異世界転生(仮タイトル)

きこり

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第45話「セラフィア・パウリ」

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9月10日模擬戦当日。エディ達は城壁の門が開けられるのを待っていた。
日の出前に転移し、ポルの馬車に軽量化を施したので一番で到着した。


およそ午前5時。門が開かれる

「身分証と荷物の検査をさせていただきます」

門兵にそう言われ調べられる。魔法バッグの場合は手を突っ込んで確認するだけだった。
商人でもなく剣士も居ないので荷物が少なく、問題は無かった。


そう、荷物は


「これは?」

「ねこです」

4人の門兵がジト目で見てくる

「タイガーっぽい見た目だな」

「ねこです」

「大きさは確かに猫なんだが・・」

運良く『シロ』は寝ていた

「こんな模様のねこです」

「縞模様も居るにはいるが・・黄色ってあったか?」

「タイガー以外では初めて見るな」

「たいがーみたいなねこです」

「「「「・・・」」」」

怖そうな人がため息をつく

「まあ構わないが、この猫はきちんと繋いでおけよ」

一応たすき掛けにロープを付けていた

「ありがとう」

(気づかれてたかな?見逃してくれたみたいだ)

実際見逃したのである。同行者にジェフリー医師が居たので、門兵は大事にしなかったのだ

ーーーーー

半刻(約1時間)かけて二つ目の門に着く。
ここでは荷物の検査が無かったので、あっさり街に入った

「ひろい!でかい!すごい!」

「エディ君は初めてだったかな?」

「うん!」

大都会だ。農地ばかりだなと思って2つ目の門をくぐると、雰囲気がガラリと変わった

道路はとても広く、道沿いに10階建てぐらいのビルが立ち並んでいる。
宿屋もビルだ。いや、もうビジネスホテルそのまんまだ。
大通りの交差点はロータリーみたいな作りで噴水があり、そこを中心に公園の様になっていた。

ビルの裏には停車場や工場の様な物があり、排水路が通る。
その先は民家があって細い道が縦横無尽に張り巡らされていた。
そしてまた排水路、工場、ビル、道路と規則正しく作られていた。

まだ早朝で人も少ないので、馬車は順調に進む

「どうですか?エディ君?」

とジェフリーさん

「うん。だいとかいだね」

「そうだね。世界を見回してもこのような建物が並んでる場所は、この王都だけですよ」

ロバルデューの街にもビルはあるが、建ち並ぶと言う程では無い。

「おしろはどこなの?」

「この先に少し見えてる建物ですよ」

「窓越しに前を見る。御者をしてるロランの先に、薄っすらと見える物がある」

(え?都庁?低いけど)

20階建てのビルに2本のタワーが付いている。都庁の上部分だけを切り取って置いた様な作りだ。
周りにも20階ほどの建物が並んでいる

(なんか東京っぽいな)

そして冒険者ギルドの看板が掲げられた建物の前に着いた

(冒険者ギルド?どっかの建設会社じゃないの?)

「ポルを預ける場所聞くけど、エディも行く?」

とロラン

「ばしゃ行かないの?」

「上流地区や行政区は、一般の馬車はダメなのよ」

「ぎょうせいく?」

ジェフリーさんも教えてくれる

「王都は6つの都市が繋がっているんだ。行政区は旧城下町。国の施設が集中してるとこだよ」

「へえ」

「その手前が上流地区。それなりの身分の者が住んでるんだ」

(おそらくジェフリーさんもそこなんだろうな)

「その周りを6つの都市で囲んでるんだよ」

「へー」

(確かに。王城はまだまだ遠い)

「どうする?」

と、ロラン

「うん。みる」

「コールは?」

「・・じゃあ・・後学の為に・」

透明のドアの前に立つと、ドアが開く

(自動ドア?)

重さを感知して開く自動ドアが使われていた

(すごい奇麗だ。やっぱどこかの建設会社だな)

受付にはお洒落をした美人さんが6人。ロランが話しかけている

「すごいねー」

とコール

「こーる、ローブ脱いじゃえば?」

「ま・・まだ勇気が・・」

(うーむ・・脱がしてやろう)

ポルは冒険者の馬なので、ギルドで預かって貰える事になった。
1日40銅と結構高い。日給の場合の最低賃金が50銅である。

裏に追い運動場があり、ロランとジェフリーさんはそこへ行く。俺とコールは表で行政区行きの馬車を探す。
入館許可書があるので乗れるそうだ。


「え、エディ君!ちょっと、やめて」

俺はローブを脱がそうとする。ちなみに通行人が足を止めている

「せっかく買ったし」

思いっきり脱がそうとするが、背が低いので途中までしかめくれない。
前世ならアウトだが、今は3歳なのでセーフだ

「わかった!ローブ脱ぐから!」

そしてローブを脱いだ

「「「おお~~」」」

歓声が上がる

(絶対領域が眩しい)

ピンクのミニワンピの上に紺色の長袖ベストを着ている。
黒のショートパンツが若干見えていた。
黒とピンクのハイソックス。肌は日焼けも無く真っ白だ。

「こーる、きれいだよ」

「あ、ありがと」


ーーーーー


「ヒュゥ~」

馬車を探すと後ろから口笛が聞こえる

「お嬢さんいい脚してるじゃねーか」

「これから遊びに行かね?」

「ぐへへ」

(おお!お約束の展開だ)

柄の悪い3人が寄ってくる。コールの手を掴もうとしたので、俺が間に入る

「おじさん、ろりこんなの?」

「誰がおじさんだ!俺は19だ」

(どう見ても40ですよ)

再びコールを掴もうとしたので魔法陣を出し、おじさんの腹に当てる。
詠唱を書こうと思ったら、無詠唱で発動した

パアン!

空砲が破裂し、おじさんは仰け反る

「何しやがった?」

(無詠唱で出来ちゃったよ)

※できる理由がありますが、もう少し先の話です

おじさんは俺を睨む。他の二人はコールの絶対領域に目を奪われている。

平手打ちが来た
俺は魔法の盾を出す

バン!

よろけたが防げた

(耐えれた。軽量化を複合したのは正解だったな)

※エルが魔法剣を振れる理由である。
軽く良く切れる素材だと、使用できる時間が短くなってしまった。
軽量化が一番マシだった。軽量化自体は補助魔法であり、エルでも1日使える。

おじさんは手を抑える。普通に鉄の盾に平手打ちした衝撃を受けた

(次はどうくる?)

他の二人はコールの足を見てニヤニヤしてるが、このおじさんは焦っている

「「「!?」」」

おじさんは剣を抜いた。他の二人もコールも驚く

(それならファイアーボールで・・)


魔法陣を出したら声がかかった

「ちょっとおじさん。何子供をいじめてるの?」

コールと同じか少し年上の少女が、おじさんの後ろに立っていた

「んだてめえ!」

おじさんが剣を振り下ろす。少女はあっという間に懐に飛び込み、振り下ろされた腕を掴んで一本背負いを決める

「ぐへっ」

そして魔法陣を出して、他の二人をけん制する

「ヤるなら相手になるよ?」

「「・・・」」

二人はのびたおじさんを連れて去って行く。周りから拍手が起こった

「大丈夫?」

「うん、ありがとう」

「でも私が居なくても大丈夫だったかな?」

「え?」

「あのおじさんが剣を抜いたから割って入ったけど・・反撃出来たんじゃない?」

(まあ、そうなのだが・・)

「あのおじさん、19歳だって」

「・・・」

少女は遠い目をしていた

「えっと・・なにかおれい・」

「要らないよ」

(名前聞いておくのが礼儀だったな)

「えーと、おなまえ?」

「冒険者のセラよ。じゃあね」

そう言って手を振りながら去って行く。
そしたらロランが来た

「エディ、カッコよかったよ」

「え?」

「助けようと思ったら、エディが戦いだしたから」

コールを見る

「エディ君素敵だったよ」

(照れるなあ)


ーーーーー


行政区まで行く馬車に乗って領事館に向かう。王都内を走る乗合馬車だ。
ロランと会話する

「おうとも悪い人いるんだね」

「あれは他の国の冒険者でしょ」

「この国の言葉はなしてたよ?」

「この国で銅板になれなくて、他の国に行って冒険者になったんでしょ」

「どうして?」

「素行不良の冒険者だからよ。他の国は人格を無視してる貴族が多いから」

「へー」

(利用するためか)

「鉄板すら取り消されて、他の国に行く者も居るわ」

「そうなんだ」

(そう言えばロランもドク爺に審査されてたな・・)

「ロバルデュー前です」

と御者さん。お金を払って降りる

(どっかの省庁だな)

受付に行き、入館許可書を見せる。ジェフリーさんが居るので疑われる事は無かった

「それじゃ私はバクストンの方に行きます」

「ありがとう」

ジェフリーさんはバクストンの領事館に向かった。王都にあった家はもう売ってしまったらしい。
受付の人がロバートさんを呼んでくる。

「ろばーとさん」

「ようこそおいでくださいました、エディ坊ちゃん」

「まにあった?」

「ええ。あと30分ほどで出発です」

「よかった」

そしたら姉ちゃんとロレインも来た

(え?)

姉ちゃんが手を繋いでロレインを引っ張っている

「エディ!」

そう言ってハグされる

「ええっと?」

「何もなかった?」

「うん」

(あったけど・・え?)

左手の薬指に指輪が光っていた

「・・・」

「うん?あ、これ?」

「うん」

「王都に居る間はした方が良いって・・」

そう言いながら頬を染める

「・・・」

「模擬戦の後にどうなるか分からないから、エル自身を守る為だよ」

とロレイン。ロレインも同じ指輪を付けていた。
エディはロレインを睨みつけて、指を突き付ける

「ろれいん、しょうぶ!」

簡単に姉ちゃんはあげない

「うん?何するの?」

「・・・」

ロレインの訓練を思い出す。ロレインは強い

「えっと、りばーし」

「いいよ。夜でいい?」

「うん」

※リバーシは単純なルールな為、改良する事が出来ずにそのまま残っている

「とりあえずお母さんに会っておこう」

(ああそうだ。世話になるんだった)

「あれ?こーる?」

コールはロビーの隅で椅子に座り、小さくなっていた

「こーる、いくよー」

「あ、はい」

「「!?」」

ロレインとエルは驚く

「コール、かわいい」

と、姉ちゃん

「えへへ・」

コールは照れながらついてきた


ーーーーー


応接室でロレインの母親に会う

「ようこそ。私はイサベルよ。あなたがエディ君ね」

「うん」

(カッコいいな)

「ロランさんお久しぶり」

「久しぶりです」

「えーっと、あたなは・」

「は、はい。コールと言います。領主様に研究用の素材集めで契約させて頂いてます」

「あなたがそうなのね。結構お洒落さんなのね?」

「この服は・・エディ君が・」

「うん?エディ君の趣味なの?」

(趣味ですが変態じゃないですよ?)

「うん。ねえちゃんのも持ってきた」

「あら?それじゃあエルさん、着てくれる?」

(説得する手間が省けた)

そしてエルも着替えた。薄いピンクのシャツに黒の2段フリルのミニスカ。そしてピンクのショートパンツ。
恥ずかしいのか、黒の半そでベストも着ていた

「エルさん可愛い!」

「ねえちゃんにあう」

「エル、かわいいよ」

コールは仲間が出来た様で嬉しそうだ

「・・・」

ロレインは赤くなり、目のやり場に困っていた。この世界の女性は、あまり生足を見せない。特に太もも。
ミニスカはショートパンツが見えるぐらい短いので、太ももから奇麗な足が見える。
靴下は用意してなかったので、灰色の短い靴下を履いていた。

「は、恥ずかしい・・」

と姉ちゃん

「すぐ慣れるよ?」

とコール

(なんかコールの顔が清々しい)

「そろそろ時間ですよ」

とロバートさん

「それじゃあ、行きましょう」

イサベル様が仕切る

「いっしょにいくの?」

「当然でしょ。うちの代表が3名出るんだから」

(それもそうか)

ロバルデュー家の馬車で会場に向かう。領事館からは近かった。
上流地区と南側のレシーナ市の境にある。

会場は3か所。それぞれ格闘、魔法、剣士と別れている。
控室にロバルデューの代表が揃う

格闘は鉄板で新人のティンカーベス。17歳。愛称はベス。
コールの絶対領域にやられて赤くなっている。

魔法は鉄板のエル。小悪魔スタイルに皆ほっこり。

剣士は5年連続で代表になるフロスト。今回が最後の参加だ


「さあ!行きましょう」


イサベル様が声をかけ、それぞれの会場に向かう。

参加者は格闘に衛兵から10名。魔法は魔術師団から10名。剣士は騎士団から10名。
王都の6都市から冒険者が一人ずつ。格闘2名。魔法2名。剣士が2名。
領地代表は、格闘が合計7名。魔法は9名。剣士は8名だ

※レヴィネールの領地は王都を除いて9か所あります


総当たり戦が始まる。勝ち星の数で順位が決まる。
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