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ギルドの仕事をしてみる

冒険者ギルドで仕事する(2)

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 商機ここに有りって気がするので宣伝しておくことにした。
「これですか、まだ販売してませんし同じ物はオレの仲間だけが身につけることになりますが、今度立ち上げた商会にて類似品劣化品の販売を始めるつもりなんですよ。
 カードや硬貨など掌サイズ以下で無いと入りませんが、モノを指定して取り出せるので多数カード持ちの間違いが減ったり、支払いで手間取るのが減るのでは無いかと期待しています。今はそういうのも込みで実験中なんです。
 女性なら化粧ポーチ代わりになんかも便利かもしれませんね。販売が決まったらお知らせさせていただきます」
「商会を立ち上げられたのですか?それにアマネさんの店でのオリジナルと言うことですよね……冒険者続けられるのですか?」
「冒険者は続けますよ。みんなでランク上げて遠出なんてしてみたいですし。本職とは言えないかも知れませんが、受注した依頼は気合い入れて遂行します」
 片手間と思われたら嫌なので自己保身してしまった、オレダサい。
「あっ、踏み入ったことを失礼致しました。咎めたりしたとかではありませんので」
 逆にカリヤさんを慌てさせてしまった。
「そうなのですね、良かった。それでは今日は初仕事を受注させて貰おうと思います、受付窓口に移動しますね。登録手続きありがとうございました」
 オレが営業トークをしている間、リンがいくつか依頼書を掲示板から引き剥がしてきていた。この時間でも残っているくらいなので割の良い仕事ではないのだろうが、信用と実績を積んでおかないとね。
「初仕事ですか、頑張ってください。窓口はあちらになります」
 と真ん中ら辺の窓口を指さした。
「でも、この時間は窓口担当が私だけなので一緒に移動するんですけどね」
 朝の受注手続き後処理が、今の時間のメイン仕事になり受付に在中する人数を減らしているのだという。もちろん応援を呼ぶこともできるが今、窓口手続きが必要なのはオレ達だけなので当然のことだったのだが、なんか恥ずかしい。
 結局こうなるのか……天眼が危険を知らせてくる。MAPを確認しなくても近づいてくる冒険者が分かる。大柄で酔っ払いの赤ら顔、無精ひげに脂ぎった髪の毛、避けていたつもりのテンプレがやってきた。
「いつまで俺のカリヤを独り占めするすもりなんだ」
 アルも相当前から気がついていて、オレを守ろうと反応していたのだが動くなと目で合図しておいた。
 テンプレを楽しんでいるわけじゃない、どうせだからデモンストレーションしようと思っただけ。顔などを確認するために振り向いていたオレの胸元を掴んで凄もうとでも思って居たのか差し出された腕を『パチン』結界に阻まれる。
 野次馬達は、オレがビビって反応できないだの好き勝手言っていたけれど反応できなかったのでは無くしなかったのだと気がついた冒険者も数多く居たようだった。
「今回は威力を最弱にしておきましたが、次からは火傷しますよ」
 一応忠告はしておいた。チンピラや不良少年のあおり文句じゃ無いから、マジで火傷するから。スタンガンの威力は怖いんだ。
 それでも酔っ払いは酔っ払い、もともとカリヤさんに対して『オレの』とか付けている時点でおつむは弱いんじゃないかな?知らんけど。体当たりかまそうと腰を落とすので、今度はアルに任せた。わざわざ怪我人を出す必要は無い。
 アルに一ひねりされて、ギルド職員に引き渡されるのを横目にオレは依頼書の受付を進めていた。カリヤさんも珍しいことでは無いと気にもしない。
「これをすべて受けるのですか?無理なさっていませんか」
 側溝掃除や雨漏り修理、スライムだけでは手に負えなくなっているゴミ集積場の清掃。ぼろ家の解体にゴミ屋敷の後始末。誰でもできるモノから塩漬けと言われそうなモノまで一気に受注した。問題が起きなければ今日中に片が付きそうだが、一応数日猶予があるものばかりだった。解体やゴミ処理で出てきたモノはどう処理しても良いと言うことなのでオレ達にはオイシイ仕事だ。
「大丈夫ですよ。得意分野だと思っていただければ」
「わかりました。指定期日までに完了報告が無ければ失敗扱いになってしまいますのでお気を付けください」
「はい、ではいってきます」
 業務指示書と提出しておいたギルドカードを受け取り、冒険者ギルドを後にした。

「いよいよ冒険者だな。頑張ろう!まずはどこからだ?」
 冒険者としてのスケジュール管理もリンに任せる。魔法はオレで戦闘はアルだ。任せると言っても任せきりにするつもりは無いけど、得意な人が得意なことをすれば良いと思って居る。
「まず雨漏りから行いましょう。生活するのに不安でしょうから」
 外見上少し冷たく見えるが、中身は人情厚いリンさんだ。否やはございませんので地図を開きMAPに投影する。スラムとか街壁の近くを想像していたけれど、それほど遠くは無かった。冒険者ギルドから半刻も歩かずに到着したのは閑静な住宅街の一軒家。大工にでも依頼すれば良いのに。金が無いとかで素人冒険者で済まそうと思っているのだと勘違いしていた。
 家主が高齢の大工だった。自分で直そうとして梯子から転落したのが恥ずかしかったのだという。骨折してしまって『同僚に笑われたくない』とか他人からしたらくだらない理由。プライドは大事だ。
 オレはさっさとリペアの魔法で屋根を再生する。梯子どころか大工道具も一切使わないけど依頼完了だ。ポカンとした依頼主に完了のサインを貰って次に移る。
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