悪役令嬢はゴブリンに愛される

ほのじー

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悪役令嬢、思い出す

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「お前とは婚約を破棄させてもらう。これからは罰として地獄の森で過ごすと良い」


メラニアはゴールドの艶々な髪と淡い水色の瞳が自慢の十六歳だ。十歳の時に自分は前世のゲームの中の悪役令嬢であることを思い出した。ゲームの強制力からか、メラニアが追放されることは間逃れなかった。


前世でプレイした『ヴィーナスライト』と呼ばれるこのゲームだがファンタジー色が強いわりに、王城での描写が多く、あまりファンタジーを活かしきれていなかった印象があった。王城にヴィーナスの使者が現れ、彼女は王城や王都に現れる魔物を倒していく。王子はその女性に惹かれ、邪魔をしていた令嬢と婚約破棄をして最後に力を合わせて魔王を倒し二人が結ばれるとクリアするというゲームだ。



メラニアはぼろ布一枚羽織った状態で森に向かっていった。リュック一つ手渡されて、魔物が住み生きては出られないという地獄の森の入り口で下ろされた。馬車に乗っていた騎士は、メラニアがちゃんと地獄の森に入ったか確認して去っていった。


「うぅぅ・・・怖いよぅ」



前世でもビビりだったメラニアである。いつもびくびくと隠れて過ごしていたくらいだ。



(ひえ!魔物!・・・)



チラチラと小さな魔物がメラニアの様子を観察しているのが分かった。襲って来る様子はない。




ーー奥へ奥へと進んでいくと静かな池をみつけた。メラニアはそこで休憩することにした。



「鞄の中には1日分の食事と、自害用の毒・・・死んでくださいって言ってるようなもんじゃない」


メラニアは入っていたサンドイッチをチビチビと食べ、池の水を水筒に補充した。


「あら、こんなところに足跡だわ」


なにか巨大な足跡が2つあるのを確認した。



ーーグゴオオオオオオ


するとメラニアの前には巨大な怪獣のような魔物がメラニアに視線を向け、襲おうとしているのが分かった。


「キャアアアアアア!!」


ーーズシャッ


メラニアは避けようとしたが、背中を怪獣の爪でえぐられた。


「うぅ・・・」


メラニアはそれでも必死に逃げようとしたが、ズシャッ、ズシャッと体を裂かれ、メラニアの意識は朦朧とする。


(ぅう、痛い、痛い、痛い・・・)



ズキズキと体中が痛みだす。魔物は大きく口を開けてメラニアに牙を向けた。



(ーーー食べられる!!!!)






ーー


(痛い・・・痛い・・・苦しい)



(怖い・・・死ぬの怖いよ)



ーメラニアは手をぎゅっと握りしめてくれているような感覚がした。



「すぅ・・・すぅ・・・」



(体が熱い・・・熱くて息苦しい・・・)



ーひんやりとした感覚が額を覆う。



(誰?額にタオル置いてくれたのね。冷たくて気持ちいい・・・)



ーコトコトコト



(良い匂い・・・お腹空いたわ・・・)



パチリと目が覚める。メラニアは布団に毛布をかけられ、腕や体には包帯が巻いてあった。メラニアが寝ていた場所は、少し物が乱雑しているが、ベッドに不潔感はない、ワンルームの家のようだった。ベッドと入り口は大きく、二メートル近い男性も余裕で通れそうだ。



(人の家?どなたかが助けてくださったの?)



キッチンからスープの良い匂いがしている。しかし今は誰もいないようだ。



ーカチャッ


大きなドアが開く。



そこから、でっぷりとしたお腹をたぷんたぷんといわせ、薪を持ってきたゴブリンが入ってきた。


「キャアアアアアア!!」



メラニアは悲鳴をあげた。体が動かないので目を瞑ること数秒


(ん・・・?襲ってこない?)




目をそ~っと開けると、ゴブリンがジィーっとメラニアを見ていた。声も出ないメラニアは意識を手放した。



「んん・・・」


再び意識が戻ってくる。布団の上に置き手紙のようなものが置いてあった。



“スープ飲んで下さい”



(あら、もしかしてあのゴブリンかしら)


よく見ると脱いである服も、普通の男性よりワンサイズ大きい。


(あのゴブリンが私を助けてくれたのね。悲鳴なんて上げちゃって申し訳ないことをしたわ・・・)



メラニアが目線を窓に移すと、ゴブリンの大きな耳がチラリと見えていた。



「ゴブリンさん、ごめんなさい。あなたが助けてくれたのね。入ってきてちょうだい?」



そーっとゴブリンは顔を窓から出す。そしてメラニアがもう悲鳴を揚げないと分かると、部屋に入ってきた。



「君・・・魔物に襲われてた・・・僕が助けた・・・」
「そうみたいね。ありがとう、本当に感謝してるわ」
「いいえ・・・スープ作った・・・飲んで・・・」
「いただくわ。ありがとう」


メラニアはスープのお碗を取ろうとするが、腕の痛みで掴めない。


「うっ・・・」
「君・・・重症。僕・・・飲ませる」


ゴブリンはスープを取りあげ、大きな手を器用に使い、メラニアにスプーンでスープを飲ませた。


「もぐもぐ・・・ゴロゴロ入った野菜が美味しいわ!」
「・・・」


メラニアは改めてゴブリンをじっと見る。前髪を長く伸ばし、鼻のあたりまで髪で隠れていて顔色を伺うことができない。肌は薄い緑色で耳が尖っていてお腹がぼってり出て身長は二メートルを越えていて全体的に大きいが、体の作りは人間に近いように感じた。



もじもじとする様子は人間が照れている動作と似ていた。


(褒められて照れているのかしら)



メラニアはスープを完食した。お腹がいっぱいになるとまた睡魔が襲ってきた。



「お休みなさい・・・」







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