5 / 11
ルール、忘れてはいけないこと
しおりを挟む
みなさん、みなさんのご紹介はここまで、ということにしましょう。背が高いとかお美しいとか、制服、虫とり網、大きなお目目。少し余計なお話もしてしまいました。そのへんはどうかお許しを。
さて、これよりみなさまが、町に入った後の大切な決まり事をお話しします。とても大事なお約束事です。忘れるようなことがありませんよう、しっかりとみなさんの心に、私の言葉を残しておいてください。簡単に覚えることができますよ。たった一つに決まりを心に刻んでいただければいいのですから。一つのルールを守ってくださればいいのです。
一 町の中で願い事をする時は、目を閉じて心の中で願うこと。そして願い事をしたら、十秒間は目を閉じていなければならない。
願い事は百%叶います。例えば「水が飲みたい」と願えば十秒後には、目の前には、水の入ったコップが現れます。ただ十秒間だけ目を閉じていてください。八秒でも九秒でもそれはいけません。十秒ですよ。お間違いのないように。一つ二つと間違えないよう数えてください。
簡単でしょう。難しいことは一つもない。
私の声もここまでとなります。みなさんが町に入った瞬間、私の声は聞こえなくなります。次にみなさんが私の声と出会うのは、みなさんのこの町での滞在が終わり、この町を出た後となります。
私も話してばかりだと疲れるのです。どうかお休みを頂けますようお願いします。
私の声が聞こえなくなると寂しいとか、ははは。そんな風に思っていただけたなら、私はとてもうれしい。みなさんをこの町に招待したかいがあるというものです。
さぁ、みなさん、町にお入りください。
町に入られますと、入って右手に小鳥の巣箱のような赤いボックスがございます。その中に町の簡単な地図があります。町の入り口に掲げられているものと同じものです。まぁ、みなさんが迷子になることはないでしょう。だから地図なんて必要ないかもしれまんが、ルールと同じくらいこの地図を確認しておいてください。これは大切なことですよ。私はちゃんと言いましたからね。よろしいですか?
声のアドバイス。
一つ 入り口の看板の地図をしっかり確認してから町にお入りなさい。
二つ 町に入った後は町の地図を赤いボックスからお取りなさい。
それではみなさん、この町をたっぷり楽しんできてください。
四人と一匹は町に入った。
彼ら誰かの顔を見ることのなく、誰かに話しかけることもなかった。とても静かに、引かれているレールの上を滑るようにして彼らは歩いた。町の境界線には思考を遮断する透明なカーテンが張られていたのか、四人と一匹の頭の中に一瞬空白が広がった。
声がどこからか、長い手を伸ばして彼らの手を引いていたのかもしれない。その手は四人と一匹の手を離さない。今来た道を振り返ることすら、その手は許さない。宇宙に放り出され、闇に支配されてしまった冷たい心がその手には宿っていた。四人と一匹を掴んだ見えない手に力が入る。「……」と声が言う。その声は四人と一匹には届かない。
彼らは、声が注意した町の入り口に掲示されている地図の看板を確認しなかった。ボックスに入っている地図も取らなかった。
「ふふふ」そんな不気味な笑い声を四人と一匹は聞いたような気がした。彼らの頭からその笑い声はすぐに消えた。
さて、これよりみなさまが、町に入った後の大切な決まり事をお話しします。とても大事なお約束事です。忘れるようなことがありませんよう、しっかりとみなさんの心に、私の言葉を残しておいてください。簡単に覚えることができますよ。たった一つに決まりを心に刻んでいただければいいのですから。一つのルールを守ってくださればいいのです。
一 町の中で願い事をする時は、目を閉じて心の中で願うこと。そして願い事をしたら、十秒間は目を閉じていなければならない。
願い事は百%叶います。例えば「水が飲みたい」と願えば十秒後には、目の前には、水の入ったコップが現れます。ただ十秒間だけ目を閉じていてください。八秒でも九秒でもそれはいけません。十秒ですよ。お間違いのないように。一つ二つと間違えないよう数えてください。
簡単でしょう。難しいことは一つもない。
私の声もここまでとなります。みなさんが町に入った瞬間、私の声は聞こえなくなります。次にみなさんが私の声と出会うのは、みなさんのこの町での滞在が終わり、この町を出た後となります。
私も話してばかりだと疲れるのです。どうかお休みを頂けますようお願いします。
私の声が聞こえなくなると寂しいとか、ははは。そんな風に思っていただけたなら、私はとてもうれしい。みなさんをこの町に招待したかいがあるというものです。
さぁ、みなさん、町にお入りください。
町に入られますと、入って右手に小鳥の巣箱のような赤いボックスがございます。その中に町の簡単な地図があります。町の入り口に掲げられているものと同じものです。まぁ、みなさんが迷子になることはないでしょう。だから地図なんて必要ないかもしれまんが、ルールと同じくらいこの地図を確認しておいてください。これは大切なことですよ。私はちゃんと言いましたからね。よろしいですか?
声のアドバイス。
一つ 入り口の看板の地図をしっかり確認してから町にお入りなさい。
二つ 町に入った後は町の地図を赤いボックスからお取りなさい。
それではみなさん、この町をたっぷり楽しんできてください。
四人と一匹は町に入った。
彼ら誰かの顔を見ることのなく、誰かに話しかけることもなかった。とても静かに、引かれているレールの上を滑るようにして彼らは歩いた。町の境界線には思考を遮断する透明なカーテンが張られていたのか、四人と一匹の頭の中に一瞬空白が広がった。
声がどこからか、長い手を伸ばして彼らの手を引いていたのかもしれない。その手は四人と一匹の手を離さない。今来た道を振り返ることすら、その手は許さない。宇宙に放り出され、闇に支配されてしまった冷たい心がその手には宿っていた。四人と一匹を掴んだ見えない手に力が入る。「……」と声が言う。その声は四人と一匹には届かない。
彼らは、声が注意した町の入り口に掲示されている地図の看板を確認しなかった。ボックスに入っている地図も取らなかった。
「ふふふ」そんな不気味な笑い声を四人と一匹は聞いたような気がした。彼らの頭からその笑い声はすぐに消えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる