赤い夕焼けの空

ミニマリスト憂希

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シュー!
白い煙が吹き出す

「おい トニー そこのネジ緩んでるぞ
ちゃんと締めとけ!」

「は はい!」

トニーは父と同じ鉄工所で見習いとして働いていた
トニーは子供だから賃金も僅かだ
しかしその賃金が家の助けになっていた

トニーは力が無く、重い物は運べなかった

「う…ん 重い…」

「コラコラ トニー 子供のお前が持ち上げれるわけないだろ」

トニーが他の作業員に笑われながら叱られる

「ふんっ」

父はそれを横目に重い部品を片手で平気で持ち上げていた

「父さん 凄い」

トニーはそんな父に追いつきたくて
父や仕事仲間から自分の事を認めて欲しくて
一生懸命に仕事をした
だが、大人達は

「トニー まだ子供なんだ 無茶をするな!」

と笑っていた
それに班長の人からは子供だからと
大人達よりも早くに仕事を切り上げられていた
トニーはそれに不満だったが
子供だから仕方ないと諦めていた

トニーは仕事を終えると
あの丘へ向かった
丘を登ると自分の街を眺める
さっきまで働いていた鉄工所が見える
自分の家も見える
そしてなによりこの夕焼け空が見える!
とても綺麗だ
トニーは色んな場所を探したが
ここから見るこの景色に敵う場所はなかった
しばらく景色を眺めるとトニーは満足し

「家に帰ろ」

しかし街中を歩いていると
なんだか住人達の様子が変だ

「どうしろって言うんだ!」

頭を抱えるいつも挨拶してくれるおじさん

「おじさん どうしたの?」

「邪魔だ あっち行け!」

怒っているおじさんに驚くトニー

いつも買いに来るアントニーのパン工房からはパンの匂いはなく
アントニーとアンが店の中で座り込んでいた
店に入り

「どうしたの?おじさん!おばさん!皆んな様子がおかしいけど…」

「トニーか…早く家に帰りな」

「今日はパンは焼かないの?」

「パンは…もう焼かないよ…店をたたむんだ」

「えっ?」

驚くトニー
アントニーは立ち上がり

「さぁ 早く 帰った 帰った!」

店から追い出されたトニー

トニーは走って家に帰った
家に着くと
母親が家の中で皆と同じ様にうなだれていた

「母さん!どうしたの?」

「トニー…帰ったのね」

「街の人達の様子が変なんだ」

「あのね…トニー」

カラカラッ
「ただいま…」

「あっ 父さん おかえりなさい」

「あなた!」

父に追いすがる母親

「聞いたよ…」

「どうしたらいいの!私達このままだと…」

母の肩を持つ父
「まだ 時間はある ゆっくり考えよう」

「うん」

「ねぇ!父さん!母さん!いったいどうしたの?」

トニーの頭に手をポンっと乗せる父
「子供は気にしなくていい 大人の話だ」

そう言う父に不満げなトニー
その日は父と母は何も話してくれずに終わった

そして後日
トニー家族 それに街の人々は
街の広場に集まっていた
黒色のスーツを着た男性
その後ろに警備隊が並んでいた

「え~ もう噂は広まっているとは思うが
今月からより、税金の引き上げを行う
これは王よりの絶対命令である!」

それを聞いた町の人々はざわめいた

「今でも生活が苦しいのに 増税なんてふざけるな!」

「これからどうやって生活すればいいの?」

悲痛な叫びをするが黒服のスーツ男は微笑み
警備兵達は見下す様に笑うだけだった

「ハッハッハッ」

自分達は王宮に勤める役人に兵士
税金も安く 安定した仕事
家族も王宮付近に家があり
幸せな日々

それに対し 街の人々は
王宮から遠く離れ
その日暮らしの生活

自分達が市民を守る義務もない
王を守り 王の命令に従えばいい
ただそれだけだ

街の人々はこの発表に絶望した
そして男達は怒り
しだいに反乱へと変わっていった

「武器を取れ!」

鍬や槍を手に取り
警備兵達に闘いを挑んだ
トニーの父も同じく武器を取り闘った

警備兵達は反乱を止める為に
銃を用いた
ガチャガチャ

「撃て」

ドンドンッ

圧倒的だった

銃弾を浴び

多くの人が倒れた
トニーの父も腕に怪我をした

「大丈夫!?あなた!」

「ああっ…これぐらい大丈夫さ」

反乱は警備隊の勝利により鎮圧された
人々の生活が戻り、月日は流れ


税収の日


トニーの家にこの前に来た税収員が訪れた

「こんにちは 税収に参りました」

「はい これで」

トニーの母親はいつもの様にお金を渡す

「おや 足りないですね」

「それだけしか無いんですよ
どうか見逃してくれないですか?」

「特例は認めませんね 地下へ行く手続きをします」

「そんな」

今回の税収で多くの人々が王国の地下へ行く事が決定した
王国の地下では死ぬまで働かされるのだ

トニー家族は黒服と警備兵に連行された

「ねぇ なんで 家を出ないといけないの?」

「コラッ ガキ さっさと歩け!」

「トニー 黙って」

トニー家は連行された
列車に乗せられ
馬車に乗せられ

トニーは馬車の中で
不安な思いをしながら母親に寄り添っていた
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