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第一部
第37話 百聞は一見に如かず
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右手はしっかりと男の胸倉を地面に押さえつけている。
男は喉の奥から空気が漏れるような呻き声を上げた。
リリアーナの視線が、自分の手元に注がれているのを感じ、掴んでいた手を離す。
男は、激しく咳き込み始めた。
しばらくは立ち上がれないだろう、と男を一瞥してから、リリアーナの方に向き直る。
「……一体、どういうことですか?」
自分で思うよりも、ずっと低い声が出た。
いつもの黒いフードを目深に被ったリリアーナは、男が息をしているのを見て、ほっとしたように頬を緩めてから、こちらに向かって頭を下げる。
「ウェイン卿。ご無沙汰しております。お元気でお過ごしでしたか?」
黒いドレスの端をつまみ上げ、背景と状況に全くそぐわない、非の打ち所のない優雅な挨拶をして見せた。
「はい。お陰様で……いや、そんなことはどうでもいいです。いったいなぜ、貴女が、ここで、この男に絡まれているんですか?」
「その、いろいろと、事情がございまして……」
自身の気迫に押されて、リリアーナがたじろぐのが分かったが、引く訳にはいかない。
せいぜい図書館に行っている程度だと思っていた外出先が、まさかクルチザン地区だと……?
王都で最も治安の悪い場所。
表通りはそれなりに賑わっているが、一歩路地を入った裏通りは、いわゆる貧民窟だ。犯罪の巣。
こんな場所を伯爵令嬢が騎士も連れずにうろつくなど、あり得ない。
ゴロツキ百人程度なら瞬殺できるオデイエですら、ここでは男の騎士と組ませている。
騎士の護衛付きだったとしても、彼女のような人が、足を踏み入れて良い場所ではなかった。
「あのう……わたしから、状況の説明をさせていただいても?」
手を挙げたのは、リリアーナの隣に立つ、胸元が大きく開いた派手な赤いドレス姿の娼婦らしき女だった。この地区の女に共通する、同じような厚化粧を施した顔は、誰も彼も同じように見える。
「そもそもですね。その酔っぱらいは、このわたしにしつこく絡んできた店の客でして、腕を引っ張られそうになったところを、こちらのお嬢さんが止めに入ってくださいました。
すると、『邪魔すんじゃねえよ、代わりにお前でもいいんだぜ』というベタな台詞を吐いて、お嬢さんの腕を掴もうとするので、周りの野次馬どもが止めに入ろうとしたところに、騎士様が風のように現れて、その男をのされたのでございます」
「……なるほど……」
リリアーナは、そうです、そうです、と言わんばかりにこくこくと頷いている。
周りを見渡すと、確かに止めに入ろうとしていたと思われる男達が、その手の持っていき場を失い、宙ぶらりんの両手を持て余していた。
ひとり、ふたり、とその男たちが、パチパチ、と手を合わせて拍手をし始める。
他の野次馬や先ほどの赤いドレスの娼婦、しまいにはリリアーナまでが、口元ににっこりと笑みを浮かべて拍手をしはじめた。
「やるなあ! にいちゃん!」
「もっとお高く留まってると思ってたが、いいとこあるじゃねえか!」
「いやー、いいもん見せてもらった!」
「よっ! 王宮騎士さん! 男前だね!」
掛け声までが聞こえてきて、いたたまれなさが最高潮に達したころ、騒ぎを聞きつけた治安隊の兵士が二人、駆けつけてきた。
この制服を見るなり、胸の前に右腕を掲げ最敬礼をする兵士二人に、まだ地面に這いつくばって、はあはあと肩で息をしている男を引き渡した。
「ノワゼット公爵縁者に対する狼藉だ。国家反逆罪で取り調べておけ」
「「はっ!!承知しました!!」」
二人の兵士に引き立てられ、男は騒ぎ出した。
「国……っ!えっ!ちが……、ちがう!!おれは、おれは、ただの、ごく普通の、平凡な、」
男は取り乱し、逃れようとするが、治安隊兵士に両脇をしっかりと抱えられていた。
「変態なんだああぁあああぁああぁぁぁぁぁぁっ!」
断末魔の如き絶叫を残し、男は連れられて行った。
§
「……それで?」
男の背中を見送ってから、改めてリリアーナの方を見やる。
いつの間にか、野次馬たちはいなくなり、その場にはさっきの赤いドレスの娼婦とリリアーナだけが残った。
自分の発した声の静かな響きに、水をうったように、辺りの空気が張り詰める。
「あの……危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」
リリアーナは、間違いなく微塵も危ないと思っていない、おっとりした声音で礼を言った。
「そんなことはどうでも良いです。なぜ、貴女が、ここに? 共は? 馬車は?」
「こちらに私用がございまして、一人で参りました。徒歩で、でございます」
……質問の答えは返ってきたが、どれ一つとして、納得できるものはなかった。
令嬢が一人で出歩くことの非常識さ、この界隈の治安の悪さ、どういった事態に巻き込まれる危険があるかについて、はっきり説明せねば、と口を開きかけた。
その時、フードを目深に被ったリリアーナの視線が、俺の背後にちらと向けられたのを感じた。
――なんだ……?
言い知れぬ嫌な予感がして、振り返る。
そこには、たった今、出てきたばかりの建物があった。
『黒薔薇館』
赤地に黒の文字と蔦模様で縁どられた、色鮮やかな独特な看板。
ご丁寧にも、一仕事終えた感漂う女が、二階の窓辺に腰かけ、気怠げにキセルをくゆらせている。
間違いなく、一目見て、『あれ』だった。
朝、娼館から、男が、一人で、出てきました。
それを目撃した場合において、何を想像するかと問われた場合、答えはあまりに明々白々だった。
瞬間、何故か足元がぐらりと揺らぐほどの衝撃を受ける。
「いや、違います」
「……はい?」
「これは、仕事で」
「……はい」
「本当に、仕事で」
「……はい」
我ながらもはや、何を言っても言い訳にしか聞こえなかった。
百聞は一見に如かず、という諺がある。
現場を見られた以上、百個言い訳しても無駄ですよー、という意味にもとれる。
リリアーナが訝し気に首を傾げているが、何か言い募れば言い募るほど、余計に泥沼に嵌っていく感覚に襲われ、頭を抱えて座り込みたい衝動を抑えるので精一杯だった。
背に氷のような冷たい汗が伝うのを感じたその時、
「レディ・リリアーナ?」
声がした方を向くと、そこにルイーズ・オデイエとアルフレッド・キャリエールの二人が立っていた。
気のせいか、後光が差して見える。
かつてこれほど、この二人を頼もしく思ったことはなかった。
§
「では、皆様は、お仕事で……」
「そうなんですよ! だけど、ぜんっぜん、進展なくて。クサクサしてたら、まさか、こんなとこで令嬢と会えるなんて! 幻覚かと思っちゃいました」
オデイエが、にこにこと満面の笑みを浮かべながら、リリアーナの右手を両手でとって、撫でまわしている。
「まあ……大変でございますね……」
リリアーナの頬は強張り、見るからに狼狽していた。
オデイエはリリアーナの姿を認めるなり、
「本物!?」
と叫び、いきなりリリアーナに抱きついた。
唖然とするリリアーナの顔をフードの下から覗き込み、
「やだ、本物だわ! やだ、会いたいと思ってたら、ほんとに会えちゃった!」
と歓声を上げながら、ひとしきり抱き絞めた。
「……あ、あのう……?」
硬直して、されるがままのリリアーナが、訳が分からない、という声を出した。
離れようとしないオデイエをキャリエールと協力して引き剥がし、別の聞き込みを終えて合流したラッドと共に、セシリアの件や、事件の捜査でここにいることを簡単に説明し、現在に至る。
「セシリア様のこと、安心いたしました。でも、これからはきっと大丈夫ですね。……支えてくださる方がいらっしゃいますもの」
とラッドの方を向き、微笑んでいる。
「はい、まあ……」
はにかんだ笑顔で答えるラッドの耳が、ほんのり赤い。何やら通じ合っている二人の様子に、何故かむっとする。
「それで、令嬢はどうしてこちらに?」
ラッドが尋ねる。
「はい。わたくしは、こちらに知人を訪ねてまいりまして――」
言いかけたところに、存在を忘れかけていた、さっきの赤いドレスの娼婦が声をかけた。
「お嬢さん、そろそろ行かないと、ホープが待ちくたびれてますよ」
「まあ……そうでしたね。皆様、どうぞお気をつけて。ご進展をお祈りしております。ウェイン卿、先程はありがとうございました。それでは、失礼いたします」
リリアーナは深々と礼をすると、ドレスの裾をひらりと優美に翻し、歩み去りかけた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………えっ? いやいや、だめですよ! その娼……じゃなくて、女性とお知り合いだったんですか!? ホープって誰です!? と、とりあえず、俺たちも一緒に行きますから! いいですよね?」
言葉を失う四人の中で、一番先に我に返ったキャリエールが、慌てて止めた。
リリアーナが、仰天、という風に振り返る。
「……い、今から? 皆様も? ご一緒に? ですか?」
コクリ、と騎士が揃って頷く。
何をそんなに驚いているのだろう。
「あの……他にも、人が……おりますが?」
むしろ、最も気になるのは、その他の人である。ホープというのは、……男の名前のようではないか。
なぜか愕然としている様子のリリアーナの横で、赤いドレスの女が、嫣然と真っ赤な唇を開いた。
「いいじゃないですか。来たいって言うなら来てもらえば。どうぞ、騎士様をご招待するようなところではございませんが、それでもよろしかったら、ご一緒に」
男は喉の奥から空気が漏れるような呻き声を上げた。
リリアーナの視線が、自分の手元に注がれているのを感じ、掴んでいた手を離す。
男は、激しく咳き込み始めた。
しばらくは立ち上がれないだろう、と男を一瞥してから、リリアーナの方に向き直る。
「……一体、どういうことですか?」
自分で思うよりも、ずっと低い声が出た。
いつもの黒いフードを目深に被ったリリアーナは、男が息をしているのを見て、ほっとしたように頬を緩めてから、こちらに向かって頭を下げる。
「ウェイン卿。ご無沙汰しております。お元気でお過ごしでしたか?」
黒いドレスの端をつまみ上げ、背景と状況に全くそぐわない、非の打ち所のない優雅な挨拶をして見せた。
「はい。お陰様で……いや、そんなことはどうでもいいです。いったいなぜ、貴女が、ここで、この男に絡まれているんですか?」
「その、いろいろと、事情がございまして……」
自身の気迫に押されて、リリアーナがたじろぐのが分かったが、引く訳にはいかない。
せいぜい図書館に行っている程度だと思っていた外出先が、まさかクルチザン地区だと……?
王都で最も治安の悪い場所。
表通りはそれなりに賑わっているが、一歩路地を入った裏通りは、いわゆる貧民窟だ。犯罪の巣。
こんな場所を伯爵令嬢が騎士も連れずにうろつくなど、あり得ない。
ゴロツキ百人程度なら瞬殺できるオデイエですら、ここでは男の騎士と組ませている。
騎士の護衛付きだったとしても、彼女のような人が、足を踏み入れて良い場所ではなかった。
「あのう……わたしから、状況の説明をさせていただいても?」
手を挙げたのは、リリアーナの隣に立つ、胸元が大きく開いた派手な赤いドレス姿の娼婦らしき女だった。この地区の女に共通する、同じような厚化粧を施した顔は、誰も彼も同じように見える。
「そもそもですね。その酔っぱらいは、このわたしにしつこく絡んできた店の客でして、腕を引っ張られそうになったところを、こちらのお嬢さんが止めに入ってくださいました。
すると、『邪魔すんじゃねえよ、代わりにお前でもいいんだぜ』というベタな台詞を吐いて、お嬢さんの腕を掴もうとするので、周りの野次馬どもが止めに入ろうとしたところに、騎士様が風のように現れて、その男をのされたのでございます」
「……なるほど……」
リリアーナは、そうです、そうです、と言わんばかりにこくこくと頷いている。
周りを見渡すと、確かに止めに入ろうとしていたと思われる男達が、その手の持っていき場を失い、宙ぶらりんの両手を持て余していた。
ひとり、ふたり、とその男たちが、パチパチ、と手を合わせて拍手をし始める。
他の野次馬や先ほどの赤いドレスの娼婦、しまいにはリリアーナまでが、口元ににっこりと笑みを浮かべて拍手をしはじめた。
「やるなあ! にいちゃん!」
「もっとお高く留まってると思ってたが、いいとこあるじゃねえか!」
「いやー、いいもん見せてもらった!」
「よっ! 王宮騎士さん! 男前だね!」
掛け声までが聞こえてきて、いたたまれなさが最高潮に達したころ、騒ぎを聞きつけた治安隊の兵士が二人、駆けつけてきた。
この制服を見るなり、胸の前に右腕を掲げ最敬礼をする兵士二人に、まだ地面に這いつくばって、はあはあと肩で息をしている男を引き渡した。
「ノワゼット公爵縁者に対する狼藉だ。国家反逆罪で取り調べておけ」
「「はっ!!承知しました!!」」
二人の兵士に引き立てられ、男は騒ぎ出した。
「国……っ!えっ!ちが……、ちがう!!おれは、おれは、ただの、ごく普通の、平凡な、」
男は取り乱し、逃れようとするが、治安隊兵士に両脇をしっかりと抱えられていた。
「変態なんだああぁあああぁああぁぁぁぁぁぁっ!」
断末魔の如き絶叫を残し、男は連れられて行った。
§
「……それで?」
男の背中を見送ってから、改めてリリアーナの方を見やる。
いつの間にか、野次馬たちはいなくなり、その場にはさっきの赤いドレスの娼婦とリリアーナだけが残った。
自分の発した声の静かな響きに、水をうったように、辺りの空気が張り詰める。
「あの……危ないところを助けていただき、ありがとうございました。」
リリアーナは、間違いなく微塵も危ないと思っていない、おっとりした声音で礼を言った。
「そんなことはどうでも良いです。なぜ、貴女が、ここに? 共は? 馬車は?」
「こちらに私用がございまして、一人で参りました。徒歩で、でございます」
……質問の答えは返ってきたが、どれ一つとして、納得できるものはなかった。
令嬢が一人で出歩くことの非常識さ、この界隈の治安の悪さ、どういった事態に巻き込まれる危険があるかについて、はっきり説明せねば、と口を開きかけた。
その時、フードを目深に被ったリリアーナの視線が、俺の背後にちらと向けられたのを感じた。
――なんだ……?
言い知れぬ嫌な予感がして、振り返る。
そこには、たった今、出てきたばかりの建物があった。
『黒薔薇館』
赤地に黒の文字と蔦模様で縁どられた、色鮮やかな独特な看板。
ご丁寧にも、一仕事終えた感漂う女が、二階の窓辺に腰かけ、気怠げにキセルをくゆらせている。
間違いなく、一目見て、『あれ』だった。
朝、娼館から、男が、一人で、出てきました。
それを目撃した場合において、何を想像するかと問われた場合、答えはあまりに明々白々だった。
瞬間、何故か足元がぐらりと揺らぐほどの衝撃を受ける。
「いや、違います」
「……はい?」
「これは、仕事で」
「……はい」
「本当に、仕事で」
「……はい」
我ながらもはや、何を言っても言い訳にしか聞こえなかった。
百聞は一見に如かず、という諺がある。
現場を見られた以上、百個言い訳しても無駄ですよー、という意味にもとれる。
リリアーナが訝し気に首を傾げているが、何か言い募れば言い募るほど、余計に泥沼に嵌っていく感覚に襲われ、頭を抱えて座り込みたい衝動を抑えるので精一杯だった。
背に氷のような冷たい汗が伝うのを感じたその時、
「レディ・リリアーナ?」
声がした方を向くと、そこにルイーズ・オデイエとアルフレッド・キャリエールの二人が立っていた。
気のせいか、後光が差して見える。
かつてこれほど、この二人を頼もしく思ったことはなかった。
§
「では、皆様は、お仕事で……」
「そうなんですよ! だけど、ぜんっぜん、進展なくて。クサクサしてたら、まさか、こんなとこで令嬢と会えるなんて! 幻覚かと思っちゃいました」
オデイエが、にこにこと満面の笑みを浮かべながら、リリアーナの右手を両手でとって、撫でまわしている。
「まあ……大変でございますね……」
リリアーナの頬は強張り、見るからに狼狽していた。
オデイエはリリアーナの姿を認めるなり、
「本物!?」
と叫び、いきなりリリアーナに抱きついた。
唖然とするリリアーナの顔をフードの下から覗き込み、
「やだ、本物だわ! やだ、会いたいと思ってたら、ほんとに会えちゃった!」
と歓声を上げながら、ひとしきり抱き絞めた。
「……あ、あのう……?」
硬直して、されるがままのリリアーナが、訳が分からない、という声を出した。
離れようとしないオデイエをキャリエールと協力して引き剥がし、別の聞き込みを終えて合流したラッドと共に、セシリアの件や、事件の捜査でここにいることを簡単に説明し、現在に至る。
「セシリア様のこと、安心いたしました。でも、これからはきっと大丈夫ですね。……支えてくださる方がいらっしゃいますもの」
とラッドの方を向き、微笑んでいる。
「はい、まあ……」
はにかんだ笑顔で答えるラッドの耳が、ほんのり赤い。何やら通じ合っている二人の様子に、何故かむっとする。
「それで、令嬢はどうしてこちらに?」
ラッドが尋ねる。
「はい。わたくしは、こちらに知人を訪ねてまいりまして――」
言いかけたところに、存在を忘れかけていた、さっきの赤いドレスの娼婦が声をかけた。
「お嬢さん、そろそろ行かないと、ホープが待ちくたびれてますよ」
「まあ……そうでしたね。皆様、どうぞお気をつけて。ご進展をお祈りしております。ウェイン卿、先程はありがとうございました。それでは、失礼いたします」
リリアーナは深々と礼をすると、ドレスの裾をひらりと優美に翻し、歩み去りかけた。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………えっ? いやいや、だめですよ! その娼……じゃなくて、女性とお知り合いだったんですか!? ホープって誰です!? と、とりあえず、俺たちも一緒に行きますから! いいですよね?」
言葉を失う四人の中で、一番先に我に返ったキャリエールが、慌てて止めた。
リリアーナが、仰天、という風に振り返る。
「……い、今から? 皆様も? ご一緒に? ですか?」
コクリ、と騎士が揃って頷く。
何をそんなに驚いているのだろう。
「あの……他にも、人が……おりますが?」
むしろ、最も気になるのは、その他の人である。ホープというのは、……男の名前のようではないか。
なぜか愕然としている様子のリリアーナの横で、赤いドレスの女が、嫣然と真っ赤な唇を開いた。
「いいじゃないですか。来たいって言うなら来てもらえば。どうぞ、騎士様をご招待するようなところではございませんが、それでもよろしかったら、ご一緒に」
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