魔王の黒幕は勇者サマ

冬樹

文字の大きさ
2 / 5
異世界で魔王になった。

01

しおりを挟む
俺がこの世界に転生したのはもうずっと前だ。俺もハッキリと覚えているわけではないが、だいたい700年ほど前だ。
その日学校をサボって家でごろごろしていたら、まるで天罰かのように地震が発生。俺は瓦礫の下敷きになった。その後のことはあんまり覚えていない。ただ、痛くてずっと呻いていたことは知っている。あまり実感はないのだ。前世のことだしあんまり覚えていなくても仕方ないだろう。

目を開けた時にまず最初に見えたのは闇。いや、真っ暗な部屋だ。目を開けてから一呼吸する間に火がついた。俺の両側の壁に付けられていたロウソクに火が灯り、そこに近い別のロウソクにも火が灯る。
あっという間に部屋中を照らした。
「お待ちしておりました。我らの王よ」
天井から落ちてきた人影にビクッとする。
まるで重力がないかのようにふわりと着地した影。
影は一瞬で少女へと姿を変える。意味のわからない光景。恐怖に少し後ろに下がろうとすると、背中が固いものにぶつかった。
どうやら俺はイスに座っているらしい。石で作られたイス。特にこれといった飾りのない単純な造形だ。
自分の状況がわからない。おそらく今怯えてひきつった顔をしているだろう。
マジでここはどこなんだ?
それにこの少女は人間ではないだろう。人間だとしたらどんなマジックなんだ。
変な表情を浮かべているであろう俺の前で少女は膝を床につける。
「貴方が現れるのを我等はお待ちしておりました。どうか我等をお導きください」
そのまま祈るように手を合わせ、涙をながす。
「あ、あの」
「はい、何でしょうか?」
「よく状況がわからないんですが」
少しビビりながらも話しかける。俺が臆病なわけじゃない。誰だってこの状況にはビビるはずだ。そうやって言い聞かせて自分を慰める。俺が自分でしていてあれだが、結構パニックになってるな。
「はい、王よ。貴方は生まれたばかりです。この私から説明させていただきます」
少女は優しく微笑む。簡単な男だとは思うが落ち着いてきた。それだけ美少女の笑顔には力がある。
「ここは魔界です」
「魔界?」
魔界というとあれか。悪魔や魔物が住んでそうな場所のことだろうか?
「この世界には魔界、人間界、天界の3つの世界があります」
「それぞれ魔族、人間、天使が住んでるんだろう?」
「さすが我等の王!生まれたばかりなのに聡明でいらっしゃる!」
日本に生まれていた人なら大体想像できることである。別に凄くない。
しかし、俺は今さっき生まれたばかりのようだ。そこを考えると聡明すぎる。何があるかわからないし、余計なことは言わないように注意しておこう。
「もしや我等の王、魔王様。貴方はご自分の生まれた意味もお分かり何でしょうか?」
「うむ、人間を滅ぼすのであろう?」
「素晴らしいです!」
ここまで来たら嫌でもわかる。テンプレ展開。どうやら俺は魔王に転生したようだ。昔読んだ小説を思い出す。
ちょっと話し方も魔王っぽくしてみた。ここまでテンプレ展開ならこの少女も配下の魔族なのだろう。なら、そこまで警戒しなくても大丈夫だ。魔王が最強ってのがよくあるし。
いや、ここは小説じゃないんだから最強ではないかもしれないが。
「それで、人間はどこにいる?今すぐにでも滅ぼしてやろう」
異世界に人間の知り合いなんていないから滅んでもいいや。この体の能力も確かめたいしな。
俺は椅子から立ち上がる。気のせいか人間だったころより体が軽い気がした。
「お、お待ちください」
「ん?どうした?」
調子に乗っていた俺を慌てた声が引き留める。
「魔王様、知識が1つ抜けております」
「なんだ?」
「人間を殲滅すると魔族も殲滅されます」
「……はあ?」 
どういうこと?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される

中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」 夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。 相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。 このお話はムーンライトでも投稿してます〜

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

同性愛者であると言った兄の為(?)の家族会議

海林檎
BL
兄が同性愛者だと家族の前でカミングアウトした。 家族会議の内容がおかしい

落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした

444
BL
『醜い顔…汚らしい』 幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。 だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。 その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話 暴力表現があるところには※をつけております

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...