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始まり〜シイ村
その食事は魔素
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空が白んできた頃に、魔物除けの結界を張って、魔物も魔獣も動物も虫も侵入できないように広場全体を囲った。
折角の和の席だ。
靴を脱いで寛いでもらいたい。
動き出した私たちを見ている見張り番の冒険者達。
見て驚くがいい!
地面から30センチほど高くした台の上に畳を敷き詰める。
およそ30畳。
馬車の方の彼らも一緒に寛げるかな。
天気は良さそうだし、雨が降ってきてもその時に屋根を作ろう。
高さは30センチだからステップは要らないね。
どこからでも靴を脱いでお上がりくださいませ。
私たちはひと足お先に畳にあがる。
エンは昔、遠い東の国で畳に触れたことがあり、懐かしい匂いだと思い出していた。
「座布団がいい?腰掛けのようなクッションがいいかな?」
「座布団だ」
エンは座布団も覚えてるのか。
記憶力がすごい。
「じゃ、座布団ね」
目出たい朱色の生地に金糸で麒麟の刺繍をいれてやった。
ふたつは私たちのお尻に敷いて、他は数カ所に座布団の山を作った。
見張り番の冒険者達が口をあんぐりと開けていた。
結界を張ってあるから大丈夫だけど、彼らには伝えていない。
警戒を怠って大丈夫かな?
喧騒の前の静けさが好きだ。
陽が昇るにつれて周囲の生き物が起き出して騒がしくなる。
段々と音が増えてくるんだ。
鳥の鳴き声、動き出す小動物。
ザワザワする樹々。
しばらく異世界の朝を堪能していた。
ソーマは意外と早起きなようで、朝の支度を済ませてテントから出てきて速攻驚いていた。
「おはよう!これはシイが?魔法で?」
「おはよう。そうだよ。いつでも朝食も出せるよ」
「ああ、懐かしい畳の匂いだ。ありがたい。
顔を洗ってくるから、その後で朝食を頼むよ」
「はーい!」
水筒とタオルを持っていたのはテントの外で顔を洗うためだったようで、ニコニコとテントの裏へ入っていった。
「おはよう、シイ。これはなんだい?」
アレンがやってきた。
「おはよう、アレン。遠い東の国にある畳だよ。
ソーマに朝食をここでご馳走しようと思って」
「ああ、昨日はとても仲良くなってたな」
「うん! ねえ、馬車の皆さんもご一緒にどう?
広場に結界を張ったから護衛の皆さんも。
私の料理を食べても食べなくても、どうぞ畳におあがりくださいな。
あ、ごめん、自分の食事はちゃんと用意して!
悪いんだけど、私の料理は味見程度で。
私の料理は魔素だから栄養ないのよ」
「おお、ありがたい!みんな興味津々なんだ。すぐに伝えてくるよ。
……料理が魔素ってなんだ?」
アレンは首を傾げながら走って戻っていった。
朝から走るって、元気だなぁ
私たちとソーマ、冒険者バーティ5人、馬車の商人3人。
全部で11人。
等間隔に四角くお膳と座布団を並べた。
お膳の上には昨日聞いといたメニュー。
肉厚のアジ、キノコが入った味噌汁、お新香、たくあん、梅干し、魚沼産コシヒカリ、みかん。
緑茶も。
美味しそうだし、味もあるけど、魔法で作った?顕現させた料理は魔素で出来ている。
私とエンは栄養要らないから困らないけど、人間の体では魔力補給にはなるけど栄養不足になっちゃうよ。
その後すぐにソーマがやってきて私たちの隣りに座った。
馬車の人たちもお誘いしたことを伝えて、みんな揃ってからいただくこととなった。
彼らを待っている間に緑茶を振る舞った。
しみじみと味わって飲んでいる。
緑茶好きの典型的な日本人かな。
「シイ達の飲み物は?」
ソーマだけがお茶を啜っていることを気にしたのか聞いてきた。
「緑茶とコーヒーは体に合わなくてね。
この体なら合わないってことはないんだけど、忌避しているものはそう易々と口には出来ないよね。
あ、因みに私の魔法で出した食事って、魔素だから魔力補給はできるけど、普通の栄養補給ができないんだった。
昨日説明するの忘れてたよ、ごめん。
あ、エンはお茶飲む?」
「我はシイと同じタイミングで構わん」
そう言ってくれるエンのことが好きだ。
私たちは微笑み合った。
朝の早い冒険者達が自分の食事を持ってパラパラとやってき始めた。
口々に礼を述べていく。
「やあ、おはよう!あなたがシイ?俺はライ。今朝はお誘いありがとう。美味そうだ」
パーティメンバーのひとり、他と比べて少し小柄な遠距離タイプが配膳にやってきた。
爽やか系イケメンだ。
小柄といっても彼らの体はみんなめちゃくちゃデカいから、他と比べると小さいけれど、多分女性と比べたらライも大きい。
筋肉ムキムキだよ。
ロン毛のイケメン。
モテるだろうなー
「おはよう。どうぞ。
ね、ね、お願いがあるんだけど、いいかな?
一食分、朝食をわけてもらえない?
こちらからはそこに並べてある食事、魔力補給のできる食事を提供させてもらうよ」
「ああ、もちろんお安い御用だよ。
魔力補給のできる食事って初めて聞た。
いや、魔力補給のできるポーションや食材は存在するけど、食事っていうのは初めてだよ」
ライがメンバーの食器と食事をこちらに持ってきてくれたので、こちらの方へお願いしますと、ソーマの前の御膳の隙間に器を新しく出した。
朝だからか、腹にたまりそうなトロトロの白いスープ。
具材もかなり入っているみたい。
それと堅パンを置いていった。
「ありがとう、なんだか悪いな」
「ソーマ、等価交換だ。気にすることはない。
素直に喜べ」
ライに向かってぺこぺこする日本人に対して現実を言った。
ソーマは私に情報を提供した。
私は彼らに珍しいものを提供した。
その見返りに一人分の食事をもらっただけのこと。
ライは他の人の配膳のために私たちから離れる際に、等価ではないな、うちら貰いすぎだって呟いていたけどね。
「それで、シイの食事が魔素ってどういうこと?」
折角の和の席だ。
靴を脱いで寛いでもらいたい。
動き出した私たちを見ている見張り番の冒険者達。
見て驚くがいい!
地面から30センチほど高くした台の上に畳を敷き詰める。
およそ30畳。
馬車の方の彼らも一緒に寛げるかな。
天気は良さそうだし、雨が降ってきてもその時に屋根を作ろう。
高さは30センチだからステップは要らないね。
どこからでも靴を脱いでお上がりくださいませ。
私たちはひと足お先に畳にあがる。
エンは昔、遠い東の国で畳に触れたことがあり、懐かしい匂いだと思い出していた。
「座布団がいい?腰掛けのようなクッションがいいかな?」
「座布団だ」
エンは座布団も覚えてるのか。
記憶力がすごい。
「じゃ、座布団ね」
目出たい朱色の生地に金糸で麒麟の刺繍をいれてやった。
ふたつは私たちのお尻に敷いて、他は数カ所に座布団の山を作った。
見張り番の冒険者達が口をあんぐりと開けていた。
結界を張ってあるから大丈夫だけど、彼らには伝えていない。
警戒を怠って大丈夫かな?
喧騒の前の静けさが好きだ。
陽が昇るにつれて周囲の生き物が起き出して騒がしくなる。
段々と音が増えてくるんだ。
鳥の鳴き声、動き出す小動物。
ザワザワする樹々。
しばらく異世界の朝を堪能していた。
ソーマは意外と早起きなようで、朝の支度を済ませてテントから出てきて速攻驚いていた。
「おはよう!これはシイが?魔法で?」
「おはよう。そうだよ。いつでも朝食も出せるよ」
「ああ、懐かしい畳の匂いだ。ありがたい。
顔を洗ってくるから、その後で朝食を頼むよ」
「はーい!」
水筒とタオルを持っていたのはテントの外で顔を洗うためだったようで、ニコニコとテントの裏へ入っていった。
「おはよう、シイ。これはなんだい?」
アレンがやってきた。
「おはよう、アレン。遠い東の国にある畳だよ。
ソーマに朝食をここでご馳走しようと思って」
「ああ、昨日はとても仲良くなってたな」
「うん! ねえ、馬車の皆さんもご一緒にどう?
広場に結界を張ったから護衛の皆さんも。
私の料理を食べても食べなくても、どうぞ畳におあがりくださいな。
あ、ごめん、自分の食事はちゃんと用意して!
悪いんだけど、私の料理は味見程度で。
私の料理は魔素だから栄養ないのよ」
「おお、ありがたい!みんな興味津々なんだ。すぐに伝えてくるよ。
……料理が魔素ってなんだ?」
アレンは首を傾げながら走って戻っていった。
朝から走るって、元気だなぁ
私たちとソーマ、冒険者バーティ5人、馬車の商人3人。
全部で11人。
等間隔に四角くお膳と座布団を並べた。
お膳の上には昨日聞いといたメニュー。
肉厚のアジ、キノコが入った味噌汁、お新香、たくあん、梅干し、魚沼産コシヒカリ、みかん。
緑茶も。
美味しそうだし、味もあるけど、魔法で作った?顕現させた料理は魔素で出来ている。
私とエンは栄養要らないから困らないけど、人間の体では魔力補給にはなるけど栄養不足になっちゃうよ。
その後すぐにソーマがやってきて私たちの隣りに座った。
馬車の人たちもお誘いしたことを伝えて、みんな揃ってからいただくこととなった。
彼らを待っている間に緑茶を振る舞った。
しみじみと味わって飲んでいる。
緑茶好きの典型的な日本人かな。
「シイ達の飲み物は?」
ソーマだけがお茶を啜っていることを気にしたのか聞いてきた。
「緑茶とコーヒーは体に合わなくてね。
この体なら合わないってことはないんだけど、忌避しているものはそう易々と口には出来ないよね。
あ、因みに私の魔法で出した食事って、魔素だから魔力補給はできるけど、普通の栄養補給ができないんだった。
昨日説明するの忘れてたよ、ごめん。
あ、エンはお茶飲む?」
「我はシイと同じタイミングで構わん」
そう言ってくれるエンのことが好きだ。
私たちは微笑み合った。
朝の早い冒険者達が自分の食事を持ってパラパラとやってき始めた。
口々に礼を述べていく。
「やあ、おはよう!あなたがシイ?俺はライ。今朝はお誘いありがとう。美味そうだ」
パーティメンバーのひとり、他と比べて少し小柄な遠距離タイプが配膳にやってきた。
爽やか系イケメンだ。
小柄といっても彼らの体はみんなめちゃくちゃデカいから、他と比べると小さいけれど、多分女性と比べたらライも大きい。
筋肉ムキムキだよ。
ロン毛のイケメン。
モテるだろうなー
「おはよう。どうぞ。
ね、ね、お願いがあるんだけど、いいかな?
一食分、朝食をわけてもらえない?
こちらからはそこに並べてある食事、魔力補給のできる食事を提供させてもらうよ」
「ああ、もちろんお安い御用だよ。
魔力補給のできる食事って初めて聞た。
いや、魔力補給のできるポーションや食材は存在するけど、食事っていうのは初めてだよ」
ライがメンバーの食器と食事をこちらに持ってきてくれたので、こちらの方へお願いしますと、ソーマの前の御膳の隙間に器を新しく出した。
朝だからか、腹にたまりそうなトロトロの白いスープ。
具材もかなり入っているみたい。
それと堅パンを置いていった。
「ありがとう、なんだか悪いな」
「ソーマ、等価交換だ。気にすることはない。
素直に喜べ」
ライに向かってぺこぺこする日本人に対して現実を言った。
ソーマは私に情報を提供した。
私は彼らに珍しいものを提供した。
その見返りに一人分の食事をもらっただけのこと。
ライは他の人の配膳のために私たちから離れる際に、等価ではないな、うちら貰いすぎだって呟いていたけどね。
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