魔法使い君の日常

佐々木猫八

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故郷とは

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カジノの街を出発した勇者一行はある馬車の護衛をしていた。

「まさかあの勇者御一行様に守って貰えるなんて、俺達村に帰ったら自慢します!!」

馬車に乗る1人の青年が頬を紅葉させながら興奮して言う。
勇者は満更でもなさそうで、ちょっと胸を張ってふんぞり返っていた。
それを魔法使いが見て、無かった。
魔法使いはぼんやりと外の景色を見ていた。
この辺りは穀倉地帯なのであたり一面麦穂が風に揺れて黄金の波を生み出していた。
この時期にしか見られない絶景だと聞いて魔法使いは良い時期にこれたなと思っていた。
今護衛をしている彼らはなんと元冒険者で、あまりに向かなかったので辞めて生まれ故郷に帰って農業の手伝いや酪農の手伝いをするんだそうだ。

「どうした魔法使い?疲れたか?」
「いや、ただ故郷があっていいなって」

盛り上がる勇者たちを尻目に剣士と魔法使いは小声で話す。

「いや、俺の故郷は師匠の居る場所かな」
「そうか⋯」

追求せずにただ一緒にいてくれる剣士に感謝しながら、その優しさにより掛かる。
ぼんやりと景色を見ていたら剣士が不思議な事を言い始めた。

「その故郷の話、今度勇者にも話してみろよ」
「え⋯」

何か企みがあるのか、剣士は口元をにやりと歪ませそれ以上は何も言って来なかった。

それから馬車に魔物が何度か襲ってきたが、勇者一行の相手にはならず、さくさくと旅路は進んだ。

「あっ!あれが私達の村です!全然変わってないっ!」

盛り上がる元冒険者たちの目は少し潤んでいるように見えた。
村に入るとワラワラと村人達が集まってきた。
再開を喜ぶものもいれば、途中で返ってくるなんてと怒る者もいた。
けれどその目は一様に優しかった。
そして勇者一行だと紹介すると村人は今日は盛大にもてなすと言って大騒ぎになった。
夜になるまで村を案内してもらったり、子どもたちに強請られるまま魔法使いが魔法を披露してみたりと時間はあっという間に過ぎた。

そして夜、火を囲んで宴会が行われた。
特産品のモー牛を使った料理などが振る舞われ味にうるさいような賢者も満足していた。
宴会のたけなわを過ぎ、村長の長い若かりし頃の冒険譚を聞き終えると宴会は終わりを迎えた。

深夜、静かになった村の端で魔法使いは1人ぼんやりしていた。
そこへ後ろから近づく気配を感じて振り返る。
居たのは勇者だった。

「眠れないなら添い寝をーーー」
「結構です」
「⋯⋯⋯」

即答すると勇者が若干しょげていた。
そう言えばと、昼間の馬車で剣士が言った事を思い出す。

「勇者の故郷ってどこだ?」

その質問にびっくりした顔になる勇者。
そして微笑みながら言った。

「この大地だよ」

そう言うと勇者は宿へと戻って言った。
その答えに、案外勇者はちゃんと勇者なのかもしれない、と魔法使いは思った。
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