異世界見聞録【BL】

佐々木猫八

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最初の人

7上層に住む商人

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翌朝

「さて、商談相手の家へ行くか」
「商談相手は何処にいるんだ?」
ラフィは天井を指差した。
「ん、屋上??」
「違う違う、上層に住む同業者の商人さ。なかなかのやり手でね、商人歴が長いだけあって交渉が難しい。だけど、今日はコウキが居るからね。多分楽勝だよ」
コウキはラフィ言い分が腑に落ちないと顔に書いた。
「彼は美人に弱いから」
ますます分からないと首を傾げる。
「まあ、見学していればわかるかな。さあ行こうか」
宿の入口を出ると馬車が待っていた。
「これに乗って行くよ」
2人は馬車に乗り込むと直ぐに出発した。
窓から街並みが見える。
「結構人が住んでいるんだな」
「この岩山はまだまだ採掘出来る資源が眠っているからね。炭坑の労働者やそういう輩目当ての商売人やその家族が集まっている。一つの都市としてちゃんと機能しているのさ」
人々が生活を営んでいるのが見える。
異世界でもさほど変わりない風景になんだか少しほっとする。
じっと外見つめる俺にラフィが声をかける。
「何か思い出したのかコウキ?」
「いいや、何も」
左右に首を振る。
「そろそろ転移方陣だよ。これは珍しいから良く見ておくといい。ほらあれだ」
ラフィが指差した方を見ると、複雑な模様が青白く光っていた。
「あれに乗って転移するんだ」
いかにもファンタジーなものにテンションが上がる。
馬車は誘導員の指示に従って魔法陣の上に乗る。
すると魔法陣がひかり、馬車全体を包みこんでいく。
窓から見える光景は、とても幻想的で異世界感たっぷりだった。
しかしそれも一瞬で、ひかりはずぐに収まった。
「もう上層に着いたの?」
「ああ、そうだよ」
馬車が魔法陣から降りると、コウキは窓の外を見た。
先程の風景とは違い、建っている家は屋敷と呼べるような豪邸が多い。
裕福だと言わんばかりの建ち並びだ。
「魔法陣は馬車でないと行き来できない。馬車を借りるか、もしくは所持するかしないとここには来られないんだ。借りられる資金があるか、または持って維持できる資産があるかが分かれ目かな。馬車が上層のステータスシンボルなんだよ」
馬車を走らせること10分程度だったと思う。
ある豪邸に馬車が止まる。
「着いたな、さてコウキ準備はいいかな?」
「うん、大丈夫」
2人は馬車から降りると、屋敷の戸を叩いた。
すると直ぐに歳を召した男性が現れる。
「ようこそおいで下さいましたコールマン・ラフィ様。お待ちしておりました。お連れ様もようこそ。主人の部屋へご案内いたします、どうぞこちらへ」
そう言うと男性はゆったりと幅のある廊下を進み始めた。
ラフィもコウキも黙ってその後に続く。
少し歩き、ある綺羅びやかな扉の前で立ち止まる。
「主人は既にお待ちでございます。どうぞごゆるりと」
「案内感謝する」
「出会いの神に祈りを」
ラフィは扉をノックして入室の答えを聞くと、扉を開けた。

「ようこそコールマン殿。商売の神ガイナスと出会いの神ルルスに感謝を。一人旅のお好きな貴殿が連れを伴うのは珍しいですな。お連れ様の名前を聞いても?」
コウキはラフィを見る。
ラフィは軽く頷く。
「ミヤマ・コウキと申します。出会いの神ルルスに感謝を」
「コウキ殿と申しますか、美しいお方にお会いできて私は幸運ですな。私はセゾン・ヤールですじゃ。幸運の神メトシアと出会いの神ルルスに感謝を」
そう言ってにこりと笑う。
くしゃりとシワを作る笑顔は一見優しそうな普通の老人に見える。
「さて、私は長話は苦手でね。早速本題に入りましょうかな。書簡で先触れを頂いておりましたがね、なぜ貴殿は私の管理する鉄鉱石の採掘分1割を買い上げたいのですかな?」
ヤールは本題に入ると先ほどとは打って変わって眼光の鋭い眼差しでラフィを見た。
空気もどこかピリリと緊張しているように感じる。
「防衛力強化の為、防具などの武具の一斉補修が近々行われます。そこで国に高く売りつけて是非儲けたいのですよ」
「ほほう、一斉補修ですかな⋯それはいつ頃かお分かりで?」
「ええ、ほぼ分かっています」
「つまりは1割を渡せ後は私が独占しても良いと?」
「私の手持ちの輸送手段ではそれが限界ですからね。それ以上は望みません。過ぎたるものは身を滅ぼしますからね’」
「なるほど、懸命ですな」
そう言って2人は握手を交わした。
どうやら交渉は成立したようだ。
緊迫した空気が一気に和らぐ。
コウキは空気が和らいだのを感じてそっと息を吐いた。
するとヤールに声を掛けられる。
「どうだったですかなコウキ殿。爺はカッコ良かったですかな?」
「あ、はい、とても威厳のある対応で素敵でした」
思ったことを正直に告げると、ヤールは嬉しそうに笑った。
「ワシもまだまだ現役で行けそうですな!」
ラフィも苦笑して和やかな雰囲気となり、交渉は終わりとなった。
別れの挨拶を交わし、そして屋敷を後にしたラフィとコウキは、再び馬車に乗って宿へと戻ってきた。

「何もしてないのに疲れたよ
ー」
そう言ってコウキはソファに寝転んだ。
「いやいや、コウキは大活躍だったよ!あの爺さん最後上機嫌だっただろう?後腐れ無く交渉できたのもコウキの受け答えが良かったからさ」
「そうかなぁ⋯」
コウキにはそれで何が違うのか良くわからない。
「あれなら後々揉める事もなさそうだしね。中には後から条件を変えてくる奴もいるんだ。あの交渉の場でコウキにカッコつけた手前、ヤールは交渉通りの条件で対応してくれるんだよ」
「そうなんだ⋯」
日本のビジネスの契約とはえらい違いだ。
日本なら口約束でなく書面での契約が程んどだから、条件が後から機嫌でコロコロ変わることもない。
「一休みしたら、昼食を食べに行こう。屋台を巡ったら昨日の買い物の続きだ」
屋台!異世界の屋台楽しみすぎる!!
コウキは屋台と聞いて少し元気が出てきた。
今はとっても肉にかぶり付きたい気分だ。
串焼きとかあるかなぁ?
果物とかも食べてみたい。
おっとヨダレが、危ない危ない⋯
先程までは緊張で感じなかった空腹が、気の緩みからかお腹が空いてきてくぅーっと小さく鳴った。
き、聞かれたかな?
ラフィを見て視線が合うと、にこりと微笑まれた。
「昼食を食べに行こうかコウキ」
コウキは素直に頷いた。
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