オレンジ×UMA≪ユーマ≫と交信者≪コンタクティ≫

里夢

文字の大きさ
2 / 2
プロローグ

File.2 Tigre bleu!

しおりを挟む
「ごめん勇馬、やっぱり、僕もう…勇馬に付き合いきれないよ。塾だってあるし、僕らの将来の為にも、
“不思議探し”なんて…もうやめよう?」

満天の星空は、今にも落ちてきそうなほど、近くに感じられて、芝生は何処までも、何処までもつづいている。
遠くからは、微かに鈴虫の鳴き声が聞こえていた。

「…なんで、そう思うんだよ。」

「勇馬の話は信じてるけど、みんなには馬鹿にされるし、再来年には中学受験もあるんだよ…?」


7,500平方メートルもある広い公園で、2人ぼっちで寝そべりながら、僕らは語り合ったよね。


「…別に止めやしないよ。お前は好きにやればいい。」

「…そう。…ごめん。」

「謝らなくていいよ。」

「だって…。」

「…なぁミカン。」

「何?」

「人間ってさ、地球の事、どれくらい知っていると思う?」

「?…うんーと、10分の7くらい?」

「答えは…、俺にも分からない。」

「勇馬でも?」

「うん。ただ、全人類の知識を積算しても、10分の7よりかは少ないと思うよ。」

「月に行けたんだから、もっと知ってると思ってた。」

「確かに人間は月には行ったけど、世界中の海の中の9割は未まだ、人間は見た事がないんだ。、地底のマルントルにも一度も行った事がない。」

「…ほんとに?」

「ほんとさ。
世界の陸地と海の割合は71:29だ。地球の体積と比べたら海は全体の0.7%。」









「つまり、人類は地球の事を、全っ然知らないんだ!」









その言葉を僕はこう解釈したよ。

≪世界はまだまだ、謎で満ち溢れている!だから超常は必ずある!≫

星々が、僕の視野には入りきらないほど見えていた。
世界が何処までも、何処までも広く感じられた。
そんな状況下でこんな事を言われたものだから、当時小学生だった僕にとって、君の言葉の説得力は絶大なものだったんだ。


「じゃあっ、地底人も居るのかなっ?」

「いる可能性の方が大きいからな。きっといるよ!」

「絶滅したはずの恐竜なんかも?」

「いるいるっ。」

「じゃあ…宇宙…人…も?」

「いるさっ、絶対!」

「……!!」

正直ワクワクが止まらなかった。だから僕は…君を

「友達…になれるかな?」

「え?」

「もしも、UMA達がいたら、友達になれるかな?」

「思いやりがあれば、きっとなれるよ…!」

君を信じる事にした。


ミカンさん!ミカンさん!…

ーー薄れゆく意識の中、追憶する自分を覚醒(めざめ)させ様と、必死になる者がいた。ーー

「梓ちゃん。」

微かにまぶたを開けると、パソコンの電子時計が見えた。

二十二時三分。
なんだか妙に床が冷たい。そして天戸が側にいる事が、ここが自分の家で無いことを顕示していた。

あ、あれ?なんでだっけ、なんで僕はこんな時間に家で寝ていないんだっけ?そうだ、勇馬と喧嘩したんだ。それでヤケになって、笛吹き男を探しに行って…、それで、、それ…………!!?
事態が緊急である事に気付いた猫屋敷は、慌てて腰を起こした。

(梓ちゃん!?あ、こ…声が。」

(やっと起きましたね!ミカンさん!)

天戸と猫屋敷の二人は言語でのコミュニケーションが取れない状況にあった。何故なら、二人の口はガプテープで塞がれていたからだ。両腕は縄で縛られている。

「ギャハハッ!グッドイブニング!お嬢さん方。」

猫屋敷の目の前の謎の男が、そっと顔を近づけ鋭い眼光で彼を観察する。
猫屋敷は反射的にその男を押しのけようとしたがそれは叶わなかった。腕すらも縄で縛られていたのである。
辺りを見回すとここは廃ビルの地下の広い空間、そして過去に飲食店が建ち並んでいた場所であろうことが伺えた。
冷たい床はコンクリートの床であった。床だけではない。辺り一面灰色一色、コンクリート製である。

猫屋敷と天戸は監禁されていた。

「ギャハハハ!お前らでかした!また新しい女の子達を捕まえてきてくれてよおお!
この子達可愛いからよお、薬中にさせて俺独自のルートで、海外に売り飛ばせば、高く売れるぜぇ!」

目の前の男が満遍の笑み浮かべながら、吠える様に他の男達に語りかける。

「ははっ、神崎さん。ありがとうございます!これで我々オカルトサークルの研究費用が溜まれば、もっと大きな事を成し遂げられます!」

猫屋敷達は、大学生くらいの数人の男達に囲まれていた。目の前にいる神崎という名の男は派手なピアスと服装で金属バットを持ち、目の前に腰を落として座っている。もう2人は何台もある大きなパソコンの、キーボードを押すのに夢中だ。残りの2人はこっちを見て笑みを浮かべじっとしている、今喋ったのはそのうちの一人だ。後の1人は窓から外の様子を監視していた。そして何故か、1人1人違う色のナイロンジャケットを着ていた。

五人。猫屋敷達は今この状況で、少なくとも五人の男達に囲まれていたのである。

「(大ピーンチ!)」

天戸梓は涙目になりながら助けを請い、猫屋敷蜜柑は、強がりなのか、はたまた天然なだけなのか、呑気な表情を見せていた。



ハァ…ハァ…ハァ!!

(ミカンの性格からして、あの後笛吹き男(宇宙人)を探しに行ったに違いない。だとしたら、あの顔立ちから女と勘違いされて、自身を笛吹き男に似せた何者かに誘拐された可能性が高いな…。)

ー白鍵は通りすがりの顔見知り、鷹夢 翼(たかゆめ つばさ)の自転車をほぼ無理矢理奪い、全速力で走っていた。ー

ミカンの母親と会話を済ませた後、すぐに着替えて、いつもの青コートを羽織り、アンナに事の顛末を伝え、家を飛び出して行ったのはいいけど…!

「ハァ…ハァ。何処にいるんだよ…!ミカン!」

既に白鍵の体力は限界点まで達していた。

「おい!待ちやがるのです白鍵勇馬!」

「なんだよ。」

俺を呼び止めたのはそう。この自転車の持ち主、鷹夢 翼だった。
どうやら走ってここまで追いかけて来たようだ。

鷹夢 翼(たかゆめ つばさ)。女子高校生で俺の一個下の一年だ。だが俺とは違う私立の学校に通っている、他校の生徒である。
その子の容姿はいわゆる童顔で、この季節には似つかわしくない半袖のセーラー服を着ていた。
そんな子が自転車であちこちを駆け回っていたこの俺に足で追いつけたのは何故なのか。ふと頭の中に疑問がよぎった。

「鷹夢、よく追いつけたな。」

「第一声がそれっすか?!まんま強盗の台詞っすね!」

「は?…あぁ、悪かったよ。ちゃんと自転車は返すよ。」

確かに。半強制的に他人(ひと)の自転車を乗り去っていった俺だが、これでは完全なる強盗だ。弁明の余地もない。鷹夢とはこの前初めて知り合っただけで、ほとんど赤の他人だもんな。…俺としたことが、必死で周りが見えていなかったんだ。

急いでいたが、仕方なく俺は訳を話した。

「成る程!それで、そのミカンって女の子が誘拐された場所へ行きたいってことっすよね?」

「そうだ、だから俺は急がなくちゃならない。お前の住所なら覚えてる。ミカンを救出できたら、ちゃんとこれは返しに行くよ。訳を聞きたいなら、、悪いが走りながら話すぞ!」

「了解っす!でもどうやって探すんですか?」

鷹夢は自転車に乗り走る俺と平行に走り始めた。

「それは、俺にも考えがある。消去法だ。」

「消….何て?」

そうだ。俺だってただがむしゃらに時間と体力を浪費してた訳じゃない。ちゃんと考えて行動していたんだ。

「まず、俺はネットでいつ何処で誘拐事件が起きたのか調べた。事件が起きた、女子中高生が誘拐された場所は都市の至る所で広範囲で行われでいたが、10人のうち、
3人もこの鍵宮町で誘拐されている。人集りの多い「大通り(レイライン)」から離れている点から見ても、ここに奴らの根城がある可能性が高い。」

(それに此処はビルや、マンションが立ち並んでる。駐車場も多い。犯人達はきっと…。)

「言ってる意味はわかるけど、あんたは信じねーのかよ。笛吹き男の仕業だって。」

鷹夢のその質問に対して俺は断言した。

「あの妙な噂のことか。悪いが俺はオカルトじみた事は一切信じない。俺だって本当は、いや、なんでもない。」

「…?そうっすか。」

鷹夢は少し首を傾げた。

(ミカン。お前の気持ち俺今更だけど、本当は理解してたんだよずっと…!なんていうか、超常っていうか、非日常に憧れている自分がいる事に、こんな状況になって改めて気付ちまったよ。無事でいてくれよ。この気持ちを、お前に伝えなくちゃならないんだからな。)

「だけど、それだけじゃ判断材料として物足りないっすよ!」

鷹夢は余裕の無い表情で主張してきた。

「言っただろ。消去法だって。」

シャーロックホームズは推理する時に良く消去法を使うらしいが、俺も結構多用するからな。

「いいか?明度の低い車だ。これだけ広範囲でしかも未遂に終わった例がないのは車を使ったからだ。それに事件は夜の犯行が多い。これは明度の低い色の車を使っている可能性が高いっつうことだ。例えば“黒”とかなっ!」

それに車を利用した可能性が高いのにはもう二つ理由がある。一つは複数人の犯行だってことだ。いくら女子とはいえ、小学生ではないんだ。それなりの抵抗、助けや悲鳴の声をあげる余裕があるはず。だがそれでも明確な事件現場の目撃証言がないのは、短時間で目標を誘拐したに違いない。それには少なくとも車を運転する者、辺りを警戒するものも含めて男五人分くらいの力が必要だろう。
だが、人気のない住宅街で男五人が歩いていれば嫌でも目立つし、何より、女の子を担いでいるなら、もう通報されるのは目に見えている。
だからこその車というわけだが。最後に消去するべき条件。そこに奴ら誘拐犯の車を使った本当の利点がある…はずだ。それは…。

「顔に似つかわず、頭の切れるひとだったんすね。何だか本当に推理小説の主人公みたいっすよ。」

此処で鷹夢が水を差してきた。

「余計なお世話だ。悪いが冗談言ってる余裕は、、」

「俺だったら力になれますよ。」

俺のセリフを遮るようにして鷹夢は提案するのだった。

「協力してくれるのか?ありがたいっ!」

一応、ミカンの母親が警察に通報していたが、姿が見当たらないのは、まだ動いていないということだ。となるといよいよ人手が足りない。

「猫の手でも借りたいくらいだったんだ!」

「俺が猫とでも言うのか!」

言葉を取り違えた鷹夢はやや恥ずかしげにツッコミを入れた。

だが、突然、鷹夢は表情を変えた。
なんだか自信ありげな表情で、口を三日月型に尖らせた。

「猫の手は借りなくて良いけど、鷹の目は借りたくない、、、っすか?」

鷹夢も自分の語彙力に自信がつかなくなったのか、顔を赤らめながらさっきと同じ表情で言い切った。

「はぁ、全然上手かねーんだよ。」

こいつのギャグというか、笑いのセンスは壊滅的な様だ。

「あんたさっき言ってたじゃないっすか。何でこんな短時間で自分に追いついたのかって?」

「あぁ、結局のところなんで何でだ?」

いい加減こいつと話こけている暇はないのだが。

「それはこいつに…

ピュイーッッ!」

突然、鷹夢は口笛を吹いた。
すると上空から何かが猛スピードでこちらに向かって、真一文字に急降下して来るのが目でとらえられた。
そいつは鷹夢の肩の上に翼を羽ばたかせて、勢いを落としながら飛びのった。

「こいつに聞いたからっす。なっ、クッチー。」

鷹夢の肩に乗っていたのはまぎれもない“鷹”だった、

クェッ。

鷹夢と鷹は何だか仲よさげにしている。

「お前は何もんだ?」

「俺は鷹使いすけど」

「な、成る程…。」

俺は驚愕していた。

…だけど、女子高生の鷹使いか。何つーか、カッコいいわ。憧れるわ。
俺は状況を飲み込めた後に、鷹夢に対し憧れの眼差しを送るのだった。それはまるでカブトムシを見つけた少年時代ような、キラキラした眼差しだった。

「気持ち悪っ!」

冗談ではなく、リアルに鷹夢はドン引きしていた。
俺の自覚はあったのでひとまずわざとらしく咳を打った。

「オッフン!
で、その鷹で上空から“黒い車”を探してくれるってことか。」

「そういうことだ。後鷹じゃなくてクッチー。
…気持ち悪かったっすねさっきの。」

クェッ

鷹夢はクッチーという鷹と、顔を合わしながら最後にボソッとつぶやいた。

「あっ二回言った!二回は無いわ二回は!」

「何だとー!これから手伝ってくれる俺に対して失礼じゃないっすか!」

クエーッッ!

「関係ねー!!てかその鷹…じゃなくて、クッチー人語理解出来んの!?すげーな!」

クックェ!

「こらークッチー誑かされるな!」

「たぶらかしてはねーよ??」

つーか、もうなんかノリがポケ○ンだよ。サ○シが飛行ポケ○ンに、上空からロ○ット団を探してもらうあれだよ。


ー二階堂ビル、地下一階奥ー

「ゴモゴッモ、ゴモッ(薬中だって怖いねぇ。)」

ガムテープで口を塞がられている状態で猫屋敷は天戸に向かって喋りだした。

「モゴモゴ。モゴゴモゴモ。(そうですね、何とかして逃げないと!)」

「モゴ、モゴモッゴゴ(なんなのかな、この人達、1人はヤクザで、後の人達は大学のサークルの人?)」

天戸はこの猫屋敷の言葉に対して疑問の表情浮かべた。猫屋敷の言う通り、この神崎という男以外の人たちは、全員ガタイの悪そうな者達ばかりだったからだ。
太っていたり、または小ぶとりだったり、痩せていたりと、見るからに、不良とは言い難い、そう、一言で言うならばオタク臭が凄かった。

「モゴモゴゴモモゴ。モゴモゴモゴ~。(確かに話を聞いていると、何処かのサークルの人達みたいですね~。)

「モゴモゴモゴ。モン…ゴゴ!(うん。でももしかしたらこの人達…まさか!」

「おお!モゴモゴって!ギャハハ!お前らガムテープで、口塞がれてんだぞ。そんなんで会話が成り立つ訳ねぇだろーが!」

※成り立ってます。

「まぁそんなに喋りたいんだったら喋らせてやるよ。どうせここまで来たら、どんなに叫ぼうが、もう助けは来ないんだからなぁ!ギャハハ!」

そう言って神崎は2人の口についているガムテープ強引に取り外した。
痛がっている2人をよそに、神崎は二人に質問をする。

「お前ら何か聞きたい事はあるか?」

「なんで笛吹き男になりすましたの?」

猫屋敷は神崎の言葉から一間もおかずに質問したのだった。

「おっお前ビビリもせずいきなり質問かよ。いい度胸してるなぁ!気に入ったぜ。答えてやる。俺は気の強い女がすきだからよぉ。」

(この人、ミカンさんの事を女の子だと思ってる!)

「それはな、こいつらオカルトサークルが大学で笛吹き男の事を調べててよぉ~、なかなか上手くいかないし、非公認のサークルだから費用がでない。つまり面白い研究ができなかった訳だ。
そこで、暇してた時に、俺が薬を売ったら上手くひかかってくれて、こいつら、頭イかれたヤローになっちまんだ。ギャハハ!」

「それは言い草は無いよ神崎氏~。」

パソコンデスクに座っていた、一人の太った男が神崎に、語りかけた。しかし、

「オメーは黙ってろよっ!あ、それとてめーら“氏”とかつけて俺を呼ぶなよ!俺までオタクだと思われちまうだろうが!」

「ひっ!はっはい!!」

すぐに黙らされた。

((なんか可哀想…))

猫屋敷と天戸はオタクに同情した。

「あっ、ああ、話の途中だったな。そんで急に、女子中高生を誘拐すると言いだしてよぉ。」

「ち…違うよ、最初に女子中高生…な…なんかを誘拐しようなんて言い出したのは神崎氏…あ、ご…ごめん、神崎さんだったよね。」

またしてもサークルの一人が会話に入ろうとする。今度は小ぶとりの男だ。

「ろ…ロリコン乙~。」

そしてここぞとばかりに痩せ気味の男が自信なさげにつづけた。

((wwwwwwお腹痛い))

状況はよく分からないが、取り敢えずオタク達が不良に小さな反抗をしている事は理解できたので、それが妙に面白く感じだ二人は同調して笑いを必死にこらえていた。

「俺はロリコンじゃねぇ!金になるからそう提案しただけだ!
それとお前らしばかれたいのか!?さっきからしばき回されたのか?ガリの方は後で絶対しばくけどな。」

「えぇー。」

痩せ気味の男は小さな悲鳴を上げた。

「くっ…。まぁ、どうせやるんだったらただの誘拐じゃなく面白い事をしてやろーぜってなった訳だ。そんで笛吹き男になりすまして、都市伝説になってやろうと……ってお前!よく考えたら、なんで俺達が笛吹き男になりすましてるって分かった!?」

神崎は気を取り直してつづけた。結局何故か丁寧に最後まで説明してくれたのであった。しかし、

「ま…マジレス乙~。」

またしても彼、そうガリだった。

「ガリィィイ!!」


そう叫ぶとさすがに我慢の限界が来たのか、神崎はその男に殴りかかった。

「ギャアアア!」

「「ガリー!!」」


天戸と猫屋敷はそのガリー身を案じて叫ぶ。

「いや、ガリーって名前じゃ無いからね。」

オタクのうちの一人、太った男すかさずツッコミを入れた。

ゴゴゴッ!

神崎の拳は、ガリーがとっさに身をすくめた事によって、パソコンのデスクの方に直撃した。
そしてなんと、デスクは粉々に砕け散ったのだ。

バリリッ!

「ー!!」

しばらくその部屋には沈黙が続いた。神崎以外の全員がその拳の威力に驚愕したのだ。

「へっ!見たか俺のダイヤモンドナックル!」

神崎は自分の拳が避けられたことをとっさにごまかそうと口を開いた。

((名前ダサー!!!))

そして名前のダサさに皆驚愕した。

「ヒェー…。」

猫屋敷はまだ呑気な反応を示していた。

「…おい、そこのメガネっ娘!お前まだ俺の説明に答えてねーぞ…それで?なんで俺たちが笛吹き男の正体だって分かった!?」

「オッホン!それはあなた達がそれぞれ違う色のナイロンジャケットを着てるからだよ。それは笛吹き男の、色とりどりの服装を模しているんでしょ?
そしてさっきからパソコンを夢中いじっているそこの2人!あれは多分、オカルト好き専用の掲示板に、笛吹き男の真似事をしている自分達の事を、あたかも都市伝説の様に書き込んでいるだ。自分が、都市伝説になる為に…!
不思議だったんだ、最近やけに掲示板の数が増えているなって。」

「なるほど、お前オカルトマニアか…。それにしても大した推理力だ!美少女で気の強い上に賢い女…。どストライクだ!売り飛ばすのはやめだ!」

(ミカンさんは美少女じゃなくて、美少年です。それよりもミカンさんすごいです!頭良かったんですね。そういえば優馬お兄ちゃんに…ミカンさんの、学校での定期テストの順位は常にトップ5に入っているって聞いたことあるような…)

「今すぐ、俺達が可愛いがってやるよ!その為にはまず準備だな…!大人の玩具で遊んでやる…おい、お前ら隣の部屋に行くぞ!」

「ー!!」

そういうと部屋にいた全員が隣の部屋に行き、電太と天戸は2人きりになった。

「ワクワク!大人の玩具かぁ!あの人達、実は悪い人じゃなかったんですね。ミカンさん。それはどんな玩具なのです??」

「ま、まずいよー!勇馬ー!」

「ミカンさん!?勇馬お兄ちゃんが助けてくる訳ないですよ~。
だって喧嘩した後じゃないですか。」

「うぅ…勇馬は、助けに来るよ。う…絶対に…くるもん。いつも…そうだったよ。ピンチの時は必ず来てくれるんだ。」

「…。」

天戸はあまり歯切れのよく無い、落ち込んだ様子でミカンを見つめた。

「小学生低学年の時さ、僕はよくつるんでいた仲良しグループである日突然虐められだしたんだ。女みたいな男だって…。
そしたらその時、一緒にいた勇馬が
それがこいつの良い所だ!個性なんだ!ってみんなに怒ってくれて、それから誰にも虐められなくなった。勇馬は見た目は不良でちょっと怖いけど、本当はすごく優しい人なんだ。」

「お二人にそんなエピソードが。勇馬お兄ちゃん、見直しました!
…。
じゃあ、今回も来てくれるかな…。」

「…。僕は馬鹿だ。」

「…?」

猫屋敷の自分を卑下した発言に、天戸は動揺した。

「いつもいつも、勇馬には迷惑をかけてばかり。
今回だってまたハズレだった。宇宙人なんて…本当は、」

猫屋敷がそれを言いかけた瞬間、腕を縛られていた天戸は、壁に背中を擦り付けながらなんとか立ち上がり、言った。

「ダメだ…。」

「え?」

「どうせ結果が同じなら、何も考えずにシンとしてるより、最後まで、最後まで勇馬お兄ちゃんを信じましょう!信じて2人でもがきましょう!」

「…!そうだね!梓ちゃんはしっかりしてるなぁ。」

ガチャン!

ドアを開ける音がした。

「ギャハハ!お待たせ。」

ゾクッ!!

2人の希望を打ち砕く様に、ぞろぞろと男達が入って来た。

((さっきより人数が増えてる!))

合計で18人もの男達に猫屋敷達は囲まれた。しかも、さっきと違い、あなたに増員された男達は、全員入れ墨のある、見るからに不良なもの達だった。

「ギャハハ!素敵なゲスト達を招待した!それにほら見てよおぉぉ。ダンボールいっぱいに玩具が入ってるんだぜぇ。2人とも可愛いから選ぶのに苦労したぜェ!!さぁ楽しいショーの始まりだ!!」

「けけッ!」「神崎先輩~。早くやっちまいましょうぜ。」

周りの男達は全員、2人を見て笑みを浮かべていた。

「…!!」

2人の表情に余裕が無くなり、どちらも怯え、震えていた。

「さぁ、まずこっちからだ!」

ピアスの男、神崎は、そう言って猫屋敷の方に手を伸ばした。
が、その瞬間。

ガゴーーーン!!

地下に大きな音が鳴り響いた。
そして、





        「俺のミカンに、触るなあァァ!!」





「勇馬!!」

「勇馬お兄ちゃん!!」

猫屋敷と天戸は歓喜の声を上げた。
白鍵勇馬が、非常口のドアから入って来たのだ。

「なんだ!?誰だ!お前は!どうやって入って来た!」

神崎は狼狽しつつ、白鍵に向かって叫んだ。
そして神崎と同様に、他の者達も動揺している。

「…な…なんだあいつは…。神崎氏…さん…のし…知り合いじゃないみたいだけど。」「きっとこの子達を助けに来た奴だ。」「いや、それよりもどうやって入って来た。」
「ドアは…閉まっていたはずじゃ。」「ガチギレ乙ー!」

「どうやって?そんなの決まってるだろ。壊した。」

「なっ!非常口のドアを壊したぁ??ギャハハ!なんて怪力だ……なーんて、
嘘こいてんじゃねーぞガキ!
こいつらを助けに来たか?バカだなぁ!こっちは18人もいるんだぞ?」

(…わりーが俺は左手の握力だけ1000以上あるだよ…なんつっても信じてくれねーよな。)

「あー、思ってたよりも少ないな。」

白鍵はつまらなそうな表情で肩に手を当てながら呟いた。

「なっ何!?じゃあお前は、知ってて飛び込んだって事か!ハハッ!こいつは筋金入りの馬鹿みたいだな。
…だが、どうやって、この場所がわかった。」

「…。そこにいる2人がどこにいるのか、街を歩く人に聞き込んで回ったんだ。そしたら、こいつらも此処にたどり着くまでに、笛吹き男を探して、色々聞き込んでたらしいじゃねぇか。」

(確かに、僕らは此処に来るまでに色々聞き込んで回った!)

「その人達の言った通りの道を辿れば、此処らマンションが多く点在する場所にたどり着いたってわけだ。」

「ギャハハ!意味は分かるけどよぉ、それだけじゃ説明にならねぇぜ。お前の言った通り、ここらにはいっぱい、廃ビルやマンションが立ち並んだからよぉお!」

「そう。俺はお前らの行動時間や範囲から、明度の低い車を使っていると考えた。案の定、此処の駐車場には黒い大きい車が停めてあった。だがそれだけなら他のマンションにもあてはまる。だから俺はもう一つ、条件。消去法に付け足せるものを考えた。そして見つけたんだよ。これをな!」

「それは…!」

白鍵が手に持っていたのは車のマフラーに取り付ける笛、つまり、ターボサウンドだった。

「ずっと不思議だったんだ。笛吹き男の笛の音。それをどうやって再現しているのかってな。女子中高生が誘拐されたであろう場所では必ずこの笛の音が聞こえたという住民の証言があった。車の中で笛を吹いても、エンジン音にかき消されて、音が外にまで届かない。だから俺は条件の合う車のマフラーを調べて回ったんだ。お前らの車にはしっかりとこの笛が付いてたぜぇ!」

「勇馬お兄ちゃん凄いっっ!」

興奮している天戸をよそに、猫屋敷は妙に落ち着いていた。まるで白鍵がここまでの推理をできた事が当たり前の事のような、そんな反応である。

(勇馬は見た目で誤解されやすいけど、実はすごく頭が冴えるんだ。そして、悪知恵は異常なまでに働くから、勇馬は常に悪の視点で物事を考える事ができる。根はいいんだけど、大抵いつも悪いことばっか考えているからね。)

「なんか妙に黒い染み付いてやがんなと思ったら成る程な。…大した推理力だぜ。お前の推理は全部正しい。ギャハハ…!すげーよお前!で、最期の質問だ。どうやって地下一階のこの空間を見つけた!?」

「なぁ、知ってるか?芸術科学都市ってのは、科学見たいに合理性を求めるものよりも、芸術にその重きを置いてるんだ。外面ばかり気にして、こういう実用性の無い無駄な空間ができちまう。こういうのがある場所は昔よく俺たちは入り込んだりしてたからな!知ってたんだ!」

「俺たち…?」

「あぁ、俺たちは此処が広大な人工芝の公園だった頃から住んでる唯一の人間だからな。なぁミカン!“不思議探し”、覚えてるか!まだ、“宇宙人探し”になる前!」

「勇馬!思い出したの?過去の記憶を!」

徐々にミカンの顔に生気が湧いてきた。

「ちょっとだけな。悪かった。最初に宇宙人なんかを探そうって誘ったのは俺の方だったのに。なぁミカン!」

「勇馬。」

「此処を乗り切ったら、部活を作ろう!超常を探す部活だ!一緒に、宇宙人探そう!」

「勇馬っ!」

「…。

また、また迷惑かけちゃうよ?」

「ああ、かけろかけろ!俺は何度だってお前助ける!」

「…うん!僕も勇馬の為に頑張るよ!」

勇馬とミカンはしばらく、お互いを見つめあった。




………






「ギャハハ!宇宙人探すんだってよ!」「こ…高校生にもなって、ば…馬鹿じゃ無いのか。へへっ。」「その通りだ。」

「馬鹿とか言うな!」

突然、天戸が奇声を発した。

「せっかくいい雰囲気だったのに!本物を探す二人よりも、偽物のあなた達のやっている行いの方がよっぽど下郎です!」

「梓ちゃん…。」

「あっ梓までいたのか!何やってんだか。」

「勇馬お兄ちゃん今気づいたの?」

「ギャハハ!…ハァ。お前、ムカつくぜ。ヒーロー気取りもそこまでだ。地獄へ落ちな。」

神崎が指示を出した瞬間、17人の男達が白鍵に襲い掛かる。その中の数人は金属バットを持っていた。

「勇馬お兄ちゃん!」



「あぁ、俺も俺たちを笑ったあんたらを許さない。待ってろ!今すぐ、

   2人共助けてやるからよぉ。」


ゴギッ

白鍵は拳を鳴らした。

「うん…!」


「何言ってんだ!お前は今からぶっ殺されんだよっ!」

そう言って先頭の男が殴りかかって来た。

しかし、白鍵はその右ストレートを左手で横に逸らしつつ、胸と顎に右手でパンチを食らわした。正確にはパンチではなく、ストライクというものだ。

ペシッ
ペシッ

それはドアを2回ノックするようなパンチだった。

「はっ!なんだそのヘナチョコパンチは!」

神崎は嘲笑うように言った。

「お兄ちゃん!何を遊んでいるのですか!」

「ハハッ!なんだそのパンチは!」「クックック。おい兄ちゃん、喧嘩しらねぇんじゃねえのかぁ?」「拍子抜けだな。一気に叩くぞ!」「無能乙~。」

しかし、

ドタッ

先頭の男はそのまま膝をつき、倒れこんだ。

「ウゥ…。」

シーン

しばらく、倒れた時の音のみが周りに押韻した。」

「なっなんだぁ!五郎たてよっ!…おいっ!」

((五郎w))

「…。」

男からの返事はなかった。神崎は又もや動揺した。

「電太さん、一体何が起きたのですか?」

「あれは勇馬の使う武術のうちの1つで、ロシアの軍隊格闘術、システマだよ。そしてあれはストライクと言うパンチだ。一見ただ脱力して打っただけのパンチに見えるけど、実は凄く重いパンチなんだ。」

「そんなのものを使えたのですか…!」

(格闘漫画でよくある、いきなり解説モードなのです!)

「ロシア軍人であるアンナさんから教えて貰ったらしいよ。」

「あっ、成る程です。」

「軍隊格闘術だぁ?それがどうしたってんだ!お前らぁ何止まってんだ!さっさとやっちまえ!」

神崎は若干焦る様に叫んだ。

「おらぁ!」

バットを持った2人が一気に殴りかかって来た。右の男はバットを白鍵の頭上から振り下ろし、左から来たもう1人は白鍵の胴の部分を狙って、バットを横に思い切りよく振る。
白鍵はまず左に少し動いてから、右足で、右から来た男の左足関節を蹴り崩しそのまま左に流した。
そうして男を、左からくるバットの盾にしたのだ。 

バギッ!!

「ぐへっ!!」

盾にされた男はバットを当てられ、右胸部の骨が折れたようだ。
その時白鍵はその人からバットを奪った。

「は?」

そう言って左からバットを振った男が動揺している間に、白鍵はその人のバットを持つ手を、持っていたバットのグリップエンドではたき落とし、
そのまま左手で服の襟を持ち。さっき盾にした、前で倒れこんでいる男の上に重ねる様に流した、
そのまま重ね倒れている2人を押さえつける様に足で踏みつけた。

ドッ!

まさに3秒程の出来事だった。バットを持つ男2人を撃退したのだ。

「なっ!?何者だお前はぁ!」

(こいつ、強い…!まさかさっきの非常ドアを壊したってのもハッタリじゃない?まぁ相当喧嘩慣れしてるのは確かだ。)

「神崎さん、あの青コート、それに黒いワイシャツ、黒髪のツーブロック ショートボブ…というか、坊ちゃん刈りの様な髪型はまさか…!青いUMA!ブルータイガーじゃないんですか?」

1人の入れ墨をした男が言った。

「青コートの…ブルータイガー!?あの強いって有名な不良の…?!」

神崎は驚きながら言った。

「その二つ名といい、説明と言い、色々恥ずかしいんだが…。」

白鍵は小指で頬をかきながら恥ずかしそうに言った。

「ブルータイガーだって。プクククッ。」

「青いUMAとして有名なブルータイガー。勇馬とUMAをかけたんだよきっと。プクク、面白い…。」

天戸と猫屋敷はヒソヒソと笑いながら話をしていた。

「こら、そこ!笑うな!」

(誰がこんなに恥ずかしいあだ名つけたんだ…?黒歴史だよもう…。
ていうか、もう不良やめたんだけどなぁ俺。)

「ギャハハ!あのブルータイガーか!成る程、強い訳だぁっ!だが所詮はツッパってるだけのただのガキ!おいっ、お前ら…って、
逃げてるし…!」

「神崎氏、さん…!残虐非道なブルータイガーはもう我々オタクの手に負えん!」「ごめーん!」「ご…ごめん。に…逃げるよ。」「すまねぇ!俺達だけでも逃げる!」「乙乙ー!」

ゾロゾロと、男達が走り去って言った。
倒れていたものも立ち上がり逃げていく。

「ちっ!所詮ただのオカルトオタクどもか。残ったのは、俺と御郷会の奴ら4人だけか…。」

「御郷会?お前らヤクザなのか…?」

「へへッ!そういう事よ。俺は御郷会の幹部の1人、神崎だ。だがな、俺はまだ幹部の中では下っ端だから、薬で大儲けしてやろうと思ってよ。手始めにあいつらオカルトサークルをつってみた訳よ。だがお前に邪魔されたせいで計画がパァだぜ!絶対ぶっ殺す!」

神崎は顔を鬼にして言った。そして前に歩き始めた。

「お前ら、こいつは俺にぶん殴らせろ…。」

「神崎さん?」

「どうせ、後から御郷会の連中が30人もここへやって来るんだ。その前にちょっと遊ばせろや。」

「ー!!」

≪30人!?≫

天戸と猫屋敷は慌てて反応した。

「ギャハハ!そういう事よ。30人は流石にさばききれねぇよなぁ。ブルータイガーさんよぉ。」

「その前にお前らを倒して、3人で逃げればいいだけの話だ。」

「俺は一応ボクシングやってんだぜ。そこらのチンピラや、オタクとは違うんだよ…!」

「来いよ…!」

「ああ、ぶっ殺してやるよ!」

「だが、その前に…」

「?」

「ほらよっ!」

神崎は、地下に溜まっていた、湿った空気によりできていた水溜りを、足で蹴り、白鍵の視界に水飛沫を浴びせたのだった。

(なっ!)

そしてそのまま、神崎は白鍵のみぞおちに右ストレートを食らわした。

ゴンッ!

「グァァ!」

白鍵は悲鳴を上げた。白鍵はそのまま、膝を着いて倒れこんだ。

「勇馬!」
「勇馬お兄ちゃん!!…酷い!」

「入った!神崎さん必殺の殺陣拳!ダイヤモンドナックル!」

うぅっ!!…スーハァ…

「神崎さんは昔、足を滑らせて階段でこけた時に、右拳を打って、拳の骨が粉々になった。
けれどそれが治った後、右拳の骨はより強固なものになった!ダイヤモンド並みにな!
あの拳を食らったものは激痛で立ちあがれねぇ!痺れるぜ、神崎さん!」

スーハァ…

「それに水溜まりをぶっかけて視界をふさぐという奇策!強い上に姑息!かっこいいぜ!」

ヤクザ達は神崎を賞賛した。

「お前らウルセェ!そのエピソード全部カッコ悪いわ!新手のイジメか!」

(いや名前の方がカッコ悪いだろ…。)

スハッ、スハッスハ

「…ハハ!だが、まぁ、痛みで立ち上がれねぇのはホント見てえだな!さっきから呼吸が可笑しいぜぇ!ギャハハ!あれだけ大口叩いといて、呼吸困難か?」

スーハァ…

「ダセエなぁ!」

スーハァ…

それでも、白鍵は呼吸をつづけた。そして…、

「…。おいっ、こいつ…!」

≪立ち上がった!?≫

白鍵は太ももを手でついて、のっそりと立ち上がった。

「俺の攻撃を受けて立ち上がった…ありえねえ!??」

「勇馬さん、凄いのですっ!あの痛みから立ち上がました!なんか激しく、呼吸を繰り返していましたけど…。」

その天戸の言葉に対して、電太は言った。

「あれはブリージングと言って、システマの呼吸法。呼吸することによって、痛みを和らげることができるんだ。痛みを克服する事が、システマの極意の一つなんだよ。」

「!そうなのですか。またもや解説モードありがとです。」

「そして勇馬の武器はそれだけじゃない。」

「え?」

「勇馬の本当の武器は…、ストライクではなく、左腕の怪力から繰り出される、中段パンチ、左ストレートだよ。」 


「そうだよな。」

白鍵は不気味な笑みを浮かべながら呟いた。

「ーー!!」

その白鍵の殺気に飲まれ、神崎は表情に余裕がなくなり、自らの心拍が聞こえる程の緊張に飲まれていた。

…ドクンッ…

「パンチってのは、ストライクじゃなくて、単純に力を込めて打った方が…」

「やっやめろ!!」


「…気持ちいいよなぁ!!!」


白鍵は左足を思い切り踏み込み、そのまま左ストレートを繰り出しだした。それは神崎の頬に直撃した。

ドゴオンッ!

そのまま神崎は3メートル程後ろに吹き飛んだのだった。

「ウゥ…。」

「神崎さん!」「まさか、神崎さんが負けるなんて…。」「バケモンだ…。」

しかし、

「はっは、何…余裕ぶっ来いでやがる。俺の勝ち…だ。30人もの喧嘩のプロ達が…お前を…ゥゥぶっ殺しに来るんだからよぉ。時間切れだ…もうそこまで…来ている…はずだぞ…!」

神崎は意識を朦朧とさせ、息を切らしながら言った。

「…!」

「それは、こいつらの事か?」

ドッ!

目の前で何者かが、入れ墨を入れたヤクザ達を投げ捨てたのだった。

「ーー!!アンナさん!」

天戸、猫屋敷、白鍵の3人は声を揃えて言った。

3人の前にはなんと、白鍵が壊した非常口ドアから入ってきていた雅羅アンナの姿があったのだ。

「その30人とやらは、そいつ(私が投げ捨てたヤクザ)の様に表でみんな伸びているぞ。」

「マジ?たっ…助かった!」

「アンナさんイケメン過ぎるのです!」

猫屋敷と天戸の2人はまたもや、歓喜の声をあげている。

「アンナさん、なんでこの場所が分かったんですか?」

「勇馬のケータイのGPSだ。あまりに帰りが遅いので、心配になって来てみたらこれだ。」

「そうでしたか。」

(勝手に登録するな…。犯罪だぞそれ。)

「何騒いでんだ!何者だその女ァァ!」

「俺の師匠だ。」

白鍵は自信げに言った。

「ブルータイガーの師匠だと?クックハッハッハ!
…。
何やってんだ!お前らァァ!さっさとそこの2人をやっちまえ!!その金髪美人はお前らの好きなようにしていいからよお!」

「でも神崎さん、こいつら…。」

「何やってる!こいつらは御郷会の敵だぞ!!お前らやれなかったら指下ろさせるぞコラァ!!」

「はっはヒィ!いっ、行くぞおお!」

3人は軽く錯乱しつつ、アンナの方に襲いかかった。

「ったく、一隊を担う隊長が、兵を焦らせてどうするよ。」

雅羅アンナは、呆れた顔でそう言うと、3人の視界から消えた。

「なっ何!」

「後ろだ。」

「なっ、どうやって…」

そのまま何故か3人とも同時に、前方へ倒れ込み、動かなくなった。

「今の…」
「見えなかった。勇馬は…?」

「見えた。目で捉えるのがやっとだったがな。まず、アンナさんは前方にダッシュして、3人の攻撃を後ろに受け流した後、そのまま、うなじにそれぞれ一発づつ、手刀を食らわした。恐ろしいぜ…!」

((うなじ…。))

「なんだと…。」

程なくして、神崎という男も気を失ったのであった。

「何をしている3人とも、帰るぞ。」

「え?」

「警察はもう呼んであるし、捉えられていた他の子達も開放しておいた。警察が来たら、その子達の証言で彼らは捕まるだろう。」

「流石なのです。」

「勇馬の師匠はすごいね。」

「状況把握能力と、仕事の早さが人間業じゃねぇよ…ただただ怖いわ。」

「何か言ったか?」

「なんでもないです。
それより、いいんですかね、勝手に警察呼んどいて、俺達だけずらかって。てか多分いっぱい来ますよ?」

「何故だ?」

「俺が此処に来る途中で会った、鷹夢って奴に交番で直接応援呼びに行くように頼んだんですよ!」

「そうか。私は警察にはあまりお世話になりたくないし、それに、まだ、今日冷凍しておいた、ミミズバーガーを勇馬に食べてもらってないからな。帰るぞ。」

「げぇええ!やっぱりここ残るー!」

「ダメだ。」

「いやああああ!」

「ふふふっ。勇馬!アンナさんありがとう!梓ちゃんも!」

「ちょっ抱きつくなっ!ミカン!」

「部活…楽しみだね!」

「バッバカ抱きつくのやめろ!女見てーな顔しやがって。てめーがそんなんだから、彼奴らに女って勘違いされんだろーが。ま、まぁ彼奴らも馬鹿だけどな。ミカンが女なわけねーのに。」

白鍵は照れを隠しきれず、やや早口になっていた。

「…馬鹿は、勇馬の方だよ…。」

ミカンは突然、1人立ち止まり、下を向いて頬を赤らめながら呟いた。

「なんだよ。聞こえねーよ。」

「なにはともあれ、仲直り出来たのです!」

「…そうだな。」

「そうだね…。でもまだまだ、この町にはいっぱい都市伝説があるんだからね!」

「ははっ。まだ懲りてねえのかよっ。ま、いっか。」

(そうだ!こっからだ。こっからやり直せばいいんだ俺たち。)

ー芸術科学都市 青石の丘ー

ヒュオオオオオオ

その丘には、芝生の上に、いくつもの青石が自然石の形で、一見無秩序に置かれている様に見える。
が、実は芸術的観点から見れば、秩序が成されている配置なのだった。
そして、そんな丘で一匹の流離いの白い獣人が、町の夜景を見つめながら独り言をつぶやいていた。
白い獣といっても近寄ってよく見れば、ほとんど白毛の無い事がわかる、女子(メス)の様だ。


「コンタクティ、みっけ。」


ヴォオオオオオ!!


白い獣は都市に向かって木霊した。コンタクティの存在を歓喜して。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...