異世界でも自由生活~とりま必要なのは奴隷であってる?!~

咲楽桔梗

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カップノワール商会始動

あやふやな記憶を手繰り寄せる(1)

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 だんだんと『コレは夢だな』と理解してくる矛盾ばかりの何か……目が覚めた時点で内容は全く忘れる。眠りに落ちる前に感じていた人肌がない。部屋の中は薄暗い。何が現実だったのだろうと起ききっていない頭で考えてみても、全部が夢だったと言われれば信じてしまえるほどの事柄に赤面し、誰もいないのに顔を隠したくなった。
「目が覚めたのですね」
 扉が広き廊下側からの光が入ってくる。逆光の人影はリンだ。
「オレはどれくらい寝ていた」
 寝過ぎたのだろう、事後の気怠さとは違う身体のこわばりにそれを感じた。
「寝入った時刻が定かではないので正確には分かりませんが、24刻足りないくらいでしょうか。今は翌日の夕刻です。そろそろ六刻の鐘が鳴るはずです」
 ベッドの傍らまで来て教えてくれた。1日をまるごと損してしまった、1人だけタイムワープした気分にならないか?ズンッと少しばかり落ち込んでいると、やっと記憶が脳内処理に追いついたのか覚醒できた。
「アルは?アルは大丈夫なのか、痛みで苦しんだりしてないか?後悔したりしていないか?」
 後悔くらいはしていてもおかしくないが、落ち込んだりしていなければ良いのだが。行為中の痛みは相当なモノだっただろうが、後遺症とか出ていないだろうか。心配になる。
「安心してください。今は連れてきた奴隷達にキャロライン、いえ、キャロルと一緒に夕飯を用意しているところです。元気ですよ」
 リンはベッドサイドに腰を下ろし、起き上がっていたオレに寄りかかりながら教えてくれた。キャロルのことも通称で呼ぶことにしたんだな、そっちの方が身近に感じる。
「連れてきた奴隷?達?」
 知らないワードに頭を捻るオレの頬に軽くキスを落として耳元で囁く。恥ずかしいし擽ったいし、少しばかりの抵抗でリンを持ち上げてオレを跨ぐように向き合わせて座らせた。断然負けることが多いけどたまにはオレだってやれるのだ。反撃を食らって目を見張ったリンが嗤う。結局負けるのはオレだ。上に乗せた分、高い位置にあるリンの頭を引き寄せて口づけをする。気持ちよすぎて、またベッドに身体を預けたくなるのを我慢して話の続きを促す。
「私とアルは時間差はありましたが夜に一度目を覚ますことができました。私の方は夕刻でしたのでキャロルに説明も兼ねて声がけに行ったのですが、相当心配していましたね。
 家妖精ブラウニーのおかげで寂しさは軽減していたようですが、サラと意思疎通できたのも助かりました。
 夜の十刻くらいに起きてきたアルにしばらくべったりでしたよ」
 昼間だけで無く、夜間まで女性1人にさせている訳なので耳に痛い。
「翌朝、今日の朝ですが……アマネの様子は変わりなく、しばらく目を覚まさないだろうと判断しましたので、アルに馬車を出して貰いデンメル商館に行って参りました。
 面接をこちらの邸で行うことにして、一時預かりにしてあります」
 さすがリンだね、ありがたい。予定が狂いまくって人手が欲しいのにデンメル商館に行けなかったのも地味にストレスだった。
「ありがとー」
 ギュッとリンを抱きしめる。力が入りすぎてしまったのか、リンが苦しそうに「アマネの相棒ですからね」と言ってくれた。オレは速攻、力を緩めて軽目のキスを送った。
「キャロルの世話兼話し相手になりそうな女奴隷を2名ほど。厩舎の世話ができる者を1名、庭の手入れや施設管理ができそうな者を2名。調理スキル持ちを2名、彼らをまとめる家令候補1名に補佐候補1名。
 私が頼んでおいた条件に合わせてデンゴ館長が集めてくれた奴隷の中から、私の精霊眼で選別した方々を連れて参りました。
 それぞれ仮ですが部屋を与えて、午後にはそれぞれの仕事をして貰った限り問題は無いようです。明日にでもアマネも確認してみてください、それでOKなら使いを出してデンゴ館長も呼び出せば邸で契約できます」
 リンがドヤってます。カワイイので突っ込まないことにします。
「ただ、家令候補は大きな問題があります。彼だけはアマネに判断に任せたいと思います」
 おや、ションモリなリンもカワイイ。けど笑っていてほしいので「任せろ」と応えるが、どんな問題なのだろう?不安よりも好奇心の方が勝る。デンゴが候補に挙げ、リンが選んできた人物なのだから悪い人の訳がないのだ。

 コンッ
 開いたままのドアを軽く叩く音が聞こえた。視線を移すと逆光になにかをトレーに乗せて立つアルのシルエットがあった。片手はドアにあるままの形だが、シルエットだけでもカッコイイ。
「邪魔だっただろうか?リンが戻ってこないからアマネも目を覚ましただろうと夕飯を持ってきたのだが」
 一歩も部屋に踏み入ることも無く、歯切れ悪く言うアルにオレは手招きする。リンはオレの上から降りようとしている、離れがたくて手助けしなかったらちょこっと睨まれた。
 逡巡しながら近づいてきたアルがベッド脇に着いた頃、サッサとスイッチを入れに行ったリンが明かりを灯していた。足が長いアルがそれだけ時間を掛けて近寄ってきたと言うことを見逃すべきでは無いと思った。
「ありがとう、もう腹減りすぎて、なんだかよく分からない状況だよ。そこに置いてくれ」
 ベッドサイドテーブルを指して言う。ノートパソコンやタブレットを置いていた場所だが、今は目覚まし時計くらいしか使い道が無かった。素直にそこへトレーを置いて、それからどうしようとソワソワし出すアルに座れとシーツを軽く叩くと少しビクつきながら腰を下ろす。リンは邸の方へと戻ったようだ。
「身体は大丈夫なのか」
 大きい身体を縮こめるようにしているアルが痛ましい。「大丈夫だ」それだけ聞こえる。
「無理に抱いてしまって申し訳なかった。アルは身体だけで無く心が傷ついては居ないか」
 念を押して訊く。トラウマはあとで分かることもあるけれど、今できるだけフォローしておきたい。
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