赤い夕焼けの空

ミニマリスト憂希

文字の大きさ
上 下
1 / 13

1ページ

しおりを挟む
夕暮れの空
綺麗な茜色の空を
ある丘の上で眺める帽子を被った少年

「今日も綺麗だ」

少年はこの丘で空を眺めるの事が好きだ
それもこの時間に観る
夕焼け空は格別だ
しばらく空を眺めていると

「あっ! そうだ 」

少年は何か思い出し、立ち上がった
タタタタッ
丘を降りて街へ走り出す

「おっ トニー 今日も元気だな!」

「あっ おじさん こんにちは!」

タタタタッ

「トニー 走ると転ぶわよ」

「おばさん こんにちは!平気だよ」

街の人達と挨拶を交わしながら
走る少年トニー

アントニーのパン工房

パン屋の前に立つトニー
焼きたてのパンのいい匂いが店に入る前から漂う

「う~ん いい匂い」

カランッカランッ

「こんにちは!」

パン屋にはヒゲの生えた大柄な男アントニーとその妻アンの夫婦が働いていた

「おじさん パンちょうだい」

「よぉ トニー お使いか?」

「うん」

「偉いな」

「父さんの分と母さんの分と僕の分で三つね!」

「ハハッ、あいよ」

パンを三つ買うトニー
ボロボロのズボンのポケットから小銭を出して支払う

「また来てね トニー」

「うん!」

手を振ってくれるアントニーとアン
トニーは二人に手を振って礼を言った

歩きながら
パンを一つかじるトニー

「うん やっぱりおじさんの焼いたパンは美味しいや」

ある小さな小屋に着くと
かじってたパンを袋に戻した
そして横開きの戸を開けた
カラカラッ

「ただいま」

「お帰りトニー パンは?」

「はい 買ってきたよ」

「今日はパンと特製オニオンスープよ」

「うん」

トニーは母親が作るオニオンスープが大好きだ
口の中でトロけるタマネギ
甘くて美味しいスープ
母親の作る料理の中で一番の好物だ

「あっ!トニー!パン一つ かじったー!?」

「あっ ゴメン 美味しそうで…」

「もう これはトニーの分ね」

「は~い」

日が沈み
カラカラッ

「ただいま」

「お父さん お帰りなさい」

「おっ トニー」

父親はトニーの頭にポンっと手を置いた

「あなた おかえりなさい」

「今日も疲れたよ」

「さぁ 夕飯にしましょ 今日はオニオンスープとパンよ」

「おっ オニオンスープか!」

夕飯を食べる三人
カチャカチャ
ズズッ

「うん!美味しい!やっぱり母さんのオニオンスープは最高だね!」

「ハハッ トニーは母さんの料理好きだな」

「うん!」

しばらくして

「はぁ そういえば 明日は税収の日か」

「税収の日って?」

「月に一度 国に税金を納めないといけないのよ」

「税金ってなぁに?誰がそんな事 決めたの?」

「王様にお金を渡さないといけないのよ
王様がそう決めたのよ」

「ふ~ん 変なの」

トニーはまだ子供だった為 理解が出来なかった

「今日はもう遅いわ 寝ましょう」

「うん 母さん おやすみなさい」

布団に入り
幸せそうに眠りにつくトニーだった

次の日
コンコン

「はい ただいま」

母がドアを開けると
綺麗な黒色スーツを着て
ハットを被った2人組の男が訪れた

「こんにちは 今月の税収に参りました」

「はい」

封筒を渡す母親
封筒を開けて中身を確かめる男
封筒には大金が入っていた

「たしかに ではまた来月徴収に来ます」

男達が帰ると
トニーは母親の元に行き 尋ねた

「ねぇ なんで あんなたくさんのお金を渡すの?あれは僕たちの家のお金でしょ?」

「昨日 話した 税収よ」

「あんなたくさんのお金をあげるの?」

「そうよ」

トニーは驚いた
あれだけのお金があれば昨日買いに行った
パンが何百個と買えるかと

トニーの家は
父親が朝から夜まで鉄工所へ
母親は家事をしながら内職を
そしてトニーは学校へは行かず
見習いで父と同じ鉄工所で働いていた
だがそれでも食べていくので精一杯
それも高い税金のせいだ

「仕事行ってくる」

「行ってらっしゃい あなた」

「じゃあ 母さん 行ってくるよ」

「行ってらっしゃい トニー 気をつけるよ」

トニーは父と一緒に鉄工所へ仕事に向かった
しおりを挟む

処理中です...