全て俺のせいなのに。
非の打ち所がない完璧な貴婦人である彼女に勝手な苦手意識を持って、遠去けていたのは俺の方なのに。
「旦那様の恥は、最小限に致しますわ。
どうぞ、私が閨を怖がり、拒んでいたから出来なかったと言って、離縁を申し立ててくださいませ」
「…なっ…っ!」
「心配なさらなくとも、私の方に非があれば持参金はお返しいただく必要もないと存じます」
「違う!そんな心配はしていない!
金などいらない!
私は離縁などしたくないのだ!」
再び立ち上がった俺はそう叫んだ。
間にテーブルが無ければ今にも彼女に掴みかかってしまいそうだ。
「セリーヌとは貴女との縁談が持ち上がる前にすでに終わっている。
今回何の思惑があって彼女がこんな手紙を送ってきたのか知らないが、私は応じるつもりなど微塵も無い。
今回貴女を迎えに来たのは、今までの態度を謝罪し、貴女と夫婦としてやり直したかったからだ!」
真摯に訴えても、コンスタンスは怯えたように見上げるだけ。
おそらく俺の言葉など、一句足りとも彼女には響いていない。
手紙が届いてからの数日間、悩んで悩んだ末に出した『白い結婚』故の『離縁』という結論なのだろうから。
ああ、なんということだろう。
コンスタンスと夫婦としてやり直したいと覚悟した途端、離縁を突きつけられるなんて。
そしてその全ての原因は不甲斐ない俺自身にあるなんて。
今の彼女の言葉からもわかるように、俺が彼女との離縁を拒むのは社交界で恥をかくからとか、持参金を返さなくてはならないからなどの理由と思われているのだろう。
それは、今までの俺の態度を見れば当然の思いだ。
それに、セリーヌからの手紙を読めば、俺の不貞を疑われても仕方がない内容なのだ。
だが、違う。
違うんだ、コンスタンス。
もう、セリーヌへの未練などこれっぽっちも無い。
金も爵位も関係ない。
俺はただ、貴女と本当の夫婦になりたいのだ。
だが、こんな1年も妻を放置していた俺が、今更何をどう言えば信じてもらえるというのだ。
白い結婚…。
1年以上の白い結婚が離縁理由になるというなら、そうでなくしてしまえばいいのか?
それなら、俺が今目の前の彼女をこのまま押し倒し、抱いてしまえばいいのか?
だが…。
そんなことをすれば、きっと彼女は生涯俺を軽蔑し、許さないだろう。
体で縛り付けたって、おそらく心は永遠に手に入らないだろう。
結局、話は平行線のままに終わった。
まだ結婚して1年に満たない以上、『白い結婚』による離縁申し立ては出来ないし、俺にはほんの少し猶予が与えられたということだ。
その間、言葉を尽くし、誠実な態度で、彼女に信じてもらうしかない。
その後彼女は何事も無かったように俺にも使用人にも接し、俺たちは向かい合って晩餐を共にした。
側から見ていると、たしかに使用人と彼女の間には信頼関係が築かれ、あたたかいものが流れていた。
それと同時に、俺に対する使用人たちの冷たい視線もひしひしと感じた。
その夜は、当然俺たちは別々の部屋で寝んだ。
1年も別居していたのだから、使用人に取り繕うこともないと、彼女が言ったから。
そして翌朝、俺とコンスタンスは馬車に乗り込み、ヒース侯爵領を後にした。
この後、これからの生活を一変させるあの事故が起きることも知らずに。
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