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こころ、近づく
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しおりを挟む食事を終えると庭を歩こうということになり、オレリアンは自然に手を差し伸べた。
その手に、コンスタンスも躊躇うことなく手を乗せる。
手を繋いで歩く2人の姿はとても優雅だが、その実、心の中はかなり舞い上がっている。
オレリアンは彼女の細く柔らかな手に触れ、再びこの手を握ることが出来る喜びを噛み締める。
そしてコンスタンスもまた、『私は貴女の騎士だ』と言い切った彼の力強い言葉に心を震わせ、その大きくあたたかな手に包まれる喜びを感じ始めていた。
穏やかな陽の光を浴び、オレリアンの金色の髪が輝く。
コンスタンスを見下ろすその蒼い瞳は慈愛に満ちている。
コンスタンスはあらためて、自分の夫が美しくて凛々しい男性であるだけではなく、心から自分を大切に想ってくれている、頼もしい夫であることを思い知った。
「ところで侯爵様…、私から、2つお願いがございます」
繋いでいる手を強めに握り、コンスタンスが夫を見上げる。
「なんでしょう?
貴女の願いなら、なんでもお聞きしますよ」
オレリアンも手を握り返し、優しい目で妻を見下ろす。
すると妻は少しばつが悪そうに、躊躇いながら言葉を繋いだ。
「私は以前、記憶がなかったこととは言え、貴方に酷い言葉を投げつけてしまいました。
ずっとそれを、申し訳なく思っていたのです。
貴方は私を『コニー』と愛称で呼んでくださっていたのですよね?
どうかまた、『コニー』と呼んでいただけないでしょうか?」
妻の言葉に、オレリアンは驚いたように目を見開いた。
「え?いいのですか?」
「ええ、ぜひ呼んでくださいませ。
それから私も、貴方をお名前でお呼びしてもよろしいでしょうか?オレリアン様と」
「ええ、もちろんですよ、コニー」
オレリアンは目を輝かせ、満面の笑みで応える。
コンスタンスはそれを眩しそうに見つめた。
そして、躊躇うように、もう一つの願いを口にした。
「それから…、王妃様とのお茶会が終わったら、私はヒース侯爵邸に戻ってもよろしいでしょうか?」
「それは…」
この願いには、オレリアンは一瞬戸惑った。
まさか、彼女の方からそんな言葉が出るとは思いもよらなかった。
本当なら飛び上がりたいほど嬉しい言葉だが、ここは、冷静にならなくてはいけない。
今の状態の彼女を迎えて、本当に大丈夫なのだろうか?
戸惑うオレリアンを前に、コンスタンスは微笑んだ。
「私は貴方の妻なのですよね?
今まで侯爵夫人としての務めも果たさず、貴方には本当に申し訳なかったと思っております。
オレリアン様、どうぞ私に本来やるべきことをさせてくださいませ。
そして、妻として侯爵家に迎えてくださいませ。
それに私は、貴方の妻として、夫であるオレリアン様をもっと知りたいのです」
そのキッパリとした口調と瞳には強い意志が感じられ、7歳の時の彼女とも、19歳の時の彼女とも、また違った笑顔に見えた。
オレリアンは空を仰いだ。
少し前に感じた王太子への嫉妬やモヤモヤが嘘のように晴れ渡ってゆく。
彼女は自らの意志で、オレリアンに歩み寄ろうとしている。
彼女とこれからこうして少しずつ距離を詰めて、そして、寄り添って生きていくのだ。
オレリアンは大きく頷くと、両手を広げた。
「承諾の意をこめて、貴女を抱きしめてもいいですか?コニー」
コンスタンスは真っ赤になって、小さく頷く。
オレリアンの広くあたたかい胸に包まれ、コンスタンスは静かに目を閉じた。
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