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王都
18 ショップズ・クラン・ハインリヒ
しおりを挟むあれからまた2週間たった。自炊はまだ冷蔵庫を置けないため100Lサイズのクーラーボックスに飲み物用の氷を詰めてその中にタッパーで沈めている。
それから仕込んでいたアクリル系とコースターの行方を追っていった結果。半数は役所や取引相手に届けられ(しかしその取引相手や衛兵がくすねたり、隠蔽されなかったことになったのでこちらで回収した)3割は従業員や責任者がくすね(これも回収した)、1割が隠蔽に走った(当然回収)残り1割は正常に店主まであがった。
誰のものかわかるまでは保管するもの、心当たりを当たるもの、着服するもの(回収)……etc。その中で最も異彩を放っていた対応をしたのが末端の者から店の責任者に至るまでコースターを目視した瞬間肩眉を上げて箱にしまい、店の責任者に至ってはどうやらスキルや魔術を遮断するらしい箱にコースターをしまいなおした。
――――こちらの意図に気が付いている。
さすがにこっちの正体には気づいていないようだけれど、探りを入れているということには気が付いているようだ。
店主は今不在と聞いていたのでしばらくそのまま放置されていたが、今日ようやく店主が顔を覗かせた。店主は使用人たちそっくりに肩眉を上げてにっと笑うと口ぱくで『覚えておくぞ』と音の聞こえないご丁寧な宣言をいただいてハコの扉を閉められてしまった。
……とても申し訳ないのだけど、スキルの『移動』を使うことは出来なくなったのだけど、あくまで添え物の遠見は遮断できなかったらしくてその箱の外が丸見えでして。
声が聞こえないのでちゃんとはわからないのだけど、おそらく店の責任者のの名前はデニスだし、店主は理知的な瞳の背の高い快活そうな男性だし、少しあたりをうろうろ覗けば生き生きと働いている従業員たちの姿も見える。
―――そうだな、俺が組むならこんな商人がいい。
思い立ったら吉日。翌日にはその商会へ向かっていた。
途中寄った転移港では相変わらず元気なカルパスさんとにこにこドノバンさんの凸凹コンビが忙しそうに働いていた。声掛けなかったが手を上げたら振り返してくれた。
知り合いがいるっていうのはいいもんだ。
真っすぐ向かうのは地価の高い商業ギルド近くの庶民向け高級商店街。
この日のために今ちょっと小金持ってる庶民の服の流行りを取り入れた服をお馴染み魔改造を駆使して生成した。
お店に入るといかにも高級そうな店構えのなのに商品の陳列の仕方は庶民になじみのある形にしてあって、いかにも庶民向けの高級店といった風だった。
店員さんたちは、表情を崩さずにこやかにこちらをうかがっていて流石のプロ根性といったところだが、小金持ちの少年がたった一人で来店といったていの俺に客か入り口を間違えた先触れかわかりかねるようで声はかけてこなかった。
こちらも、さもお客かのように微笑みながらさっと従業員が出入りしている扉近くに立っている、事前に顔を確認していた売り場責任者の方へ寄っていった。
「こんにちは、今日はデニスさんはいらっしゃいますか?」
デニスさんの名前を出したことで知り合いか顧客だと判断したらしく、まだまだ経験不足といった若い責任者は確認してまいりますと奥へ引っ込んでいった。彼の指示で顧客を売り場で待たせるわけにはいかないと個室へ案内された。お茶をいただいてしばらくそこで待っていると扉を開けてデニスさんが入ってきた。
目が合った瞬間デニスさんは片眉を上げた。売り場責任者は頭をさすりながらちょっと涙目で後ろから。
「こんにちは、デニスさん。僕はユーラスと言います。本日は商談に参りました。」
「……ようこそ、ハンネス商会へ」
にっこり笑う俺と、目が極寒のまま微笑むデニスさんは一緒にはははと握手した。
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